3 新たな仲間…基地が…
そして、しばらく話したりしていく数分後……。
「いて……いっっってーーー!!」
突然、体の激痛に襲われたディン。倒れて体を抑える。
「ど……どうしたの!?」
あまりに突然なことで驚くフィン達。
「か……体が物凄い激痛……」
あまりに激痛でゴロゴロと動き回るディン。フィン達はその光景に唖然とする。
しばらく激痛に耐え抜くディン。そして、一時間後……
「はぁ……はぁ……」
どうやら、痛みが引いたらしく、落ち着いている。
「大丈夫?」
「なんとか……」
今は息を整えている。一時間は苦しんでいたのだから、相当体力は相当減っただろう。
「ち……ライジンモードの反動が来たな……」
「反動?」
「おそらく、あまりのパワーに体がついていかなかったんだろ……。こりゃ修行がいるな……」
ため息をつくディン。少し痛みはあるが立ち上がる。
「しばらく留守にする。その間、仕事を頼んだぞ」
「うん、頑張ってね」
ディンは基地を出て行き、フィン達は基地に残り、顔を見合わせる。
「とりあえず、あいつが帰ってくるまで待つか」
「うん……」
こうして、あわただしい1日が終わる。
ディンが修行に出て何日か経ったある日……。
「……よし、雷神モードの痛みはなくなった……新技も三つできたしな」
修行の山頂上でボロボロになりながら深く呼吸するディン。
かなりキツい修行だったのだろう。
「さて、一旦基地に帰るか」
修行の山を降りようとして歩き始める。
そして、中間よりちょっと上で一匹のエーフィを見つける。
「なにやってんだ?あいつ……危ないな」
エーフィは崖の上に立って前を見つめていた。すると突然、勢いよく飛び降りた。
「ふぁ!?」
「う……ん」
「気がついたか」
エーフィを無事に助けることができてホッとするディン。エーフィは周りをキョロキョロする。
「えと……私は、崖から飛び降りて……なんで生きてるの?」
「俺が助けたんだよ。何があったんだよ?」
エーフィはディンの顔を見る。エーフィの目は、綺麗な透き通るブルーの色をしていた。
その変わった目からは、ポロポロと涙がこぼれる。
「ど……どうしたんだ!?」
突然泣き出して、慌てるディン。
「私……彼氏を待ってたんです……。一年したら戻ってくるって彼は言ってたんですが…
…三年経っても帰ってこなくて……きっと捨てられたんだろうと……それで……」
「それで自殺か……」
涙を流しながら言うエーフィに、ため息をつく。
ディンは恋関係の事は全くの無知で鈍感なため、理解しきれなかった。
「そんな事で自殺するなよ……きっと彼は何かの事情で……」
「なんの事情ですか?」
「う……」
言葉を失うディン。選択ミスをしたのだろう。
「私……彼に会って聞きたいんです……。本当の事を……」
頭をポリポリとかくディンは、ある決心をした。
「俺が探してきてやるよ。だから元気出せ」
「でも……」
エーフィは申し訳なさそうな目をする。
「いいからいいから。俺は一応探検隊なんでね。彼の種族と特徴を教えてくれるか?」
「……ありがとうございます」
種族と特徴を教えてもらい、ディンは山を降りようとする。
「……そういえば、名前はなんていうんだ?」
「あ、すみません。私はフィンといいます」
名前を聞いた瞬間、ディンはズザーッと滑りこけた。
「ど……どうしたんですか!?」
「いや……俺のチームにも同じ名前の奴がいるからさ……」
苦笑いしながら起き上がるディン。同じ名前がいることを知ったフィンは顔を赤くする。
とりあえず家で待つように言ったディンは山を降り、探し始める。
「種族はブラッキー、特徴はちょこっと頭の毛が跳ねた感じ……か……」
ブツブツ言いながら歩いている。まずはどこを探したらいいのかわからないでいた。
その時、前から誰かが走ってきて、ドンとぶつかった。
「いっつ……気をつけ……」
ぶつかってきた種族はブラッキーだった。
しかし、エーフィのフィンから聞いた特徴とは違っていた。
頭の毛は生えていないし、汚れている。
「てめぇ……俺とぶつかるなんざいい度胸してるな……」
ブラッキーが喧嘩を売ってきた。
次の瞬間、ディンはブラッキーをボコボコにしてしまった。
「あ、やべ……つい……」
さらにボロボロなったブラッキー。そこにジバコイル保安官がやってきた。
「アリガトウゴザイマス。コイツハ、オタズネモノナンデス」
「あ、そうなんだ」
ブラッキーをジバコイルに渡し、連行されるのを見送る。
そして、再びブラッキー探しを始めた。しかし、一日経っても探し出すことはできなかった。
「やっぱり一日じゃ無理か……。仕方ない、期限を延ばしに行くか……」
ディンは教えてもらったエーフィのフィンの家に向かう。
「……まてよ?」
ディンの頭にある考えが浮かんだ。さらに、目がキランと光る。
そして、ディンは能力の一つである変身を使い、探しているブラッキーの姿に変える。
「これでよし」
ディンはブラッキーの姿でフィンの家に向かう。
フィンの家に着くと、扉を軽く三回叩いた。
「はあい、だ……れ……」
「よ、久しぶり」
変身しているディンの姿を見たフィンは、驚きの顔をする。そして、突然抱きついた。
「どこ行ってたの!!すっごい心配したんだから!」
「ごめんごめん。それで……」
涙を流しながらドンドンとディンの胸を叩く。
ディンは、遠回しの期限延長を言おうとしたが、突然口を塞がれてしまった。
それも、エーフィのフィンの口で。
「………」
「………///」
予想つかず、いきなりキスをされたことで唖然とするディン。フィンは顔を赤くする。
「お願い……もう、どこにも行かないで……///」
フィンの言葉でハッと我に帰るディン。今の現状を整理する。
「えと……ごめん。まだやることがあるんだ……。
あと一週間待っててくれ。一週間したら……必ず」
「……一週間……」
フィンは目を閉じ、胸に手を置く。そして、何か決心したかのように目を開く。
「一週間……一週間したら絶対帰ってきてね……」
「……ああ」
フィンの頭にポンと前足を置く。前足を離し、振り返ってディンは去っていく。
フィンは、その後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
(何か変態みたいな行為しちまったが…この際、仕方がないか…)
フィンが見えなくなったあたりで元の姿に戻り、木に寄りかかるディン。
顔を真っ赤にしていた。
「あ〜……まさか、ああなるとは予想外だった……」
キスの事が何度も頭の中で繰り返される。
あの後は何とか普通にやりとりできていたから、一応心は純粋のようだ。
「とにかく!今はブラッキーを探さなくては!!……とは言っても……
過去にブラッキーで会ったことがあるのは昨日の一匹……一匹?まさか……」
ディンは嫌な予感がした。
昨日ボコボコにして連行されたブラッキーを確かめに、ジバコイルの刑務所に向かった。
「着いた着いた」
ジバコイル保安官の刑務所にたどり着き、中に入る。
ディンもここに来るのは初めてで、内心ドキドキしている。
「ちは〜」
「ア、ディンサン」
仕事しているディンに気づき、ゆっくりと近づく。
「ドウシタノデスカ?ワザワザケイムショに……」
「いやな?昨日捕まったブラッキーと会いたいんだが…それと、今はカタカナ言葉やめてくれ…」
「あ、はい。いつも逮捕に協力してくれているディンさんの頼みですし…いいでしょう。」
ジバコイルは壁にかけてある鍵を持ち、牢の場所に向かう。
ディンも着いていき、何匹の犯罪ポケモンを見ていく。
やがて、目的のブラッキーの牢に辿り着く。
案内を終えたジバコイルは、その場を後にする。
「……なんの用だ」
「相変わらずだな。まぁいい……フィンというエーフィを知ってるな?」
ブラッキーの耳がピクッと動き、ディンを赤い目で睨む。
「……それがどうした」
「そのフィンからお前を探してくれという依頼を受けた。……自殺未遂の後にな」
またもや耳がピクッと動いた。
「なんで自殺なんか……」
「お前に捨てられたと思ったんだ。一年で戻るっつったのに三年も戻らないから」
その言葉で黙ってしまったブラッキー。ディンは牢越しに寄りかかる。
「どうする?」
「……ケッ!知るかあんな奴」
「なら俺が貰っちまうぞ」
またまた耳がピクッと動いた。睨みも激しくなる。
「……どうするかはお前しだい。よく考えるんだな」
ディンは去っていった。ブラッキーはワナワナと震えだす。
「三年も待っただと……」
壁をドゴォッと殴った。そして、ジバコイルがやって来て牢の鍵を開ける。
「シャクホウダ、デロ」
「……なぜ……」
「イイカラサッサトデロ!」
ジバコイルに怒鳴られ、ゆっくりと牢を出て外に出るブラッキー。
刑務所は高台にあり、景色はそこそこ良かった。
ブラッキーは、その景色を見ながら、なぜ一日で釈放されたのかを考えている。
そして、先に浮かんだのはディンだった。
「あいつが……」
拳を強く握りしめ、自分の右の頬を殴った。
両前足で頬を抑える。そして、ある場所に向かって走り出した。
少し時間が経ち、ブラッキーはようやくフィンの家にたどり着いた。
ディンの前ではバカにしていたが、久しぶりに会うため、緊張が走る。
ゆっくりと扉をコンコンと叩くと、中から声がして扉が開いた。
「よ、よぅ……」
「……早かったのね、もう用事は終わったの?」
ブラッキーは首を傾げた。フィンの反応が薄いからだ。
だが、すぐさま、あのピカチュウ(ディン)のせいだと頭に浮かんだ。
「ま……まぁな……」
「じゃあ、今度こそ約束して……。もうどこにも行かないって……」
フィンがブラッキーの前足を握りしめ、潤んだ目で言う。
一瞬戸惑ったブラッキーだったが、もう決めてたみたいにフッと笑う。
「ああ……」
「嬉しい……」
ギュッと抱きしめるフィン。照れて頬をポリポリとかくブラッキーは、すぐに両前足をフィンの背中に回して軽く抱きしめた。その一部始終を草村で見ていたディンは、フッと笑うと、ゆっくりと歩み始めた。
「さて、海岸に寄ってから帰るか」
もう一回振り返り、フィン達の幸せそうな顔を見てから海岸へと向かっていった。
一方、STARS基地では……
「………」
「………」
「………♪」
本日の依頼分をこなし、帰ってきたシン。
その横にはブースターがシンにべったりと腕に抱きついている。
「えっと……そのポケモンは……?」
フィンが先に疑問を口に出した。ブースターは一旦シンから離れ、前に出る。
「僕はブースターのフレア♪シンの兄貴にお供させていただきました♪」
「あ……兄貴?」
兄貴と呼ばれたシン。勿論、本人はため息をついている。
「なんで兄貴なの?」
次に疑問を出したのはサン。
「それはね……」
一時間前……
「次のフロアまでだな?」
「はい」
階段を探して歩き回るシンとフレア。次々と現れるポケモン達はシンが一発で倒していく。
そして、ついに階段を見つけ出した。しかし、階段前にはモジャンボがいる。
「誰だ〜?オイラの縄張りに侵入したのは〜」
「……そこをどきな。痛い目にあいたくなかったらな……」
シンはモジャンボを睨みつけた。一瞬たじろいたモジャンボだが、すぐにバトル体制に入る。
「そっちが去るのだ〜!」
モジャンボのギガドレインが襲いかかってくる。
それをかわし、アイアンテールとミサイル針を交互に追撃し、モジャンボをフルボッコにした。
「無傷で………か…かっこいい……」
「なんか言ったか?行くぞ」
「あ……はい♪」
そして現在に至る。
「と、いうわけでして♪」
「へ〜……」
ポカンとする一同。そんな戦いで惚れるのは普通変だろう。
一方、海岸では……
「アイアンテール!」
「メガトンキック!」
サンとミミがどういうわけか戦っていた。
「以前の決着、つけてやるわ!」
「それはこっちのセリフよ!」
技と技の撃ち合い。普段はサンが強いが、今はミミが押している。
「負けない……負けない!」
「今までの特訓よ!」
そう、ミミは夜な夜なバトルの特訓をしていたのだ。その甲斐があってサンより強くなった。
「やだ……負けたくない……」
なんとか攻撃をかわすが、ダメージを受ける回数が多い中、段々涙が流れてきた。
「負けたくない!」
負けたくないという強い意志が、サンに力を与えたのか、体が光り出した。
光が収まると、そこにはサンはいなく、代わりにシャワーズがいた。
「え……?え?」
ミミはわけがわからなかった。
それはそうだ。目の前にはサンではなく、シャワーズがいるのだから。
「どうしたのよ」
「どうしたのって……あんた誰よ」
「誰って……え?」
シャワーズは海に映った自分を見て驚いた。
「なにこれ……あたし……シャワーズになってる!?」
混乱しだすシャワーズ。ミミは首を傾げた。
「もしかして……サン……?」
「そうよ……」
さっきより涙を流すサン。そこにディンが登場した。
「へぇ〜、ついに能力が覚醒したか」
「へ?」
サンとミミの目が点になった。
「おそらく、サンの能力は自由に進化系に姿を変われる能力だな」
「これが……あたしの能力……」
プルプルと震え、涙を流し始めるサン。ディンは首を傾げた。
「ん?嬉し泣きか?」
「違う……能力に覚醒したのに…
…初めてがシャワーズだから……お母さんと同じシャワーズだからぁ!!」
ワッと泣き出したサン。そんな理由かとこけたディン。ミミはポカンとしている。
「とりあえず戻れ。最初は集中すれば戻る」
サンは教えてもらった通り集中しだした。
すると、元のイーブイの姿に戻った。そして、基地に戻りだした。
「……」
戻るとディンはポカンとした。
知らないブースターがシンにべったりとくっついてるからだ。
「そいつは……?」
「えとね……」
フィンが説明しだす。すると、ディンは笑い吹いた。
「で、どうするの?うちに入りたいって言ってるけど……」
「いいんじゃね?しっかり兄貴やれよ、シン」
「ハァ!?」
「ありがとうございます♪」
嬉しそうにはしゃぐブースター。
「僕はフレアっていいます」
「こんにちは〜」
フレアが自己紹介をすると、誰かが訪ねてきたようだ。
ディンが外に出ると、フィンとブラッキーがいた。
「あれ?お前ら……どした?」
「このチームに入れてもらいにきました」
「……はい?」
キョトンとするディン。それは当然といえる。
「あのあと……私達で考えたんです。
そして、このチームに入って……強くなろうって。だからお願いします!」
深々と頭を下げるフィン。ブラッキーはしぶしぶと頭を下げた。
「わかったわかった。入れてやるよ」
ディンの言葉にパァッと明るくなるフィン。
「ありがとうございます!」
「とりあえず入れよ」
三匹は中に入り、それぞれ自己紹介しだす。ブラッキーはキルアというらしい。
時は早く、外は暗くなっていた。
人数分のベッドを用意したディンは全員に渡し、一行は眠りについた。
一日で三匹仲間になったSTARSであった。
のはずだったが、新たな事件が…
ディン「…なぁ、基地が傾いてる気がするんだが…」
フィン「…あの鏡、なに…?」