11 シリーズ1、最終話!
場所:サメハダ岩三匹は起きて、座り込みながらプチ会議をしていた。
「……これからどこへ行くんだ?」
「……まだ決めてない。今まで集めた時の歯車も気になるしな」
確かに、一度落としたアイテムが、まだそこにあるのかはわからない。
とはいえ、あるかを確かめに行っている時間はないため、情報収集しかない。
そこで、フィンが調査をすることになり、トレジャータウンなどで盗み聞きすることにした。
…そして、しばらくたって、フィンが戻ってきた。
「どうだった?」
「うん。時の歯車は全て、元の場所に戻ってるみたい。ただ……」
「ただ?」
フィンの言葉に首を傾げるジュプトルとディン。
「戻したのに、あちこちで時が止まってるみたい」
「な!?なぜ!?」
ディンは驚き、フィンはショックを受ける。
それはそうだろう、戻しても止まってるのだから。
「おそらく、悪化しているのだろう。急がないと、星の停止がおきてしまう」
「な!?」
「俺は行く。お前達も何かフォロー頼むぞ」
そう言って、ジュプトルは階段を駆け上がって行った。
二匹で残ったディン達は、ボーゼンとしていた。
「……とりあえず、ギルドに戻って、みんなに全てを話そう」
「……うん」
立ち上がって、ギルドへと駆けていくディンとフィン。
場所:ギルド(地上)ギルド前の長い階段を駆け上がり、ギルドに入る前みたいに、穴の柵の上に乗る。
「ポケモン発見!ポケモン発見!」
「誰の足形?誰の足形?」
大きい声が、穴から聞こえてくる。久しぶりに聞いたこの言葉…
なんだか、初めてギルドに来た気分だと、ディンは思った。
「足形は……あ……」
「お、おい、ディグダ!」
ドゴームの声がしたと思ったら、急に門が開いた。多分、ディグダが開けたのだろう。
「行くか」
「うん」
場所:ギルドB2F二匹はギルドに入り、下へ降りる。ディンは梯子を使わずに飛び降りて地下に行った。
着地すると同時に何やらでかい物体がディンに向かって凄いスピードで飛んできた。
それを片手でキャッチすると、物体の正体が分かった。
「ん?お前……グレードじゃねぇか」
「よお……ディン……」
「おお!ディン達が帰ってきたぞ!」
ギルドの仲間達に囲まれ、サンとミミがディンに飛びついてきた。
「無事でよかった〜」
「心配したんだから〜」
サンとミミは完全にフィンを無視し、ディンのみすり寄った。
「本当よ」
キマワリの後ろからリリアが出てきた。何やら不機嫌な顔つきでディンに近づく。
「コンテストが一段落ついて、会いに来たら未来に連れてかれたって…はぁ…」
「ワリィワリィ」
「まぁ無事でよかったけどね」
ニコッとするリリアにニコッと返すディン。
「ディン、あれを言わなくちゃ」
フィンに言われ、本当の目的を思い出したディン。
未来であったこと、時の歯車の事、ディンの事も全て話した。
その言葉に、全員、ポカンとする。
「ディンが人間……」
「まさか……」
やはり、みんな驚いている。すぐに理解できずにはいられないのだろう。
「そして、頼みがある。ユクシー、エムリット、アグノムに会って、事情を説明してくれ」
「アグノム?」
アグノムを知らないみんなは首を傾げる。
「ああ。そいつも時の歯車を守ってる。
あそこの場所と仕掛けの解く方法はこの紙に書いといた。頼む」
「あ、ああ」
ギルドの弟子達はそれぞれに別れて行った。
ディンはリリア達に振り向き、ただいまと言った。
「プクリン、聞きたいことがあるんだが」
「なに?」
ディンがプクリンに、フィンから借りた遺跡のかけらをプクリンに見せる。
「この模様わかるか?」
「不思議な模様だな……」
ペラップも横から模様を見て、呟く。
「ああ、見たことあるよ」
「マジか!?」
本当に知ってるとは思わず、大きい声で叫んだ。リリア達は何の話かわからないようで、首を傾げる。
「いその洞窟てところだよ。ペラップは知ってるでしょ?」
「あ、そういえば………」
「よし、いその洞窟だ!」
気がつけばディン達は走り去ってしまった。リリア達も一緒に。
「さて……僕はちょっと出かけるから留守番してて」
「は……はい」
プクリンも出掛けてしまい、ポツンと一匹残されてしまったペラップ。
少し、寂しさを覚えた。
場所:いその洞窟「………で、なんでリリア達もいるんだ?」
「いいじゃない。面白そうだもん」
ニッコリとするリリアに、ディンは苦笑いする。
仕方ないな…みたいな表情で溜め息を一つして…合計五匹で、いその洞窟に入った。
(メンバーオーバーなんて気にしない気にしないw by318)
いその洞窟を進んでく、ディン達五匹。
ただ一匹、初めてのダンジョンで、はしゃぎ回り、勝手にどこかへ行ってしまうのがいた。
リリアである。その相手をしているディン達はグッタリしていた。
「リリアを連れてきたのはマジ間違いだ………。なぁ、グレ……」
「フィンちゃん、これが終わったら一緒にお茶しない?」
「ちょ……今は仕事中……」
またフィンにナンパしているグレードは、ディンのアッパーを喰らう。
どうやら、リリアがしているアッパーを見て覚えたのだろう。
そして、奥からリリアの叫び声がした。
「キャアアアアア!」
「リリア!」
ディン達が駆けつけると、そこにはリリアの姿はなく、代わりに大きい穴が空いていた。
「落とし穴に落ちちゃったんだ……」
「落とし穴?」
「トラップよ」
ディンの問いにフィンはそう答えた。
リリアが落ちたというのに、ヤミーとグレードは落ち着いている。
「リリアなら大丈夫だ」
「怪我一つせずにピンピンしているカー」
それを聞いて、ディンとフィンはゆっくり頷く。
そして、階段を下りてさらに地下へ行く。
リリアを探すために奥へ行くも、全然見つからず、ついに最下層まで来てしまったディン達。
ちょっと心配気味になってきたようだ。
「……たく、どこまで行ったんだ……」
「さすがに……ちょっと心配だぞ……」
キョロキョロしながらリリアを探していると、さらに奥から話し声が聞こえてきた。
「なんだぁ?」
行ってみると、リリアがドクローズにケンカを売っていた。
「邪魔よ!さっさとどいて!」
「無理だな。この先に宝があるらしいから通すわけにはいかねぇ」
それを見て、やれやれと言った感じにディンが近づく。
「またてめぇらか」
「来たな……STARS」
まるで待っていたかの様に言うスカタンク。
すぐにバトル体制をするが、ディンは構えをとらない。
「今日こそ倒してやる。ククク……」
「そうか。だが………」
いつの間にかディンはリリア達の前から消え、ドクローズの後ろに現れた。
「お前等じゃ足止めはできねぇよ」
「い、いつの間に!?」
「速い……」
ドクローズやフィン達には見えなかったが、実力のあるリリアには、かすかに見えたようだ。
実は、ディンは軽い高速移動をしただけなのだ。
…エーフィに変身して、念力でフィン達を移動、ドクローズを無視して、さらに先に進む。
「ここか……」
最奥部に着き、右側の壁に遺跡のかけらと同じ模様があった。
さらに、フィンが持っている遺跡のかけらが反応しているかのようにうっすらと光っている。
かけらを模様のある壁に近付けると…
壁の模様が光り出し、閃光となって大きな穴の開いた海の先へと消えた。
「な……なんだったんだ?」
「見て、何か近付いてくるわ」
リリアに言われ、全員が海を見ると、確かに何かが近付いてくる。
やってきたのはラプラスだった。
「あなた達ですね?遺跡のかけらを持つものは」
「は、はい……」
「やあ、来たね」
後ろからプクリンとジュプトルがやってきた。
この二匹が一緒に来たのにディンとフィンは驚いた。
「何でプクリンとジュプトルが一緒に?」
「すぐそこで会ったからだよ。それでね、ちょっとギルドに戻ってくれる?」
「は?何で……」
「いいから、いいから」
ディン達が顔を見合わせ、ラプラスにすぐ戻ると言ってギルドへと戻った。
場所:ギルドB2Fギルドの地下二階に、見たことのないドーブルがいた。
「こいつは?」
「このポケモンはね、絵描きの天才なんだよ。
行く前にみんなでとSTARSで絵を描いてもらおうと思ってね。
無事に帰ってくるように」
そう言いながら、プクリンは全員を並ばせ、ドーブルに描いてもらう。
ディンはブツブツ言っていたが、何気にポーズをとっていた。
そして、次はディン率いるSTARSとジュプトルとリリア、グレード、ヤミーで絵を描いてもらう。
あっという間に人数分の絵が配られ、それぞれ受け取る。
まるで、絵じゃないような上手さで、ディンは驚いた。
(すげぇ……まるで写真みたいだ……)
「頑張ってね、STARS……いや、ディン、フィン、ジュプトル。
幻の大地へはラプラスが案内してくれるから」
この三匹の名前しか呼ばれないことに、サン、ミミ、リリアからブーイングが来た。
「何で私達は呼ばれないのー!」
「私も行きたい!」
「これは、選ばれた者しか行けないんだ。
フィンは、遺跡のかけらに選ばれ、
ディンは、人間から選ばれ、
ジュプトルは未来から選ばれたからね」
プクリンの言葉に、リリア達はグッと拳を作った。
「みんな……私達、ちゃんと戻るから……」
「絶対戻って来なさいよ!」
サンが言おうとしたらリリアに先越され、ギラッとリリアを睨んだ。
「ああ。さ、行こうか」
ディン達は、再びいその洞窟に進み、ラプラスに会って、幻の大地に進む。
場所:ラプラスの上ラプラスに乗って幻の大地に向かうディン達はヒマしていた。
さすがに、乗っているだけで何もしないというのは退屈で、結構ストレスが溜まる。
「ラプラス〜……まだ〜?」
「もうちょっとですから」
「はぁ………」
ジュプトルは遠くの海を見ており、フィンは遺跡のかけらをジッと見ている。
つまり、ヒマをしているのはディンだけなのだ。
人間だったらゲームしたりゲームしたりゲームしたり……
………と、まるでダメ人間みたいなことを頭の中で呟いていた。
「突入します!」
いきなり言われたディンは、バッと前を見た。
しかし、前方には海しかなく、大地はなかった。
ところが、海がまるで、途切れたかのように見え、あげくの果てには、見えなくなってしまった。
よく見ると、海が途切れたのではなく、ラプラスが飛んでいるのだ。
「ラプラス……お前……」
「見てください、あれが幻の大地です」
そこには、広い大地があった。
奥には塔があり、あれが時限の塔か……と、ジュプトルは呟く。
ラプラスは、着宙できる場所でディン達を降ろす。
「それでは、頑張ってください」
「まかせとけ」
ついに、最後の目的が始まった。
場所:幻の大地「幻の大地といっても、普通の大地と変わらないな」
幻の大地にいるポケモンに襲われながらも突き進むディン達。
彼等には、前へ進む事しか頭になかった。
そして、必ずアイツは現れると、ディンとジュプトルは考えていた。
…しばらく進むと、祭壇みたいな場所に着いた。祭壇には、真ん中に穴が空いている。
「これは……」
「間違いない。ここに遺跡のかけらをはめるのだ」
フィンは、遺跡のかけらを取り出し、穴にはめた。ピッタリはまると、振動が起きた。
「……時間がかかるみたいだな」
「この先に行ってみよう。フィン、ここは頼む」
「うん」
ディンとジュプトルは、さらに少し進んだ。しかし、そこは行き止まりだった。
「行き止まりか……。何も無さそうだな」
「ああ……戻るか」
二匹が振り返り、戻ろうとすると、よく聞き覚えのある声が聞こえた。
「ここまで来たか……」
ディンとジュプトルが振り返ると、そこに立っていたのは………ヨノワールだった。
しかも、時空ホールを開いている。
「ヨノワール!」
「未来は変えさせん!」
ディンが構えをすると、ジュプトルが腕を出して止める。
「ジュプトル?」
「ディン……お前はフィンと先に進め」
「ちょ、お前は……」
「俺はアイツを食い止める」
ディンは唖然とした。
…しかし、来いと言ったり、俺も戦うと言っても無駄だろう……と、ディンは思った。
「……わかった。死ぬなよ」
そう言って、ディンは時の歯車五つ受け取ってから戻り、フィンに訳を話して先に進む。
「ち……」
時空ホールを閉じようとしたヨノワール。
「おっと、お前は俺と未来へ帰ってもらうぜ」
ジュプトルは、ヨノワールを掴んで未来へと帰った。
「ジュプトル……大丈夫かなぁ……」
移動しながらジュプトルの心配をするフィン。ディンの表情が険しくなる。
「ジュプトルがそう簡単にやられるもんか……心配ねぇよ」
常にジュプトルを信頼するディン。
今はフィンがパートナーといっても、ジュプトルもパートナーな訳である。
場所:未来世界 & sideジュプトル&ヨノワールその頃、未来世界では………
「く……未来に戻ってきてしまった……」
ヨノワールが拳を作って、地面をドンっと叩く。
ジュプトルはいても、ディンがいなくちゃ意味がない。
「もう……終わりだ……私は消えてしまう……」
「俺を殺さないのか?」
絶望をしたヨノワールを見て、ジュプトルはそう質問した。
しかし、ヨノワールは、世界の終わりを見届けろと答える。
すると、ジュプトルが振り返り、歩き出した。
「まて!どこへ行く?」
「闇のディアルガを倒し、時間と空間を分離する」
「馬鹿な!ディアルガ様を倒すだと!?」
ヨノワールはもの凄く驚いた。恐らく、大半は驚くような発言だろう。
「可能性はある。何もしないよりはマシだからな……生きるためには」
そう言うと、走り出した。ヨノワールは、その場に立ちすくんでいた。
「生きるためには……か」
そう呟き、ジュプトルを追いだした。一方、ディン達は……
場所:時限の塔 & sideディン&フィン「邪魔だー!」
時限の塔を進んでいた。
ディンは、十万ボルト一本、フィンは、葉っぱカッターとツルのムチで攻撃していた。
「着いた……」
時限の塔最上階に着き、奥にある時の歯車を窪を発見する。
後ろから闇のディアルガが現れ、雄叫びを上げてディン達に近づく。
…その頃、未来にいるジュプトルも、いろいろ廻り、闇のディアルガの元にやって来た。
…過去と未来………同時に最後の戦いが始まった!
「十万ボルト!」
いくつもの十万ボルトが闇のディアルガに降り注ぐ。
しかし、まるで効果が無いみたいにドラゴンクローを繰り出す。
「おっと!」
ディンはうまく交わし、柱を蹴って気合いパンチを繰り出す。
「ギャアオオオ!」
これは効いたらしく、叫び声を上げる闇のディアルガ。
続いて、フィンも葉っぱカッターや、ツルのムチ、ソーラービームを繰り出す。
「ギャオオオオ!」
「なんだ?あれは……」
空がいくつか光っている。まだ昼くらいなのに、おかしい。
すると、ドンドン近付いてくる。
「まさか……あれは……ディン、逃げて!」
「な……」
ディアルガの流星群が降り注ぐ。
フィンはうまく逃げたが、技を知らなかったディンは、まともに喰らった。
「くっ………」
流星群をまともに喰らったディンは、頭から軽い怪我をしただけだった。
とっさに体が少し動いたのだ。
…とはいえ、流星群のおかげでかなり足場が崩れ、時限の塔は崩れそうだった。
時限の塔が崩れたら、時の歯車をはめる場所もなくなり、星の停止が起きてしまう。
「ち……急がねぇとな」
隠れていたフィンも出てきて、再びバトルを始めた。
怪我したにも関わらず、攻撃力は落ちていないディン…
かなりのダメージを闇のディアルガに与えていく。
「ギャアオオオ!」
突然、闇のディアルガの尻尾?が大きく広がり、首の部分の石みたいのが光り出した。
「やべぇ!」
「キャア!」
ディンは、フィンを安全そうな場所に投げ、自分は強い電気を集めていく。
そして、闇のディアルガは最強技、時のほうこうを放った。
………完全にディンを捕らえ、大爆発が起きた。
「ディーーーン!」
何とか強い風からこらえ、大きい声で叫ぶ。
しかし、ディンがいた場所にはディンはいなかった。
「これで……」
上から声がし、見上げると、ディンが右手に電気みたいな玉を持って上空にいた。
「終わりだ!」
電気みたいな玉を投げ、闇のディアルガに命中させる。
すると、巨大な雷の柱が闇のディアルガを包み込み、ダメージを与える。
ディンが着地し、しばらくすると雷の柱が消え、闇のディアルガが倒れた。
「さてと、時の歯車を納めないとな…よし、はまった!」
同時に、崩れかけていた時限の塔も止まり、星の停止を喰い止めた。
「やった……やったー!」
フィンは喜び回る。すると、ディアルガが起き上がった。
ディンはとっさに構えをとり、フィンはピタッと喜ぶのを止めた。
「大丈夫だ、我は正気に戻れた。お前達のおかげでな」
ふぅ……と、溜め息をつき、安心するディンとフィン。
「礼を言う。よくぞ世界を救ってくれた」
フィンは照れているが、ディンは少し暗くなっていた。
性格には、顔は笑顔でいるが、心の中で暗くなっているのだ。
「さぁ、帰るがいい。仲間待っているぞ」
「うん、じゃあね」
「あ、そこのピカチュウ。少し来てくれるか?」
「ん、あぁ。フィン、後から行くから先に行っててくれ」
「さてと…本当にすまなかったな…。
それにしても、なぜ時の停止を止めようとしたんだ?
未来を変えなければ、お前は消えることなく、仲間と一緒にいられる。
それなのに…なぜお前は…責めてるわけではないが…」
「…確かに…未来を変えなかったら俺は消えないな…
…でも、これは使命だったんだ…俺のな…
仲間たちは悲しむと思うが…いつか会うことができる、と俺は信じてる
それに…このぐらいの出来事じゃ仲間との絆は絶つことはないしな。
…じゃあな!いつまでも落ち込むなよ、またいつか会おうぜ!
もし、本当に会えたら、もう一回バトルしてくれよ!約束だ!」
(…ディン…本当にすまなかったな…)
ディアルガを倒し、時限の塔へと繋ぐ道を歩いている途中……ディンは、体が重く感じていた。
(くそ……体が重い……。時間が……近づいてるのか……)
辛そうにしてるディンを知らないフィンは、ルンルンしながら前を歩いていた。
…そして、突然、自分の体が光り出した。その光は、天へと上っていく。
「……時間……か」
ピタッと止まり、拳を作って震える。
そしてフィンは、ニコニコしながら振り向いてきた。
「ディン!私達、世界をす……く……」
フィンは、ディンの姿に気付いたらしく、驚いた表情になる。
「何……ディン……その体……まさか……」
ディンはしばらく黙ったままだった。そして、顔を上げてフィンにゆっくり言う。
「フィン……悪い。俺はもう行かなきゃいけないみたいだ……」
「そんな……なんで……」
「まぁ…俺の使命が終わったからな…」
涙を流すフィン。それを見て、ディンも涙を流しそうになった。
「泣くな……それじゃ、初めて会った時の弱虫みたいだぞ……?」
泣くのをこらえてるディンの声は震えていた。
普通の…同じ世界で別れるならば、また会うことはできるが、
違う世界に住むディンとフィンは、再会する可能性は極めてないに等しい。
「そうだよ!私は弱虫だもん」
そして、フィンはディンに抱きついてきた。
「だから……私にはディンが必要なんだもん……」
ディンの腕を震えながら握るフィン。それを見て、ディンは決心した。
「フィン!」
「えっ?」
突然ディンの大声に驚き、ディンから離れてピシッとする。
「無事に戻って幻の大地での事を全て、みんなに話すんだ!」
「………解った!」
ディンの言いたいことが伝わったらしく、フィンも涙をこらえ始めた。
「……大丈夫だ。フィンなら絶対上手くやってける……。じゃあな」
そう言うと、ディンは完全に消えた。
「ディーーーン!」
こらえる事ができずに、ディンがいた場所で大泣きするフィン。
しばらくして、ヨロヨロしながらも、ディンに言われたことを果たすためにギルドへと戻った。
途中、時空の塔へ続く道から目を離せずに、涙を目に溜めながら見えなくなるまで見ていた。
そして、トレジャータウンで全て話し、ディンがいない分、しっかりしていこうとフィンは思った。
………ディンがいつでも戻ってきてもいいように………
場所:自宅 & sideディン(のみ)「帰って……きたか……」
ディンは目を開け、うっすらと目に入ってきたのは
ギルドの部屋ではなく人間世界の自分の部屋だった。
体を確認すると、ポケモンのピカチュウの体ではなく、人間の体。
「……ふぅ。久し振りだな……この部屋も」
ディンは、ベッドから起き上がり、部屋を確認しだす。
かなり部屋は変わっていた。日付もポケモン世界に行ってから一年経っている。
時刻も朝の七時半。しかも平日。本来なら、学校に行く支度をしている時間だ。
「久々の学校か……ん…?」
制服に着替え、ベッドをよく見ると、ポケモン世界に行く前には無かった物が三つあった。
それは、スカーフと探検隊バッジ。あと、ポケモン世界の仲間たちが描かれているイラスト。
ディンはそれを見て少し微笑み、イラストをケースに入れて壁に飾り、
バッジは学校の鞄に付け、スカーフは腕に巻いた。
「フ……よし、行くか!」
鞄を持ち、部屋を出て、玄関へと走った。
途中で、ディンがいたことに驚いた母を無視して靴を履き、玄関の扉を開ける。
「いってきます!」
今日も、元気に学校へと向かった。太陽の光でバッジを光らせながら。
(フィン……みんな。また……会おうぜ)