カイブツブースターとひきこもりイーブイ
『僕』と『私』の話
次は『私』の話を
私のお母さんは優しいポケモンでした。
私のお父さんも優しいポケモンでした。
でも、二人とも口をそろえて言うのです。
―なんでできそこないの子供なんて産んだんだろうね。
―なんでみんなになじめない子供なんだろうね。
私は色違いでした。そのせいで、みんなとうまく遊べないこともありました。
そのことが、お母さんやお父さんには気に入らなかったようです。
いつしか、私はずっとおうちにいるようになりました。
だって、お外に私の居場所は無いのです。
でもね、おうちの中にいると、お母さんも困った顔をするのです。
・・・ああ、泣かないでください。これから明るくなっていくので。
そうして、私の外への興味は失われていきました。


今日も、私はおうちにいました。
いい子でいるように、できるだけ困らせないように、自分のおへやで寝ていました。
でも、その夜だけ、寝れなかったのです。
深夜になりました。お父さんとお母さんの部屋から、物音が聞こえます。
パタン。ドタン。グシャ。
なにかと思って部屋へ見に行ったのがいけませんでした。
真っ暗な、闇の中。

真っ赤な色のブースターが・・・。

ガタン!
―ああ、う・・・あ・・・
ドアに足がぶつかり、音がなります。
恐ろしいことに、ブースターはこちらを見据えていました。
「ごめんね。僕、おなかすいてるの。わかる?」
きれいでした。
ブースターの血に染まったような赤い瞳は、とても綺麗でした。
このつまらない人生を。
終わっても、別にいいと思いました。だから言ったのです。

「たべて、いいよ。」

ブースターの反応は予想外でした。
どこか戸惑ったような、うれしそうな表情を浮かべます。
死が怖くないのか?そうつぶやかれたので、
死んじゃった方が楽。と同じくつぶやきました。

するとどうでしょう。ブースターの顔が見る間に赤くなったではありませんか。

どうやら、このポケモン食いのブースター。
私に恋してしまったようなのです!

ナノ ( 2014/05/17(土) 20:01 )