カントー日報A
Q 性格を見抜くのが遅かったのか。
二児の父をしております。子供の頃からポケモンリーグを見るのが好きで、結婚し子供ができてからもそれは変わっておりませんし、子供達も私に影響されてポケモンリーグのファンとなっております。
去年、知り合いのポケモントレーナーのピジョットに子供が生まれたと連絡がありました。かねてよりポケモンを欲しがっていた上の子の一匹めに丁度いいと思い、それを譲り受け、上の子に世話をさせています。
当然上の子はそのポッポを連れてバトルも行いますが、どうもこのポッポの性格がせっかちなようで、あまりバトルに集中せずにフラフラとすることが多く、上の子も手を焼いています。
ポッポと子供たちの関係自体は良好なのであまり心配はしていないのですが、あまりバトルに不向きな性格のポケモンを与えてしまったのかなと、父親としての後悔がないといえば嘘になります。
そこでふと思ったことなのですが、リーグトレーナーのようにバトルを生業をしている方々は、個々のポケモンの性格とどのように付き合っているのでしょうか? もし、私達にも応用可能なものがあるのならば、参考にしたいと思い投稿させていただきました。
(40代男性 自営業)
A 「バトルに不向きな性格」という概念の恐ろしさ。
これはすごく細かいことかもしれないし、揚げ足をとっているようにも聞こえるかもしれないけど『バトルに不向きな性格』という言い方はあまり好きではなくて、僕はどちらかと言うと『性格的にバトルには不向き』という言い方や考え方をするように心がけている。どういうことかと言うと、ポケモンとの関係を考える時に、バトルが第一であると考えてほしくないと思っているんだよね。バトルというのは手段の一つであり、それが目的ではないと最近は思います。これはあなただけではなく、ポケモンバトルのファンであったり、トレーナーであったりする人々のほとんどすべてがバトルを目的だと考えているという現状がある。
そりゃ確かに、僕達リーグトレーナーのパートナー達は『性格的にバトルが向いている』ポケモンたちばかりだろうし、そもそも僕達リーグトレーナーというのは『性格的にバトルが向いている人間の集団』である。だからこそポケモンの性格を見抜く感受性は僕達『チャンピオンロード世代』には必要なスキルであった。今では育て屋などのスタッフがそこを代行してくれるけどね。
僕自身『性格的にバトルが不向き』なポケモンとはいくらか付き合ってきた。その内最も心に残っているのは、あるドラゴンポケモンだね。彼は器用で力強く、物怖じしない胆力もあり、何より『バトルに向いた性格』をしていた。ただ一つ彼には『人間の機嫌を伺う』というものすごく悪い癖があり、それ故に一歩目が遅れる致命的な弱点があった。当時まだ若かった僕はそれを修正できるのだと意気込んでいたけど、結局無理だった。彼は人間に虐待に酷く暴力的な調教を受けていた過去があって、もう根っこの部分から人間を信用できなくなっていた。あるいは彼をパートナーにしてバトルをすることは不可能では無かったと思う、僕達の戦力を提示し、逆らわないようにすることだってできただろう。だけど『トレーナーの機嫌を伺う』ポケモンが結果を残せるほど、リーグは甘くない。だから僕は彼と別れた。ワタルさんに頼んで、人間が入ることのないドラゴンの群生地に彼を送った。人間を信用できない彼にとって、それが最もいい選択だっただろうと、僕とワタルさんは思っている。
これはそのドラゴンが『人間との共存が難しい』からこその選択であって、あなたのお子さんに当てはまることではないと思う。
生活圏では良好な関係を築けているということはあなたのお子さんとそのポッポには『共に生きる』才能はあるのです。あなたは父親として、上の子のそのように恵まれた才能を理解していただきたい。
バトルを続ける限り、あなたのお子さんは必ず越えられない壁にぶち当たるでしょう。残念ながら、ポケモンの性格に気づくことなくバトルで手を焼いている時点で、少なくとも僕達の領域にはいないでしょうから。
その時に、お子さんの『共に生きる才能』を理解しているあなたが、彼等のその才能を否定しないであげて欲しい。バトルというものは、僕達のように『性格的にバトルに向いてしまった』人々がポケモンと共に生きる手段の一つであり、バトルができないからと言ってポケモンと共に生きることが否定されるわけではないということに、あなたが優しく導いであげてください。僕には経験がありませんが、きっとそれが親というものなのでしょう。
見抜くことを遅れた後悔よりも、それを見抜くことのできた今からを考えましょう。