3ページ目 季節外れの入学式
6月8日。とうとう入学式の日がやってきた。
ってか、桜が咲いてる…まぁ、この島は何が起こっても仕方ないか…。
七時に起きた俺は、学校の支度をする。
制服じゃないらしいから助かるなぁ。
制服なんて帰ったらいちいち着替えるからめんどくさい。
「よし…こんなもんかな」
漫画でよくある薄い鞄を持ち、外に出る。
「いい天気だけど…眠ぃな…」
俺は大きなあくびをした。そこへ、ピカがやって来た。
「おはよー!早いね?」
「まあな。眠いけど」
「おはよう、二人とも早いね」
「ピカと同じこと言ったぞ?」
ピカとフリーズの案内で学校にたどり着いた。…なんというか……説明できん。
「あそこにクラス割りがあるわ」
クラス割りは、げた箱の前に貼ってあった。
「二人はどこだった?僕1組」
「んと…あ、俺もだ」
「私もよ」
みんな同じだと?なんか怪しい…。
「そんな事ないわよ」
「だといいな…僕、さっきからいやな予感が…」
俺とピカが嫌な予感を感じながらも教室へ行く。席は、自由に座っていいらしい。
とりあえず、後ろの方に座る。
「あーくそ…視線がイテェ…」
「前と同じだね」
「3年間耐えられるかな…」
30分後、先生らしいポケモンが入ってきた。種族は、ライチュウ。
「よーし!ホームルーム…略して
HR!始めるよ!」
「ラ、ライ!」
突然、ピカが立ち上がった。いきなりだからビックリしたぜ…。
「ピカか。久し振りだな」
「なんでここにいる!仕事はどうした!」
…なんか口調が変わってないか?
「ピカは、怒るとあの口調になるの。ライは、ピカのおじさんよ。」
「なんで怒ってんだ?ピカは…」
「ちょっと…忌まわしい記憶があってね…」忌まわしい記憶ってなんだ?
「前の仕事はやめたよ。今はこの学校の先生だ」
「い、いい加減な…ってか、なぜ公務員としてお前が合格された…!?」
「学校では、先生をつけような?よし、俺はこのクラスの担任、ライ。
よろしく。これから始業式が始まるから番号順に並んで体育館に行くように。」
俺達は、番号順に並び、体育館に向かった。
約一名、ピカは、ライという担任に対して文句をブツブツ言っていた。
やっとピカの独り言が終わったときは、入学式が終わった後だった。
「やっと独り言終わったか…少しうるさかったぜ?」
「ゴメン…ああ…よりによってあいつが担任なんて…」
「なにがあったか聞かないが…一年間がんばれ…」
「うん…」
ピカが落ち込んでいる時にライがニヤついた表情で教室に入ってきた。
「それじゃ、HR始める!まずは、自己紹介しようか」
右端から順に自己紹介していく。
「え…と、ピカです…よろしく…」
「レンです。えと…この島でただ一人の人間だと思うけど…よろしく」
「フリーズです。ニックネームはそのままなので…よろしくお願いします」
前にピカに案内してもらった時に紹介したポケモンがいっぱいいたため、驚くポケモンは少なかった。
「次は、委員長を決める。誰か立候補はいるか?」
『シ〜ン…』
「じゃあ、俺が決めるぞ?ピk…」
「僕はやらないぞ?
絶対に!」
絶対にを強調したよ…こいつ…。
「う……じゃあ…」
「先生?私がやりましょうか?」
手を挙げたのは、頭の良さそうなサーナイトだった。スゲェ…。
さすが、エスカレーター高校…
「サーナか?サーナなら大丈夫だろう。
今日はここまで!明日は、係りなどを決めるから。じゃあ解散!」
ライという担任は、出席簿を持って教室を出る。
「しっかし…よくお前が当てられるってわかったな?」
「いつものことだから…わかるんだ…」
「嫌な仕事は、いつも最初にピカを指名するから…」
「そうか…」
「ピカー!帰ろうぜ」
話しかけてきたのは、ゼニガメのゼニ。案内の時に知り合った。
ん…と思ったが、口には出さないでおくか…。
「ゼニだっけ?元気だな…」
「おうよ!それが俺のポリシーだからな!」
「そうか…」
「あいつのせいで疲れたから家に帰るよ…」
ゼニとピカの家は、反対方向なのだ。もちろん、俺とフリーズもゼニとは反対方向。
「じゃあ俺帰るわ!じゃなー」
「うん…」
ゼニは、走って帰った。本当に元気な奴だな…
「私達も帰りましょうか」
「そだね」
「ああ…」
そして俺達は、寄り道する事もなく、家に帰った。
ピカは、帰ってすぐ眠ったようだ。
係も決め、学校も三日目。高校の初めての授業が始まる。
「学校に行くのはいいけど…勉強はめんどくさいな…」
「それが僕達、学生の仕事だから…」
「わかってるけどさ…」
教室のドアがガラッと開く。
「授業始めるぞ」
ピカはピクッと反応した。
「ああ…最初の授業がライなんて…イヤだ…」
「諦めろ…」
最初は数学。隣でブツブツ聞こえる。入学式の事思い出すな…
「じゃ…次の問題を…ワニニ!」
「ワニニ?」
ワニニとは、ワニノコというポケモンの名前だ。
「えと…3x?」
「正解だ」
…頭はいいみたいだ… 。そして、休み時間。俺はワニニに話しかけてみる事にした。
「よう」
「ん?人間の…え〜と…レンか?」
「ああ。お前って頭いいみたいだな?」
「別に…っていうか、中学の時に習ったろ?あれ」
確かに…中3で習ったな。
「それに、あーゆーバカな先生は楽でいいからな」
ライ「ハクション!…あー、誰か俺のかっこいいウワサしてるのかなぁwww」いつの間にか隣にいたピカと一緒に頷く。
「そういえばさぁ…なんでレンって人間の学校に行かなかったんだ?」
「いやぁ…二校受けたんだけどな…どっちも落ちちゃって…入試…」
「うわぁ…」
「まぁ、今となっちゃ落ちてよかったかもな」
「どうして?」
「ポケモンが実在するってわかったから。それになんかこの島居心地いいしな!…親には言えないけど…」
「何で?」
「辞めさせられるから」
威張った感じで言ってみた。
「お前って面白い奴だな!とりあえずこれからもよろしくな?レン、ピカ」
「ああ」
「よろしくね」
こうして、色々なポケモンと仲良くなった俺。これからどうなるだろうか?
HRが終わり、帰りの時間。
「このあと、どっか行く?」
「いいな。弁当だけじゃ足りないからな…メシ食いたい」
「じゃ、行くか?」
「あ、ねぇ?」
話かけてきたのはフリーズだった。
「今日、友達の家に行くんだけど…三人も来る?」
「友達?」
「多分、ミミロルのロールとパチリスのリースのことだよ。いいの?」
「うん」
「レンとワニニどうする?」
「じゃ、せっかくだから…」
「行くか?」
「じゃあ、決まりね」
その後、フリーズについて行き、ロールという、ポケモンの家に着いた。
「ここよ」
「…」
結構で家だった。金持ちなんだろうか?
リンゴ〜ンという、ちょっと変わったチャイムの後に扉が開いた。
「あ、いらっしゃい」
「おじゃまします」
「リースはもう少ししたら来ると思うから…先に私の部屋に行ってて」
「うん」
ロールという子の部屋は二階の奥にあった。
…にしても広い。
「でかい家だな…」
「緊張しなくても大丈夫よ」
二分後、パチリスと一緒にロールが入ってきた。
「おまたせー!はい、ジュース」
「ありがとう」
「ありがとう」
「どうも」
「サンキュー」
ジュースをグビグビ飲む二匹。
「なにして遊ぶ?」
「かくれんぼやろうぜ!広いんだし」
「え…」
「僕は別にいいけど…悪いんじゃないかな…」
「別にいいわよ?」
「それじゃ、じゃんけんだな」
なぜか、かくれんぼをやることになった。
高校生にもなってやることか。やりたくねぇ…
「それじゃ…じゃーんけーん…」
俺、グー
ピカ、チョキ
ワニニ、グー
フリーズ、グー
リース、グー
ロール、グー
と、いうことで一発で決まった。
「僕ぅ…?」
「じゃみんな…隠れるぞー!」
楽しそうだな。おい!
しょうがないから付き合うことにした。
「さて…どこに隠れるか…」
「私ここにしよー!」
「私ここー」
ロールは、クローゼットの中。
リースは、床下収納の中に隠れた。
「オイラはどうするか…そうだ!」
ワニニが風呂場に向かう。
いきなり、浴槽の中に『みずでっぽう』で水を入れ始めた。
「おい…どうする気だ?」
「へへ…この水の中に隠れんだよ」
せこい…などと考えてる場合ではない。早く隠れよう…
「ここにするか…」
俺がどこに隠れたかはみんなで考えてくれ…ヒントは『あけっぱなし』だ。
ここからは、俺のナレーションはないからな。
「100!」
百数えたピカは、早速部屋を出る。
「んんwww、バカめwww」
ピカが出ていった後、ボソッとつぶやいた。
ヒント、数えていたピカの近くに隠れている。
「さ〜て…どこかな?」
ピカは、寝室に入った。
「寝室か…こういう部屋の場合…」
ベッドの下、布団の中を見た。しかし、いない。
「あとは…あのクローゼットか…」
ロールは、この部屋のクローゼットいた。
「!」
ロールに緊張が走る。
「う〜んと…」
ピカは服を一つ一つずらし、調べていく
ドキドキ…
上の棚を調べ始め、シーツをめくった。
「あ…」
「ロールちゃんみーっけ」
「あ〜あ…」
「じゃ、元の部屋に行っててね」
捜索を再開したピカ。
トイレ、吹き抜け、ベランダを探した。次にやってきたのは台所。
この台所の床下収納にリースが隠れている。
「どうしよう…来た…」
棚などを探していく。
遂に、床下収納に手を掛けた。
「見つかる…」
< ガタン >
どこからか物音が聞こえた。
「誰だ?」
床下収納から手を離し、物音がした所へ向かう。
「…助かった…」
ピカが聞いた物音は、ほうきが倒れただけだった。
「なぁ〜んだ…」
ガックリしながら、かくれんぼを再開するピカ。
床下収納の事は忘れている。次にやってきたのは風呂場。
「う〜ん…お風呂場も広いなぁ…」
壁を叩いたりして、浴槽の蓋を開けた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なんと、ワニニが『怖い顔』をした状態で待ちかまえていた。
「あ〜あ…見つかっちゃった」
「はぁはぁ…あ〜…ビックリしたぁ…」
心臓がドキドキしながらも再び探し出す。
「あとは、レンとリースとフリーズか…」
ピカは、家の一通り探す。
その頃、スタート地点では…
「あれ?レン君…そこに隠れてたの?」
ロールは、レンを見つけていた。
「ピカは、ドアを開けっ放しにするからな…結構見つかんねぇ」
さぁ、レンがどこに隠れてるかわかったか?
一方、ピカは…
「あ、そういえば床下収納…見てないや」
再び、台所へ。
リースに緊張が走る。
「お願い…」
願うが、見つかってしまった。
「リースみっけ」
「あ〜あ…」
「さて…残るはレンとフリーズだ!」
ピカは走り出した。
しかし、ピカが探している間、レンは三人が見つけている。
「こんな近くに隠れてて見つかんないなんて…」
「最高ね」
「そういえば、フリーズがいないね…」
「まだ見つかってないんだろ」
その頃ピカは、玄関にいた。
「うわ!」
「え…!?…あー、(;・∀・)ダ、ダイジョウブ…?」
「…すごく痛い…」
フリーズは、掃除道具をしまっている結構広い部屋の中にいた。
が、すごく心細かったらしく、
箒を持っており…うん、痛そうだ…。
「なんか…驚いてばっか…」
ヨロヨロと探す。
午後6時。ついにピカが降参した。
「まいったぁ…」
スタート地点でバタッと倒れる。
「じゃ、俺達の勝ちだな」
「レン君?出てきていいよ」
キィィ…と扉が閉まると、レンが姿を現す。
「そんなとこに隠れてたのぉ〜?」
「一番最初に見つかると思ったんだがな…」
「開けっ放しにしたのが悪かったわね」
「はぁ…」
この後、軽く片付けをして、それぞれの家に帰路した。
「マラソンめんどくさい…」
体育の時間。
担当のリザードンが仕切っている。
今は、マラソンをやらされている。
「ホント…楽な卓球やりたかった…得意なんだぜ?卓球…」
「ふ〜ん…俺は好きだぜ?走るの」
話しながら走っていると、猛スピードで走っていくポケモンがいた。
「なんだ?」
「あれは…サンダースのシンとブースターのスター、ブラッキーのキラーだね」
「いっつも争ってんだ。あいつら…」
「なんで?」
レンが聞き返すと、また追い抜いた。
「俺は負けない!」
「何が何でも勝つ!」
「フ…走りで僕に勝てるはずないだろう?」
大声で叫んでいるため、離れていても聞こえる。
「この高校にアイドル的なポケモンがいるだろ?」
「ああ…エーフィのレーナとリーフィアのリーフだっけ?」
「そうそう。あいつら、惚れててさぁ…ライバルなんだよ。お互いが」
「ちなみに、フリーズとも仲がいいんだよ」
わかるような気がする…同じ、イーブイの進化系だし…
「コラー!喋ってないでサッサと走れ!」
「やべ…」
「マジメに走ろうか…」
「そだな…」
その後、サッカーをして授業を終えた。
そして、お弁当タイム。
その日のレンのご飯は、パンだった。
「おい…」
「あん?」
そこには、ブラッキーが立っていた。
「そのパン…くれるか?」
「は?何でだよ…」
「レーナにあげたら無くたってな?」
「バカか?あげたら無くなるに決まってんだろ!」
俺は呆れた。多めに買ってしまったため、カツサンドをあげた。
「サンキュー」
と言い、去った。
「ったく…」
「なぁ…」
今度は、ブースターだった。
「その牛乳くれ」
「まさか…」
「実はリーフに…」
「お前もかよ!」
「いや…ライバルに差をつけたいじゃん?」
「だからって…他のクラスからたかるなよ…」
「気にすんな!」
なんかムカつくが、早く帰ってほしいため牛乳をあげた。
礼を言ってスターは、教室を後にする。
「ホントにバカなんだから…」
「大変だね…」
その時、俺にに幸運が……?
「あの…」
「またか…今度は何を?」
「いえ…パンと牛乳を返しに…」
「え?」
ふと顔を見ると、毛並みが綺麗なエーフィとリーフィアがいた。
「シン君が持っていった牛乳と…」
「スター君が持っていったカツサンドです」
「ああ…こりゃご丁寧に…」
「本当にごめんなさいね」
「いや…別に…」
「ウフフ…人間って優しいのね。それじゃ…」
レーナとリーフは去っていった。
「え〜と…?」
「きれいだったね…」
「ああ…」
二匹はポ〜ッとしていた。
「何やってんだ?お前等…」
ピカとワニニは、正気を取り戻した。
あと、レンは鈍感である。
「ねぇ?ピカ君…」
「え?ひっ!?」
フリーズが現れた。しかも、黒いオーラを出しながら…
「何でポ〜ッとリーフちゃん達を見てたの?可愛いもんね…リーフちゃん達…」
「ち…違うよ…そんなんじゃ…」
ピカは、必死に誤解を解こうとしている。
「…普段怒んない奴が怒ると怖えな…」
「ああ…」
何とか、ピカがフリーズの機嫌を直したのは、三日後だった。
商店街にブースターのスターがトボトボ歩いていた。
彼は、片思い相手、リーフィアのリーフ家に行ったが、留守だったため、ガックリしながら歩いていた。
「ハァ〜……リーフは留守だし……何しようかな………」
しばらく歩いていると、後ろから声を掛けられた。
レンとピカとワニニとフリーズだ。
「よお!スター!どこに行くんだ?」
「別に?ただ歩いていただけだが………」
「じゃあさ、私達とカラオケ行かない?」
フリーズの誘いを受けてスターは迷った。
フリーズも学校内ではトップクラスの人気もあるため、誘いを断るのはもったいない。
「……行く」
「んじゃ、行くか」
五人は、近くにあるカラオケBOXに入った。
そこで、レンは、ある提案を出す。
「カラオケバトルをやろう」
「え?」
突然言うものだから、四人はポカンとした。
レンは鼻歌をしながら設定をしていく。
最初に一人で五曲歌い、五曲の合計を競うという内容らしい。
先にレンが歌う。とてもうまく、合計483点。
「………すごい」
「じょうず……」
「歌手いけるんじゃねぇ?」
その頃、ワニニの隣で、スターは対抗の炎を燃やしていた。
次々と曲を入力し、スターの出番が来た。
しかし、無残にも234点で終わった。
この日から、スターはカラオケの常連になったという。
カラオケ結果
1位……レン 483点
2位……フリーズ 421点
3位……ピカ 391点
4位……ワニニ 385点
5位……スター 234点
「じゃ!また明日!」
元気な声が飛び交い、一日は終わった…。