9 足型が解らない!?
場所:ギルドB2Fそして、次の朝………いつも通りの寝起き、朝礼をやると、誰かが訪問してきた。
「足型がわからないぃ?」
ドゴームが叫んだ。
見張り番のディグダが、相手の足型がわからないらしい。
「足がないんです………」
「足がない……お通ししろ」
ぺラップがディグダに命令した。
はしごを降りてきたのはヨノワールだった。足がないのは納得する。
「やはりあなたでしたか」
「こんにちは、みなさん」
ヨノワールは、キャロルと同じく、一匹で探検隊をしている。
なんでも、だいたいの未来がわかってしまいらしく、それを生かして、探検をしているらしい。
「今日はなんの御用ですか?」
「あなた達は、先日、濃霧の森の奥に行きましたね?」
「うん♪行ったよ」
プクリンが言った。
「でも、全然成果が……」
「昨日、そこの時の歯車が盗まれました」
沈黙が流れた。誰もあそこの事は喋っていないはずなのに……なんで……みんなそう思った。
「犯人はわかっています。ジュプトルです」
「ジュプトル?」
ディンがジュプトルという言葉に反応した。
(なんだ?ジュプトルって……聞き覚えが……。
それにヨノワール……なぜ悪意があるように感じる?)
「どうしたの?ディン」
心配そうにディンの顔を覗き込むフィン。
「ん?ああ……なんでもねぇよ」
気になるが、ひとまず置いておくことにした。たぶん、仲間に心配させないためだろう。
「次の目的地は搾り出しています。北の砂漠と水晶の洞窟です」
「北の砂漠と水晶の洞窟ですか………よし、皆の衆!今から全シフトをジュプトル討伐に変える!
STARSは北の砂漠へ、ビッパ、キマワリ、ドゴームの三匹は水晶の洞窟へ行け!ほかの者はここで連絡が来るまで待機!」
「おおーーーー!」
ビッパたち三匹は、早速水晶の洞窟へ向かった。
フィン達も行こうとしたが、ディンはヨノワールの所へ向かう。
「ヨノワール?ちょっと話があんだけど………」
「どうしたのです?」
「俺の能力について質問がある」
それを聞くと、フィンは、わかったように手をポンとたたいた。
サンとミミはわからないようだ。無理もない。
ディンの能力が発揮されたときは、その場にいなかったのだから。
いや、サンはいたが、その時は、ディンは黙っていたからわからなかった。
場所:海岸サンとミミはギルドに一時残り、ディンとフィンとヨノワールは、海岸で話をすることのした。
「………ええ!?元人間ですって!?」
「うん。あの辺で倒れてたのを私が発見したの。覚えていたのは人間だったくらい。そして……」
「俺の未来や過去が見える能力」
今の言葉を聞いて、ヨノワールは考え出した。
「未来や過去が見える能力………それは、時空の叫びでは?」
「時空の叫び?」
初めて聞く言葉だった。
ディンとフィンの頭には、?マークが浮かんでいた。
「時空の叫びとは、対象のものに触れると、その未来や過去が見えたり聞けたりできる能力です」
「すごい……」
フィンは感心していた。ディンも自分に驚きを隠せないでいる。
「あと……あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
「え?ディンだけど……」
疑問に思いながらも、ディンは自分の名前を答える。
「ディンさん……」
「ディンを知ってるの?」
「いえ……残念ながら……」
明らかに知っている態度をとったヨノワール。
(そうか……こいつが……)
(ん?こいつ……今、笑った?)
一瞬だが、ヨノワールが笑ったのをディンは見逃さなかった。
ヨノワールに対して、怪しさをディンは持った。
「すみません……お役に立てなくて……」
「ううん。あの能力の事がわかっただけでもありがたいから」
「ありがとうございます。では」
ヨノワールは海岸を去った。それを、ディンは険しい表情で見ていた。
「ディン?」
振り返ると、心配そうな目で見つめるフィンがいた。
「大丈夫?」
「え?あ、ああ……」
「じゃあ、私達も北の砂漠に行こ!」
ギルドに戻り、サンを連れてSTARSは北の砂漠に向かった。
場所:北の砂漠そこは、見事な砂漠で、オアシスもありそうにない気配だった。
「……暑い……」
サンがそう言うと、さらに暑く感じた。
太陽が近くにあるんじゃないかと思うほど暑かった。
「本当にこんな所に時の歯車あるのかな……」
「知らねぇよ……」
場所:北の砂漠 最奥地ブツブツ言いながらも、先に進むSTARS。困難な末、やっと奥に着いた。
「…………」
奥には何も無なかった。あるとすれば、流砂だけだった。
ディンとフィン、サンは流砂を見てボーゼンとしている。
「暑い中ここまで来たのに………」
「もう最悪………」
「…………」
フィンとサンがへこんでいる時、ディンはジッと流砂を見ていた。
実は、前に見たことあるような感じになっているのだ。
そこから、この流砂には何かあると思っていた。
(流砂………一見行き止まりだが………何かある)
ディンは、辺りを見回した。
しかし、どこも流砂があるだけで、これといったものはなかった。
そこに、ある答えがディンの頭に過ぎった。
「そうか………まだ行き止まりじゃねぇ!」
「「 え? 」」
大声で叫んだため、フィンとサンにはっきり聞こえた。
フィンがディンに聞くと、とんでもないこと言い出した。
「流砂の中だ!」
「ハァ!?」
フィンとサンは驚いた。確かに、流砂の中は調べていない。
しかし、何もなかったら、単なる生き埋めだ。
「わかってるよ。でも……」
「でも?」
「俺、ここに来たことある気がすんだよ」
二匹は顔を見合わせた。
ここには、初めて来るのに来た事あるなんておかしい。
しかし、フィンは前にも同じ事を濃霧の森付近で言っていたのを思い出した。
「………私、ディンを信じるよ」
「ちょ………フィン!」
「さすがだな。行くぞ!フィン」
「うん!」
ディンとフィンは流砂の中に飛び込んだ。
二匹はたちまち流砂に飲み込まれ、消えていった。
「うそでしょ………」
サンは迷っていた。流砂に飲み込まれても、多少はもがけるはずだ。
しかし、それがないと言うことは、無事だという事。
「もう!」
サン覚悟して、勢い良く流砂に飛び込んだ。
場所:流砂の洞窟「いったーーい!」
流砂に飲み込まれたサンは、流砂の下にある空洞の地面に尻餅を打った。
「結局来たのか?サン」
「あれ?ディン?フィン?」
ディンもフィンも無事な姿でいた。
その空洞は、奥まで続いており、ディンとフィンはそれを見ていた。
「ディンの勘が当たったね」
「よし!行こう」
三匹は流砂の洞窟の奥に進んだ。
流砂の洞窟は、地面タイプや岩タイプが多かった。
しかし、ディンはそんな事関係なく、気合いパンチとアイアンテールで敵をけちらしている。
「楽勝♪」
「私達の出番ないね………」
「うん………」
そう。ほとんどディンが倒しているため、フィンとサンの出番がなかった。
二匹はディンだけではと無理して前に出て、敵を倒す。
そうしている内に、いつの間にか広い空間にいた。
「なんだろう……ここ」
「さあ……」
キョロキョロしながら三匹は歩いていく。すると、一つの宝箱が姿を現した。
ディンが宝箱の蓋を開けると、一つのブレスレットがあるだけだった。
ブレスレットを拾い上げ、早速装備してみる。しかし、何も起こらなかった。
「……何も起こらないね」
「まぁ、その内わかるだろう」
そう言いながら、さらに先に進む。ディンは歩きながら、シーザスの事を考えていた。
(あいつら……元人間って言ってたけど何で記憶を失ってないんだ?
そういえば、あそこにいたリーフィア……イーブイの進化系だっけ)
などを考えていると、ディンの体に異変が起きた。
それを見たフィンとサンは、とても驚いた表情をした。
「どうした?」
ディンは、二匹に聞いてみる。フィンとサンの答えは……
「ディンが……ディンが……」
「リーフィアになったー!」
だった。
ディンは不信に思いながらも自分の体を見た。確かにリーフィアになっていた。
「ちょ……何よ!これ!?」
「言葉も変わってる!?」
フィンに言われ、ハッとする。確かに、言葉が雌言葉になっていた。
そして、ブレスレットを付けてから姿が変わった。
ディンにとって、これは大きな収穫だった。
場所:流砂の洞窟 最深部喜びながら進むディンを見て、フィンとサンは苦笑いをする。
そして、遂に洞窟の最深部に着いた。因みに、ディンはまだリーフィアのままである。
「こ、これは………」
そこは、洞窟とも思えないような広さだった。霧の湖(ユクシーがいた場所)でみたような湖もあり、間違いなくここだとわかる。
ディン達は、何の迷いもなく湖に近づく。すると、どこからか声が聞こえてきた。
「ここから出て行け!」
辺りを見回してもディン達以外誰もいなく、もう声もしない。
その時、フィンがディンを呼んだ。フィンの指の先には、間違いなく、霧の湖で見たやつと同じものだった。時の歯車である。
「本当にここにあったのか………」
変身を解いてディンが時の歯車に近づこうとしたとき、目の前にユクシーと似たようなポケモンが現れた。
「時の歯車には指一本触れさせない!」
「俺達は………」
「お前達だな!ユクシーからのテレパシーで聞いた時の歯車を盗む盗賊は!」
一瞬だが、ディン達は固まった。相手は何かを勘違いしている。
「僕はエムリット!時の歯車は渡さない!」
そう言っていきなり、ディンに『念力』を使ってきた。
なんとか逃れるものの、多少のダメージを受けていた。
「人の話を聞きなさいよ!」
「誰が盗賊の話を聞くか!」
エムリットは迷いもなく『スピードスター』を放ってくる。ディンはなんなくかわして、『十万ボルト』を出そうとする。
しかし、念力で動きを封じられ、壁にたたきつけられる。
それを見たフィンとサンは、『葉っぱカッター』と『シャドーボール』を繰り出す。
「やるね……でも!」
エムリットは眠ってしまった。
体力を回復するエムリットを見て、ディンはチャンスだと思っていた。『眠る』は、体力は回復するが、しばらくは眠っていてしまう技。
三匹は総攻撃をしかけた。その総攻撃により、エムリットは起きたがそのまま倒れてしまった。
「エムリットを倒してくれたか」
後ろから声がしたから、三匹は振り返った。そこには、一匹のジュプトルが立っていた。
「ジュプトル!?」
ジュプトルの正体をわかっていたため、すぐにバトル態勢に入った。
「俺が用あるのは時の歯車だけだ。そこをどけば何もしない」
「…やだと言ったら?」
サンが恐る恐る聞き出した。すると、攻撃姿勢になり構えた。
「痛い目にあってもらう!」
ジュプトルが『リーフブレード』を繰り出してきた。
ディンはなんとか避け、『気合いパンチ』をジュプトルに当てた。
「なかなかやるな」
『穴を掘る』で地下にジュプトルは潜り、ディン達は慌てていた。
実際、『穴を掘る』を使われるのは初めてなので、ジュプトルの出てきそうな場所は見当がつかなかった。
「くそ………どこだ」
「ここだっ!」
「くっ…」
「「 ディン!? 」」
ディンの足元からジュプトルが現れ、ディンを吹っ飛ばした。すぐに態勢を立て直し、ジュプトルを攻撃するが、かわされて『リーフブレード』を受けてしまった。
たいしたダメージはないが、ディンは動かなかった。いや、動けなかったのだ。
すでにジュプトルは『穴を掘る』を使い、時の歯車を手にしていたのだった。
「それを返せ!」
「これは、俺にとって………いや、俺達にとって必要な物だ」
そう言い、ジュプトルはその場から消えた。
「俺達?他にも共犯者がいんのか?だが……」
しばらくその場で悔しがっていたディン達は、エムリットに駆け込んだ。
「……ワリィ……時の歯車を守れなかった……」
「落ち込むな。僕も早とちりをして悪かった」
その時、洞窟全体に異変が起こった。湖の波が止まったのだ。
「な……何が起こったんだ!?」
「時が止まったのだ。早く脱出しないと僕達も巻き込まれてしまう!」
「な………バッチどこだ…あった!
転送!」
ディンはエムリットを背負い、流砂の洞窟を後にした。
場所:ギルドB2Fなんとかギルドに戻ったSTARSは、流砂の洞窟であった事を皆に話す。
「そうか………」
「俺が力不足だったばっかりに………」
「自分を責めないで………」
「これで残りの歯車はあと一つ………」
「私達は水晶の洞窟に行ってみたんですけど……」
「水晶があるだけだったんでゲス」
ビッパがそういうと、懐に何かが光るのが見えた。
「ビッパ………お前、何を持ってんだ?」
「え?水晶でゲスよ。記念に持ってきたんでゲス」
水晶を取り出すと、一緒に行ったキマワリとドゴームは驚いた。どうやら、気がつかなかったらしい。
「いつの間に……」
「そうだ!ディンさん、あの水晶に触れてみてくれませんか?」
「え?そうか、時空の叫び!」
「時空の叫び?」
時空の叫びを知らないディン、フィン、ヨノワール以外は疑問に思った。
「ディンさんには、物に触れると、その過去や未来を見る事ができるのです」
ヨノワールが説明すると、周りからおおーーー!との声が上がった。
「ビッパ、水晶を貸せ」
「はいでゲス」
ディンは水晶を受け取ると、時空の叫びが発動した。ジュプトルが青いポケモンを襲っているのが見える。
「……どうでしたか?」
「見えた。青いポケモンがジュプトルに襲われてた」
「それは過去か未来かわかりますか?」
ディンは首を横に振る。当然だ。襲われた映像だけでは過去かも未来かもわからない。
ディンが少し悔しそうに拳をつくると、ヨノワールが質問してきた。
「……エムリットはユクシーから聞いたと言っていたんですよね?」
「ああ……」
「なら、未来の映像の可能性が大きいです」
辺りがざわめいた。
「この世界には泉を守るポケモンが三匹います。知識の神ユクシー、感情の神エムリット、そして、意思の神アグノム」
「そういえば……時空の叫びで泉があったな」
「じゃあ………」
この瞬間、全員の士気が上がった!しかし……
「ここは、ディンさんとフィンさんで行ってもらいます」
辺りが静まり返った。ヨノワールの一言でディンとフィン以外の全員が静かになった。
「な……なぜ……」
「ディンさんとフィンさんは唯一ジュプトルと戦いました。なので、今回も行ってもらいたいのです。」
「いいぜ!」
「もちろん」
他のギルドメンバーは少し落ち込んでいた…。
「今日はもう遅い、明日朝一番に行ってくれ♪」
「あ、もう夜か…了解!」