1 現在、絶賛逃走中…?
「くそ……なんでこんなことに……」
暗い暗い森の中。ディンはこの森を汗流しながら走っていた。なぜ、こんな場所を走っているかというと、話しは三日前にさかのぼる。
「ふあぁ……」
朝、ディンが目覚めると、心地よい風が吹いていた。今日もいい日になりそうだ……。ディンはそう思っていた。
「ディン!」
フィンが慌てた表情で基地に入ってきた。どうやら、ギルドへ依頼などを見に行っていたようだ。
「どうした?そんなに慌てて……」
「これ見て!」
フィンが見せたのは手配書だった。しかも、写真は……ディンだった。
「……ハァ!?なんだこれは!!」
バッと手配書を奪い取り、ワナワナと震えるディン。震えながら手配書を見る。
「もうギルド内は大騒ぎだよ……」
「しかも賞金がでけぇ……」
現在シン達がギルドで話し合っているらしい。その時……。
「ディン!覚悟!」
サワムラーが突然入ってきて、メガトンキックをしてきた。しかし、ディンは軽く避け、海に向かって蹴り飛ばした。
「……とにかく、逃げながら真犯人追うことにする。後は頼む」
「うん……気をつけてね」
と、いうわけで現在に至る。隠れながら情報を集めるが、なかなかうまくいかない。ディンに罪を着せた犯人はどこにいるのだろうか。
一方、ギルドでは……
「だーかーら!ディンは犯人じゃないって言ってるでしょ!!」
サンが怒鳴る。現在、サン、ミミ、シン、フリーズがギルドで会議をしていた。もちろん、ディンのことについてだ。
「そんなことは我々もわかっている!」
「じゃあ、なんで探し出して捕まえるのよ!」
「違うという証拠が無いのだ……。しかも、現在は逃亡している……。犯人を見つけない限り、このままディンが犯人だろう……」
ペラップは翼を握りしめ、歯を食いしばり、とても悔しそうだ。サン達も犯人が許せないのだろう、怒りに燃えている。
「ディン……」
サンは、窓の外の青い空を見て、ディンの心配をしている。
一方、ディンは……
「爆裂パンチ!」
「ガハッ」
追っ手数十匹に見つかり、バトルしていた。十万ボルトを分散させて倒したり、気合いパンチの代わりに覚えた爆裂パンチで殴ったり、普通の蹴りで蹴り飛ばしたりしている。
「くそ……キリがねぇ!」
次々と湧いて出てくるポケモン達に、苦戦中のディン。一旦また逃げようと、木にジャンプし、そのまま木から木へとジャンプしていく。
「逃げたぞ!追え!」
「絶対逃がすな!」
追っ手はディンを追いかける。逃げるディンは、途中で、話しをしているポケモン二匹を見つけた。止まって木からそっと降り、隠れて聞く。
「聞いたか?また近くの村が襲われたらしいぜ」
「聞いた聞いた。イヤだよね〜」
「……」
すぐにピンときたディンは、また木から木へとジャンプして、その村へと向かった。
しばらくして例の村に着いたディン。そして、その村を見て唖然とした。村は全壊しており、火事が起きていた。
「ひでぇ……」
中を歩きながら見回るディン。辺りを見ていると、村のど真ん中に一匹のポケモンがいた。
「誰だ!!」
そのポケモンに近づく。そこにいたポケモンは……ディンだった。
「な……俺……?」
「……久しぶりだな」
もう一匹のディンの体が変わっていき、正体は……リリアだった。
「リリア!?お前……なんで……」
「俺の仲間だからだ」
今度は上から声がした。見上げると、黒いリザードンの(シグマ)がいた。狽ヘ、リリア達の大陸にいたポケモンで、体には、武器があり、リリアやディン達は激闘の末、倒した……はずだった。
「どういうことだ!リリアに何をした!」
狽ノ怒鳴るディン。返ってきた言葉は意外な言葉だった。
「何もしていない……。コイツから俺のとこに来たのだ」
「なに……!?」
唖然とするディン。拳を固く握りしめ、怒りの眼を狽ノ向ける。
「昔は散々やられたからな……まずはお前を殺す事にしたのだ」
「俺を……?」
「お前の力や能力は厄介だからな……」
ニヤリと笑う煤Bディンの表情は相変わらずだ。
「ふざけんな!!俺が狙いなら、なぜ最初から俺を襲わない!!無関係な村を襲いやがって!!」
「ふん……正義気取りのお前を犯罪者にしようと考えただけよ」
「貴様……!」
ディンは狽ノ飛びかかった。しかし、その攻撃はリリアのサイコキネシスで阻止される。そして、そのまま岩に向けて飛ばした。ガードもとれず、ディンは岩に叩きつけられ、崩れた岩の下敷きにされてしまった。
ガラガラと音を立て、崩れた岩の下から出てきたディン。かなりのダメージを受けた事は、表情を見てわかる。体も傷だらけだ。
「ふん……。あの攻撃を受けてまだ立ち上がるとは……さすがだな」
「……るせぇ……。てめぇなんかに負けるかよ……」
また狽ノ飛びかかるディン。今度はシャドーボールを放つリリアだが、ディンはかわしていく。
「爆裂パンチ!!」
ディンは爆裂パンチを狽ノ放つ。しかし、リーチの差か、狽ヘディンの腕を掴んで止め、そのまま投げ飛ばす。
「く……」
飛ばされながらも、空中で体制を立て直し、うまく着地する。
「しぶとい……と、言っておこうか?」
「ふん……。まさに、俺はしぶといぜ……」
ニヤリとするディン。すると、狽ヘ急に笑い出した。
「クックック……」
「?なにがおかしい」
急に狽ェ笑いだしたことに不信さを感じたディン。次に狽ェ口に出した言葉は意外な事だった。
「どうだ?お前も俺の仲間にならないか?」
「……は?」
ディンは耳を疑った。殺しに来たのに、仲間に誘うのはおかしいからだ。
「誰がお前の仲間に……」
「リリアはこの問いにYESと答えた」
「……!」
ディンの言葉が途切れた。
「もし、断ればお前の仲間は皆殺しだ」
「な……!?」
狽フ言葉で、ディンはいろんな仲間を頭に浮かべた。STARSの仲間やギルドの連中、ジュプトルにコウ、クレア。ピッチやレイ、フライ、ジャン。それぞれの顔が浮かぶと、ディンの腕が、だらんと垂れ下がった。狽ヘ、諦めたと思い、ディンに近づく。
「諦めたか?」
「……俺が仲間になれば……フィン達には手を出さないんだな……?」
「ああ」
ディンはギリギリと歯を噛み締め、「ごめん……みんな……」とつぶやき、狽ニリリアと共に消えた。
一方、STARS基地……
「なんで……なんでディンから連絡がないの……」
ディンから連絡が無いことにイライラするサン。さっき来たジュプトルは腕を組んで目を閉じている。
「なにかあったのかしら……」
フィンとフリーズは心配し、シンは平然としている。
「大丈夫だろ。アイツはそう簡単にはやられないしな」
「そうだけど……」
やはり心配するフィン。そこでジュプトルが立ち上がる。
「どこに行くの?」
「探しに行くんだ。ちょっと心当たりがあるからな」
ミミの質問に返答するジュプトル。階段を上がって出て行く。
「心当たり……どこだろう……」
「さぁ……」
不信に思うサンとミミ。いつの間にかシンがいなくなっていて、フリーズはため息をついている。
ジュプトルはトレジャータウンを抜け海岸に来ていた。
「……なんでお前までいるんだ?」
「いいじゃねぇか」
ジュプトルの隣には、シンがいた。まるで、一緒に行くといっているような顔で歩いている。
「ディンを探すんだろ?俺も行くぜ」
「ふ……いいだろう」
フッと笑うジュプトル。そして、海岸にいるラプラスに会う。本来、ディンとフィン、ジュプトル以外は幻の大地に行けないが、今回はジュプトルの説得により、特別に同行させてもらえたシン。二匹は幻の大地に向かった。そして、数分後に辿り着く。
「ふぅ、着いたな」
「ここにディンがいるのか?」
「……あそこに高台があるだろう?」
ジュプトルは指を指す。確かに、その先に高台が見える。
「未来で俺とディンはあそこで出会ったんだ。つまり、あいつはこのポケモン世界に来て、あの高台が最初の場所だったんだ」
「ふ〜ん……」
一通り説明すると、いきなり空が光った。
< ドゴーーーン!! >「な……なんだ!?」
いきなりもの凄い雷が高台に落ちた。ジュプトルとシンは驚く。そして、二匹は高台に急いだ。
その頃、高台では……
「はぁ……はぁ……くそ!」
高台にはディンがいて、周りにはクレームができていて、その周りは焦げている。さらに、今度はパンチで岩を砕く。
「どうすりゃ……いい……」
どうやら、狽フ仲間になって苦しんでるようだ。
「……悩んでても仕方ない……」
どうやらすこし落ち着いたらしく、狽フもとに戻ろうとする。そこに……
「ディン!」
「!?」
ディンはジュプトル&シンと出会ってしまった。
「ジュプトル……シン……」
ディンは顔をそらす。そこに、ジュプトルがディンの肩をポンと叩く。
「みんなが心配しているぞ?」
ディンがジュプトルの手を振り払う。
「……悪いが、俺は戻れない。もう……お前等が知ってる俺じゃねぇんだ……」
ちょっと歩いて立ち止まって言うディン。ジュプトルとシンは顔を見合わせて首を傾げる。
「どういう……意味だ?」
「……俺は狽フ仲間になった」
「狽セと!?」
ジュプトルがもの凄い表情で叫んだ。シンは誰のことかわからず、さらに首を傾げた。
「なぁ……狽チて?」
「……狽ヘ別の大陸にいたサイボーグの黒いリザードンだ。かつては俺達が倒したはずなのだが……」
「……ヤバい奴なのか?」
ジュプトルは頷く。
「お前……なんで……」
ジュプトルはディンに聞こうとしたが、すでにいなかった。説明している間にピジョットに変身して去っていったのだ。
「ディン……」
「あのバカ……」
ジュプトルとシンは空を見つめてディンを心から心配している。そして、ディンは……
「……」
「ふん……どうやら誤算だったようだな」
途中で狽ニ鉢合わせして空を共に飛んでいた。
「……仲間が俺のせいで消されたらたまらないからな……」
「ふ……」
そう言って幻の大地を抜けて別の場所に行った。
「え!?ディンが狽フ仲間に!?」
基地でサンが叫ぶとジュプトルとシンは頷いた。フィンは口を抑えて震えている。
「なんで……」
「それはわからない……とにかく、またディンに会わないと……」
「その必要はないわ」
階段を降りてきたのはリリアだった。
「リリア!?」
「これ、ディンから」
渡したのは手紙だった。リリアは渡すと、すぐに去っていった。シンはすぐさま手紙を読む。
「な……」
「なにが書いてあったのだ?」
「城だ……」
「は?」
「城に行くぞ!」
シンは突然走り出す。落としていった手紙をジュプトルが拾うと、読み出す。
「なるほど……ディンは城にいるようだ」
「城?城ってあの?」
「ああ……いくぞ」
ジュプトルとSTARSはまたまた城へと向かった。
シンは城に向かって走っている途中、前方にシンに向かって歩いているポケモンを発見した。なぜかシンはムカついたらしく、そのポケモンを蹴り飛ばした。
「う!?」
ポケモンは吹っ飛んだ。シンは着地してよく見てみると、種族はバクフーンで、シンとは面識がなかった。
「あ……悪い!じゃ!」
棒読みみたいな謝り方で去ろうとする。
「待て待て!」
バクフーンはシンの足を掴む。すぐさま振り払うシン。
「なんだよ!こっちは急いでんだよ!」
「俺を忘れたのか?」
シンはバクフーンの顔を見る。すると、ハッとした。
「お前……グレードか!?」
「ああ」
なんと、バクフーンの正体はグレードだった。リリアに続いてグレードも進化していた。
「相変わらず変態な顔してるな」
「それで蹴っ飛ばしたのか……。まぁいい。ところでリリア知らないか?随分前からいなくなってな」
「リリア?リリアならさっき俺達の基地に来たぞ。すぐ帰ったがな」
基地を指差しながら言う。グレードは首を傾げる。
「なんでお前達の基地に?」
「さあな。こっちは急いでるから行くぜ」
シンは再び走り出した。後ろにはグレードもついてきている。
「何でお前も来んだよ!」
「いいだろ?この先にリリアがいそうな気がするんだよ」
シンはため息をつく。そして十分後に城に着き、さらに十分後にフィン達が辿り着いた。はまたまた城へと向かった。