真っ白な闇
「ねえ、食べる?」
目の前に出されたオムライス。
まだ湯気がたっていて、作りたてなのがわかる。一般的に見ると『おいしそう』というのだろう。
そう、博士が作ったとは思えないほど・・・。
「食べるって、僕ロボットですが。」
そう返すとにやけた顔をさらににやけさせて博士はこたえる。
「やっぱかわいいねえ。自分で作った物って。愛着わくー」
あ、ダメだ!この博士だめなタイプだ!
頭に手をやられた時の頼れる感がゼロに向かっていく人だ。
「やっぱって、博士他のロボットも作ってましたっけ。私知らないんですけど・・・。」
「あー、うん・・・ツタージャ型ロボットを昔。逃げちゃったけど。」
僕はその話に興味を持った。博士には悪いけど、オムライスよりも絶対興味深い。
ツタージャ型ロボット。
僕はイーブイ型ロボットだから、全く別の種類なのだろう。
そこで僕ははたと気がついた。博士の様子がおかしい。ちょうどそのロボットの話題が出てからだろうか・・・?
妙にそわそわしている。
「・・・なにかありましたか?博士。」
「なんでもないよ。アレン、心配しなくていいから。」
いや、さわやかに言われてもさっきのオムライス効果で台無しなんですが。
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僕には一つの個室が与えられた。
狭いが、落ち着いていると世間では言うのだろうが、所詮ロボットの僕にはわからない。
「自由に使っていいって、博士が。まあアイドルの私が恋しくなったらいつでもよんでいーからね!」
ロロが片目ウインクをする。一回転してからポーズを決めたので、僕は軽めに拍手を送った。
「呼ぶことはないと思います。たぶん大丈夫です。」
その言葉にロロは急に冷めた顔をし、あなたってしらけたやつねぇと部屋を出て行った。
僕なんかまずいこといっただろうか。
夢を見ていた。
まあ機械が夢を見るというには非現実的だが、確かに夢としょうされるものを見ていた。
―――・・・て。ア・・・さって・・・ア・・・
良く聞こえない。夢とはこんなにあやふやな物なのだろうか。
―――・・・アレ・・・待っ・・・たす、・・・
さっきまで何もなかった空間に、緑色のなにかが浮かび上がる。
それは霧がかかったようにぼやけていて、あいまいな物だった。
―――ア・・アレ・・・・・・・・・・・アレン!
体を電流が流れるようだ。
そのはっきりとした声は次第に遠ざかっていく。
待・・・待ってよ!
いかないで・・・・・・。
声はそれきり聞こえなくなり、真っ白の闇が訪れた。