4 騒がしい基地、傾く基地…!?
「よ!」
「よ!じゃねぇよ。毎回毎回……」
入り口から入ってきたのは、ピカチュウ♂はレオンとナオト、イーブイ♀はサンとコウ、ムックル♂はウィルだった。
「ところでよ?」
「なんだよ?」
レオンが隅にある物を指差す。
「あの鏡はなんだ?」
「鏡?」
隅には大きい鏡があった。ディンには覚えがないのか、気になって近づく。
「なぜ鏡が……?」
ふと鏡に触れるディン。すると鏡が激しく光り、基地全体を包んだ。
そして、光が消えると、基地には誰もいなくなっていた。
「……ぅ……」
ディン達は同時に気がついた。辺りを見回すが、基地は変わりなかった。
「一体何が……?」
「さぁ?」
全員首を傾げる。
「そういえば、シャインはどうした?」
「猫女は仕事だ。ざまぁみろ!」
相当中が悪いんだなぁと思うディンだった。
「それより、なんで何で鏡があるんだよ?」
コウの質問に、ディンは「さぁ?」と答えた。その時、外から声がした。
「だからテメェはクズだっつってんだよ!!」
「だって〜……」
声からしてフリーズとシンのようだが、言葉遣いがまったく違っている。
しかし、基地に入って来たところを見ると、間違いなくフリーズとシンだった。
だが、フリーズは暴言を言い、シンはすごく弱気になっている。
「性格が反対……?もしかして、性格が反対の反転世界か?ここは……」
ディンが言うと、レオン達も気がついた。自分達の性格はどうなんだろうと考えた。
「あら?お客様ですか?」
聞き覚えのある声がして、ビクッとするディン。
恐る恐る階段へと振り返ると、ピカチュウ♂がいた。
「私はディンといいます。探検隊STARSのリーダーです。ゆっくりしていってくださいね」
語尾が女口調の反転ディン。ディンはショックを受けたのか、座り込んでしまった。
レオン達も、自分の反転した姿を見たくないと思った。
「あら?大丈夫ですか?」
「ふん!随分と弱気だな」
とりあえず、ディン達は自分達に起きた事を、反転フリーズ達に話すことにした。
「まぁ……反転世界から?」
「なるほどな。ほ〜、ディンの反転はこうなるのか」
お前に言われたくないと思うディンだった。
「頼むからさ……俺と同じ姿で♀の言葉はやめてくれ……」
反転ディンの肩に手をポンと乗せて言うディン。少し涙ぐんでいる。
反転ディンは少し機嫌を悪くしたのか、ムッとした顔でディンの手を払いのける。
「失礼ね!私は♀よ?」
「はい?」
ジッと反転ディンの顔を覗き込む。
「性格だけじゃなう性別まで反転するのか……」
「まてよ?そうなると俺は……」
コウに嫌な予感が走った。
その時、上に見覚えのある穴が開き、中からイーブイとピカチュウが出てきた。
「ナオト参上!」
「ナオトちゃん素敵♪」
「ありがとう、コウ!」
今度は反転のコウとナオトが登場した。コウが恐る恐る自分の反転に聞いてみる。
「なぁ……お前って♂……?」
「え?当たり前じゃない☆」
あまりのかわりばりに落ち込むナオト。さらに、オカマの自分を見て固まるコウ。
「ふぇ……反転した自分なんて見たくないよ……」
「同感……」
(レオンの)サンの言葉に頷くウィル。気持ちはわかるが、現実はそう甘くない。
「たっだいま〜」
そこに、反転しているが、よく知ってる奴らが帰ってきた。
フィン、(ディンの)サンとミミ。
そして、新しいメンバーのフレア、フィン(エーフィ)、キルアだ。
「あれ?見かけない奴らがいるな?」
ミミと肩を合わせながらサンが言う。
いつも喧嘩しているのをみているディンにとって、異様な光景だった。
「このポケモン達は反転世界から来たんだって」
「まぁ、俺達にとってこっちが反転世界だがな」
「へ〜」
反転フィン(エーフィ)は何度も頷く。
さらに、いつの間にか反転STARSメンバーが集結していた。
「……にしてもどうやって帰るのかな」
「あ……」
肝心な部分を忘れていたディン達。どうするつもりなのか。
「ならさ、王様に会ってみたら?」
「……はい?王様?」
反転ディンの言葉で、頭大丈夫か?
という思いがディン、レオン、サン、ウィル、コウ、ナオトの頭に同時によぎった。
「あそこに塔が見えるでしょ?あれは千年城っていって、この世界の王様が住んでるの」
「って……千年城じゃなくて千年塔じゃん!?」
ディンがツッコミをいれた。
「まぁ、行ってみる価値はあんじゃねぇか?」
反転フリーズが後退しながら言った。すると、突然ディンの上に落ちてきた。
「むぎゅ」
「ふぇ……誰か踏んだような……」
「ん?知らないピカチュウがいるな」
降ってきたのはレオンとサンのそっくりさん……ではなく、反転したレオン達だ。
「久しぶりだな、ここに来るのは。なぁ、ウィル?」
「そうね、シャイン♪」
なんと、今度は反転のウィルとシャインも出てきた。
しかも、ウィルとシャインは焼き鳥や猫女と呼び合って仲が悪いのに…
こっちは仲が良さそうだ。
「そ……そんな……」
反転シャインと仲がいい反転の自分を見てウィルは石化し、ガラガラと崩れてしまった。
「ウィル……気持ちはわかるぜ……正直キモいぜ」
「うん……」
まるでレオンとサンが入れ替わったような自分達を見て、レオンとサンは石化して崩れたウィルの破片にポンと手を乗せる。
「…まぁ…早く行こうぜ?千年城とやらに」
「ところで、どうやって海を渡る?」
千年城は海を渡らなければいけないため、サンが聞いてきた。
「ああ……それなら俺が変身して全員を乗せてやるぜ」
「俺は飛べるけどな」
サンの質問に答えるディン。ウィルは空を飛べるため、関係ないようだ。
そして一行は海辺にやってきた。
「よし」
ディンは少し大きめのラプラスに変身し、レオン達を乗せて進み出す。
そして、やがて千年城の島にたどり着く。
「これが千年城……」
「高いね……」
見るからに城ではなく塔だ。ディン達はすぐさま千年城に侵入する。
「広い……」
「とにかく進むしかないな」
周りを探りながら進むディン達。やがて階段を上っていく。
「はぁ……はぁ……」
「サン……大丈夫か?」
「少し苦しいかな……でも大丈夫だよ」
心配するレオンに、ピースをするサン。さすが両想いの二匹である。
「少し休もう……酸素が薄いから大きく呼吸ができないからな」
「そうだな……お前も大丈夫か?」
「うん……なんとか……」
ディンの提案に賛成するコウ。ナオトも冷や汗を垂らしている。
「ふぅ……あと何階あるんだ……」
「さぁな……あと少しだと祈ろう……」
ため息をする一行。再び登り始め、約五時間後に最上階に辿り着いた。
「ゼェ……やっと……ついた……」
バタッと倒れるサンとナオト。相当キツかったはずだ。
ディン、レオンとコウは辺りを見回している。
そんな中ディンは、嫌な予感で胸を押さえている。
(……なんだ?この嫌な感じは……?前に……どこかで……)
さらに奥に行くディン。すると、誰かが座っていた。ディンの足が止まり、冷や汗を垂らす。
「よぉ……遅かったじゃないか?」
座っていたライチュウがディンに向かって言った。ディンは冷や汗を垂らしながらニヤッとする。
「まさか……本当にお前だったなんてな……」
後ろからなんだなんだ?と声を発しながら全員集まってきた。
「ディン……あいつを知ってるのか?」
「知ってるもなにも……あいつは俺の兄だ」
全員は驚いた。それは当然といえるだろう。
「な……なんか嫌悪な雰囲気じゃない……?」
ナオトが聞くと、ディンは頷いた。
「俺はあいつなんか大嫌いだな」
「おいおい……久し振りの再会にそりゃないんじゃないか?」
「黙れ!俺は昔お前にされたことを一時的以外忘れたことねぇ!!」
ディンが怒鳴ると、辺りに振動が起きた。それ程大きな声なのだろう。
「なら戦うか?この俺と」
「当たり前だ!レオン達は下がってくれ……」
「あ……ああ」
ディンがそう言うと、レオン達は下がり、兄はパチンと指を鳴らした。
すると、どこからか反転のディン達が現れた。
「な……」
「こいつらの相手もしてもらおうか」
兄はそう言う。もちろん反転のレオン達もいる。
「待て待て!レオン達は少ないからいいけど俺はディル!お前も含めて10匹いるじゃねぇか!?」
「どうした?怖じ気ついたか?」
「ぐ……」
どうやら、兄の名前はディルらしい。その時、レオンがディンの肩をポンと叩く。
「安心しろ。後で参加してやる」
「それまで待ってろ」
コウも言う。ディンは頷くと、ディルを睨みつける。
「いくぜ!」
ディンは手を床につける。すると、赤、茶、だいだい、青、黄緑の色をした電撃が自分の反転メンバーにほとばしらせた。すると、反転メンバーは全滅した。
「な……なんだ?今のは……」
「効果抜群の電撃を与えたんだよ。赤なら炎。青なら水。色によってタイプが決まるんだ」
ディンの新たな技が早速現れた。
「そんな事ができるとはな……」
「俺は電気を操れるからな」
正直、ディルは驚いているようだ。誰だって驚くだろう。
しかし、レオン達は自分達の戦いで気づいてはいない。
「教えてもらおうか……お前がポケモンになった理由を」
「ふん、いいだろう。あれは一年前だ」
◆ 1年前 回想開始
「ディル!サッカーをするぞ!」
お前(ディン)と母さんがいなくなったあと、俺と親父は大変な生活をしてたんだ。
ある日、親父がサッカーをしようって言ってきたんだ。
「サッカー?やだね」
「ただのサッカーじゃないぞ?なんと、鉄球(10kg)入りのサッカーボールだ」
「……面白そうだな」
俺達は鉄球(10kg)入りサッカーをした。
しかし、そのうちボールを高く上げちまってな、運悪く俺達の頭に直撃してな、死んだんだ。
◆ 1年間 回想終了
「……ハッキリ言ってバカだろ、お前ら」
「な……っ」
「誰が好き好んでサッカーボールに鉄球(10kg)を仕込むかよ。サッカーの王国、ブラジルに謝りやがれ」
「黙れぇぇぇえええ!」
顔を赤くして叫ぶディル。相当恥ずかしくなってきたのだろう。
当然、誰も鉄球(10kg)をサッカーボールに仕込むはずないのだから。
「とにかく!勝負だ!」
「言われるまでもない。以前の仕返しをしてやるぜ」
二匹は戦闘態勢に入る。周りからはバトルの音がするなか、しばらく構えていた。
そして、天井から中くらいの瓦礫が落ちてきて、床で砕けた。
それと同時にディンとディルが動き出した。ディンは電撃がまとった拳でディルを殴りかかった。
それをディルはかわし、ディンの腹に同じく電撃がまとった拳で殴った。
「かは……」
かなりの一撃に、ディンは腹を抑えて膝をついた。
ディルのバトル能力は、普通のディンを超えていた。
「この程度か?弱すぎるぜ」
「こ……この……」
ヨロッとしながら立ち上がり、ディンは光化し、ディルにライトニングアローを放った。これにはディルも驚く。
「な……なんだ!これは……」
驚きながらも受け流すディル。軽く舌打ちしながらライトニングアローの弓を消す。
「ち……はずしたか」
「なんだよ!今のは!」
「光化……光の力を宿した力さ。そして、ライトニングアローは電撃をコントロールして弓矢の形にしたのさ」
得意げに説明するディン。ディルの顔が険しくなっていく。
「ふん……光の力か……」
怪しい笑いをするディルに、ディンの頬に一粒の汗が流れる。もちろん、顔の笑みも消えている。
「その程度で勝つつもりか?」
「なに?」
「光の力程度じゃ俺を倒せねぇ」
笑みを続けるディル。ハッタリじゃないことにディンは気づいている。
「さぁ、始めるぜ。最後の戦いを」
ディルの体に細かい電気がまとわりついた。それは、まるで体を強化したように見えた。
「いくぜ」
その瞬間、ディルの姿が消えた。ディンは動きを見ることができなく、完全に見失った。
「こっちだ」
声は後ろからして、振り返る前に蹴り飛ばされた。
なんとか体制を立て直すが、すでにディンの下にディルが移動していて、手を床に着き、足でディンを上に蹴り飛ばした。あまりの威力に身動きがとれない。
そのまま天井に叩きつけられ、落下して床に落ちたディン。立ち上がろうにも、体が言うことを聞かず、なかなか立ち上がれない。
「終わりだな」
「……ぐ……」
ディルはディンの前に立ち、にやけ面をする。この顔に、ディンは悔しくてしょうがなかった。拳を固く握りしめている。
「トドメだ」
ディルの尻尾の先の尖った部分がディンの胸、つまり心臓を差した。
身動きできないディンに回避は不可能。
ゆっくり尻尾を上げ、今ディンの胸にディルの尻尾が突き刺さ……る瞬間、別の何かがディンの胸に突き刺さった。それは輝いている。
「これは……」
いつの間にか、ディンが起き上がり、体を動かしていた。
「これは……ポーションアロー……」
ディンはバッと振り返る。そこには、雷神モードの反転ディンがいた。
「お前……」
「手伝うわよ。あなたが死んでしまうと私まで死んでしまう……。でも、彼、ディルが死んだら消えるだけ。それなら死ぬより消える方がいいもの。だから、協力しましょ」
「……フッ……わかった。一緒に倒すぞ!」
ガッと手を組み、二匹のディンが手を組んだ。
それを見たディルは、それでも勝つ自信があるようだが、解けないのが一つあった。
「なぜだ?なぜ矢が心臓に刺さったのに生きている?それ以前に回復している!」
「ポーションアロー……それは、その名の通り、仲間の体力を回復させる技だ。電気タイプだったら全快するが、ほかのタイプは半分くらいしか回復しないがな」
ディンはペラペラと自分の技を説明をする。すると、ディルが高笑いし始めた。
「ハーッハッハッハ!なるほどな。しかし、お前らだけで倒せると思っているのか?さっきも全く敵わなかったくせに!」
「はたしてどうかな?」
後ろからドゴォ!という音が響き、激しい強い風が吹いた。後ろでは、二匹のピカチュウ、二匹のイーブイ、ムックル、が立っていた。
「ったく……手こずらせやがって……」
「ふぇ……疲れたよ……」
「オカマ滅殺!」
「自分と戦うのってあまり気持ちよくないね」
「んな猫女と仲良くしてるからだ。……あ、猫男か?」
どうやら、レオン達も自分達の反転に勝ったらしい。これで、ディンのメンバーが全員揃った。
「またせたな」
「勝ったよ!」
レオン達はすぐにディンと合流する。
「さぁ、どうする?7vs1だぜ?」
「ぐ……」
さすがのディルも冷や汗を垂らし始めた。
ディンだけなら倒せるが、実力者がこれだけ集まっては危ないと感じているのだろう。
「いくぜ」
まずディンが走り出し、ディルとガッと手を掴んだ。
すでに雷神モードになっているため、力が圧倒的にさっきより強い。
いつの間にか後ろに移動していたレオンがドラゴンテールを放つ。
ディンは当たる瞬間に手を離したため、吹っ飛んだのはディルだけだ。
「がはっ!」
壁に叩きつけられたディル。そうとうのダメージなのか、ズルズルと床に座り込んでしまった。
そのディルの前にディン達が立ちはだかる。
「……サン、ウィル、コウ、ナオトやれ」
サンとコウのシャドーボール、ウィルの燕返し、ナオトの十万ボルトがディルに直撃し、トドメとしてWディンの雷神モードのアイアンボルテールが炸裂した。これにより、ディルは完全に動かなくなった。
「……死んだのか?」
「……いや、気を失ってるだけだ。この程度死ぬなら俺が殺ってる」
(この程度?しかも殺ってるって………)「とにかく……」
コウが何か言おうとしたとき、突然、辺りが白くなり始めた。
ナオトが立っていた場所も白くなり、落下し始めた。
「わ……!?」
「ナオト!?」
ギリギリでナオトの手を掴み、引き上げるコウ。だんだん立ってられる場所が狭くなる。
「ディン……やる?」
「……ああ。……全員こっから落ちろ!」
「ハァ!?」
突然のディンの叫びに驚く一同。無理もない。誰だって何百Mあるかわからない高さから落ちろと言われれば驚くだろう。
「正気か!?」
「ここは最上階だぞ!一体どんくらいの高さだと……」
「俺達を信じろ!」
レオン達が講義するが、ディンの一声で辺りはシーンとする。
「確かにバカかもしれない。だが、階段を降りていっても結局は間に合わない」
「私は最初は敵だったけど……あなた達を助けるわ。今は信じて……」
Wディンの説得に考え出す一同。すると、レオンとコウがため息を漏らす。
「……わかったよ」
「絶対なんとかしろよ」
リーダーである二匹の答えにパートナー達も震えながらも首を縦に降った。
反転レオン達は既に落ちたのか、姿はなかった。
「いくぞ……せ〜……の!!」
全員同時に飛び降りた。もの凄い落下スピードで落ちていく。そして、地上がみえ、迫る途中でWディンが姿を変えた。ムクホークになって、全員を背中に乗せたのだ。
「わぁ……」
「こういうことか」
WディンはそのままSTARS基地に飛び込んだ。基地も今にも消えそうだ。
「どうやって帰るんだ!?」
「肝心のディルの野郎は気絶しちまってるし……」
(帰るため……行きの時は鏡が光って……ん?鏡?……そうか!?)
ディンが方法を見つけ出し、角にある鏡をジッと見た。
「全員鏡に飛び込むんだ!それが帰るための入り口だ!」
「鏡?そうか!?」
まずレオンが鏡に向かって飛び込んだ。すると、鏡の中に入ってしまった。
それに続いて残りも入っていく。残ったのはWディンだけだ。
「……本当にいいのか?このまま消えても」
「……うん。仲間ももう消えてしまった。私だけ消えないなんて理不尽だもの」
反転ディンの顔は笑ってはいるが、悲しそうだった。やはり、覚悟してはいても消えるのは嫌なのだろう。ディンはそんな反転ディンの肩に手を置く。
「俺は最初、雌であるお前は好きじゃなかった。だが、今のお前は立派な俺の仲間だ。たとえ、消えてしまおうとも」
「ディン……」
最後に仲間だと告げたディンは、消えていく反転世界を見て、もの寂しく思えていた。
最初は嫌な世界でも見た目はは同じ世界。消えるのは辛いのだろう。
グッと拳を握り締める。そして、そろそろ立っていられる範囲が無くなってきたため、ディンは鏡に近づく。
「……そろそろ時間切れだから行くな」
「ディン……また、会えるよね?」
反転ディンは自分にまた会いたいという思いは変だと思ったが、それは本気だった。聞いたディンはフッと笑う。
「……ああ、いつかな」
「……うん」
会えると聞いた言葉に、反転ディンは涙目でニコッと笑った。
「それじゃな」
ディンは別れを言い、鏡の中に入っていった。そして、反転ディンは一筋の涙を流し、手を合わせて祈った。
「また会える日まで……さようなら」
また一筋の涙を流す。そして、反転世界は完全に白く包まれ、消えてしまった。
「ふぅ……」
「戻ってこれたかな……?」
風景は反転世界と同じ。ディン達は戻ってこれたか不安でいた。
「あ、ディンただいま」
「あれ?レオン達来てたんだ」
帰ってきたフィン達。いつもと同じで帰ってきたという安堵感でいっぱいだった。
「ん?そのライチュウは誰だ?」
シンが気絶しているディルの姿に気がつく。するとディン達の表情が険しくなる。
「なんでもない。ちと出かけるから」
そう言って気絶しているディルを引きずりながら基地をあとにするディン、レオン、サン、ウィル、コウ、ナオトの六匹。やってきたのは海岸だ。
「じゃあな。二度と会わないのを祈るぜ」
ディルをイカダに乗せ、海に流すディン。ディルは未だに気絶中。
「……本当にこれでいいのか?」
「……ああ。あのまま反転世界と一緒に消えるよりは夢見がいい」
「ふぇ……なんだか可哀想だね……」
少し心配そうに見る(レオンの)サン。ディルはすでに見えなくなっている。
ディンはまたディルが流れていった方向を見て、二度と会わないのを祈りながら基地に戻っていった。