週刊ポケモン生活創刊30周年特別企画『モモナリマナブのおてんき質問室』C
前回の質問コーナーは反響がとても良かったらしい。特にジバコイルとエアームドを磨いてみた動画がホウエンのトップリーグトレーナーであるダイゴさんの拡散? によって非常に多くの方々に見ていただいたようで、普段使っている工業用研磨剤のメーカーから一式をプレゼントしていただいた。本当に得をした。
ちなみに新たな質問に多くあったエアームド磨き動画の『貴族みたいなエアームド』は友人であるクシノの手持ちであり、動画にちょいちょい登場していた『カッコいい手』はクシノだった。ちょうどエアームドを磨かせてくれそうな友人がいたので良かった。クシノはリーグから離れてもう数年になるが、まだトレーニングは続けているらしくエアームドもいい引き締まり方をしていたので安心した。また、エアームドの磨き方は勝手がわからず、質問者が子供であったことから『サビ防止』の手順を多くとったが、ダイゴさんによると『正解』だそうでこれも一安心。
最近読んだ本に『禍福はあざなえる縄のごとし』という表現があったが、嬉しいこともあれば不運なこともあるのが世の常だということで、前回の質問コーナーを原因としてハナダジムリーダーのカスミにものすごく怒られた。いつまでも昔のノリを引きずるな、余計なお世話だ! ということだった。個人的には昔のノリをわざわざ蒸し返したつもりはなく、いつもからかうように書いてみたのだが、とっくの昔のカスミはそのノリではなくなっていたらしく、また、自分の周りの時の経つ速さを実感した。
というわけで今回は怒られないようにポケモンについての質問を中心に抜粋しました。今回と来週でこのコーナーは終わると聞いているので残り二回楽しんでください。
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Q モモナリさんのピクシーはお月見山にいるということを聞いたことがありますが、もしかしてピィのことも知っていたんですか?(30代女性)
A なんかちっさいのがいるなとは思ってたよ。
ピカチュウはすでに進化したポケモンである!
ジョウトのウツギ博士の発表がカントーの研究者の度肝を抜いたのは僕がリーグトレーナーになってすぐかなる前くらいのことだったんじゃないかな。
これはウツギ博士の業績にケチを付けるような意図があるわけじゃないんだけど、おそらく姿形としてのピィやピチューを見たことがある人間は多かったんじゃないかなと思うんだよね。
実際、僕もピィの姿を見たことは何度かあったと記憶している、あれはまだ子供の頃だったからウツギ博士がその発表をするよりも確実に前だね。
その頃僕はピクシーにめでたく認められて、前回の質問コーナーで言ったようにピッピ達の神聖な儀式に立ち会うこともあった。それで、そこには今で言うところのピィたちが一杯いたんだよね。
ただ僕はそれを不思議だとか大発見だとか思うことはなくて「なんかちっさいピッピがいるけど生まれたばかりなのかな?」としか思ってなかったね。この辺難しいところで、例えば生まれたばかりのロコンのしっぽが一本しか無いことは有名だし、ドードーも生まれてすぐは頭が一つだという話もある。このへんはウツギ博士の発表後にも色々議論があったらしいんだけど、結局しっぽが一本のロコンがロコンの進化前だという話にはなっていないし、ドードも同じだ。進化と成長は微妙に違うんだよね。
そのときに僕にはまさか「ピッピが進化後のポケモンだ」なんて発想は無かったからね、疑問にすら思わなかったよ。
この辺はトキワの森の保安をしていたレンジャーさんも同じらしくて、僕と全く同じ感覚だったと聞いたことがあるよ、今で言うピチューは割とよく見ていたんだけど「なんかちっさいピカチュウいるなあ」位の感覚だったんだって。
未だにお月見山でのピィが現れることはめったに無くて、それは僕のピクシーを含むお月見山内での社会性が割としっかりしていて、ピィ達は人間の目に触れないような険しい場所で面倒を見られているからだと思う。この辺ポケモンの研究をしている人たちにぜひとも教えてくれと言われることもあるんだけど、そんなに見たいならまずピクシー達に認められないとっていつも返しているよ。
Q 亡き親から受け継いだポケモンの中に言うことを聞いてくれない子がいます。トレーナーとして生計を立てているわけではない上、室内飼いなので緊急で困ってはいないのですが、時たま『もし何かのきっかけで誰かに危害を加えたら…』と不安になります。何か解決策はないでしょうか?
P.S.言うことを聞いてくれないポケモンはエルフーンです(30代女性)
A 断言はできないけどいい子だね。
難しい質問だね。僕はトレーナーから見放されたポケモンは会ったことがあるけど、トレーナーを失ったポケモンとは会ったことがない。それに、エルフーンのようなポケモンが手持ちにいるわけでもない。申し訳ないけど、文面だけでは全てに答えることはできないと思う。
ただ、この手の質問はすごく多くて、やっぱり『週刊ポケモン生活』の読者の方々はポケモンの悩みに対して相談する相手を探すのが難しいんだなと感じたのでその対処も含めて答えようと思う。
まず自分のポケモンに困った行動などがあったらポケモンセンターのジョーイさんに相談を持ち込むと良いと思う。彼女たちはただモンスターボールを機械にセットするだけが仕事じゃなくて、ポケモンのトラブルやしつけに関しての知識も豊富に持っているエキスパートだから必ず頼りになる。リーグトレーナーもたまに聞くことがあるんじゃないかな。
もしそれでも手に負えない場合にはジョーイさんが各地のジムやポケモンレンジャーに連絡をつないでくれて、そのジムのジムトレーナーが対応に来てくれる、エルフーンでカントー・ジョウトだとタマムシジムになるんじゃないかな? 大抵ジムトレーナーで解決する話なんだけどもし本当に手に負えなかったらジムリーダーの登場だね。そんな事滅多に無いけどね。
質問者の方には是非ともジョーイさんに相談していただくとして、それを前提に僕の見解を書いてみようと思う。
僕はこの質問をもらったあとに知り合いでエルフーンが手持ちにいる人に話を聞いたんだけど、エルフーンというポケモンはほんのちょっとでも隙間があるとそれを通ることができるポケモンで、普通の家だったら脱走するくらいわけないポケモンだということだった。そんなポケモンであるのに言うことを聞かないことが室内で完結しているということは、多分質問の人そのものに悪い感情があるというわけじゃないんじゃないかというのが彼女と僕の結論だった。多分いい子だと思うよ。
ここからは僕の想像なんだけど、もしかしたらエルフーンは親(あなたのお父さんかお母さんかはわからないけど)が亡くなったことをまだ知らないもしくは受け入れられていないのかもしれないね。だから彼にとってはあなたの言うことを聞く必要はないし、もしかしたら親の帰りを待っているのかもしれない。
あなたが何歳の頃からエルフーンがいるのかわからないけど、エルフーンにとってあなたは兄弟のようなものなのかもしれない。言うことを聞かないのも本人は遊んでいるつもりかもしれない、見てないから断言はできないけれど。
どう解決すればいいか僕にはわからないけど「亡き親から受け継いだポケモンの中に言うことを聞いてくれない子がいます」ということだから、多分言うことを聞いてくれるポケモンもいるんだよね。もう少しその「あなたを受け入れている子」とエルフーンを一緒にしてみるとなにかが変わるかもしれないと思う。
ただまあ、ジョーイさん含むプロに任せるよ。
Q ガラル地方はポケモンの入国規制がありますが、入国出来なかったモモナリさんのポケモン達は、モモナリさんが帰ってくるまでにどの様に過ごしていたのでしょうか?(40代男性)
A 箔が付いたよ。
これは色んな所からあった質問で、知っている人も知っていない人も割と興味があるみたいだったね。
ガラル入国についてはちょっと前のガラルリーグチャンピオンのダンデとのエキシビションのことなんだと思うんだけど、この時僕の手持ちで入国できなかったのはゴルダック、アーボック、ジバコイル、アーマルド、ユレイドル、ガブリアスだったと思う。
当時のガラルは独自の規制を引いていて、連れていけるポケモンと連れて変えられるポケモンに制限があった、今は一部解除されているけど僕は悪いことじゃないと思うよ。
一応ユキノオーは連れて行っても良かったんだけど、僕のパーティ構想から外れたから留守番だったね。まあ彼はシンオウで家族作ってるしあまり連れ出すのもなあ。
居残り組の中で有名になったのはゴルダックとガブリアスだね。
ゴルダックはちょうどオーノくんにガラル遠征の話をしたらそれならミクリに預けさせてくれというし、僕としてもミクリに面倒見てもらえるならこれ以上のことはないから甘えさせてもらった。そしたらコンテストのハイパーランク、しかも可愛さ部門に出場したというのだから爆笑したね。おかげさまで僕の手持ちでハイパーランクのリボンを持っている二匹目のポケモンとなった。
帰ってからは割と冷たい目で見られたりもしたんだけど贅沢な話だよね。だってオーノくんとミクリとその姪っ子のルチアにプロデュースされたんでしょ? 知り合いの雑誌記者にこの話したら目を丸くしていたよ。まあそうむくれず、たまには相手の土俵に行くのもいいじゃないか。
これはまだあまり公になっていないんだけど、ガブリアスは銀幕デビューしてましたね。来週辺りからカントーでも上映するカルネの新作に出てます。これは話すと長くなるから省略するけど、まあ監督さんがどうしてもプロのガブリアスを撮影に使用したいというこだわりがあったらしく、巡り巡って僕のガブリアスに話が来たということです。スケジュール的にちょうどよかったのでクシノに任せました、そろそろ独り立ちしてもらわないと困るものね。ただ、僕が寂しくないようにと送った写真でだいぶホームシックしてたらしいです。まだまだ手がかかる。
僕は関係者として試写会に呼ばれたんだけど、なかなかの女優っぷりでしたよ。
あとは主人公役の俳優さんは頑張ったね、僕のガブリアスはだいぶ本気で戦ってたけど、それなりに自然に見えるバトルをしていたよ。お楽しみに。
残りのポケモンは人には預けなかった。ジバコイルには家の警備をしてもらっていたし、アーボックはいつもどおり四番道路のアーボの統率。アーマルドとユレイドルはピクシーが不在になるお月見山に行ってもらった。タケシさんいわく二人ともうまく馴染んでいたようで安心しました。
Q 遂に『こうらのかせき』を採掘してから再生させる準備が整いました。そこで質問です。彼・彼女が生きていた時代・環境がまるっきり違うこの世界でどのようなことを気をつけてあげればよろしいでしょうか?かせきポケモンと暮らしている先輩としてご教示くださると嬉しいです。(30代男性)
A 時代が変わってもポケモンの心は変わらない。
前述の通り、ガラルはポケモンの入国を種類によって制限している。実はその原因の一つにはマニアによる化石復元が生態系に強い影響を与えてしまった地域があるらしく、その経験からの措置なのだという。
その点では、現在カントージョウトでは化石の復元に研究者の同意が必要だからそこは良いと思うね、そこらへんのところはトミノさんが詳しいだろうと思うんだけど、あの人今忙しくて中々会える時間作れないんだよね。
もちろん僕が化石を復元させるときにはきちんと許可をとったよ。それに、もう長いこと彼らと付き合っているから研究者ほどじゃないにしろこの質問に答えることのできる知識はあるだろうね。
質問の方は化石の発掘から復元の直前まで来ているということだから経済的な面やトレーナーとしての資質には特に疑問がないんだろうという前提を話を進めたい、結構許可は厳しいからね、今はどうか知らないけれど僕らの頃はバッジを六つ以上持っていないといけなかったんじゃないかなあ。
僕はアーマルドとユレイドルというかせきポケモンを手持ちに加えている。それでわかったことは、時代が違うからとか環境が違うからとか、そういうことじゃないんじゃないかなということだね。
かせきポケモンって本当に太古の時代からのお客さんだから、どうしても僕達は環境の変化がものすごく重要なことであるように考えてしまう。
ただ、よく考えてみれば環境が変わることって野生のポケモンをゲットしたときも同じなんだよね。例えばコダックやゴルダックなんかはそれまで水辺や水の中が主な生活圏であったものが、トレーナーと一緒になると急に地上中心の生活となる。僕は庭と水辺が一体化している家を買ったけど、全てのトレーナーがそうできるわけではないし、それに強烈な不満を覚えるコダックやゴルダックの話はあまり聞かない。
トレーナーの手持ちとなったポケモンの戸惑いに、化石と野生の違いは多分あまりないんじゃないかと思う。
昔の僕はそこのところを勘違いしてしまって、アーマルドが気難しそうだからとユレイドルを手持ちに加えた、でもアーマルドの気難しさは変わらなかった。ただの性格だったんだよね。
僕がそれに気づけたのはユレイドルが思いの外すぐにこの環境に適応したからかな、ユレイドルは好奇心が旺盛で、人間のマネをするのが好きなんだ、よく僕の真似をしてお辞儀をしたり、化石発掘を手伝ったりしてくれる。それで僕はかせきポケモンというもの偏見が無くなったところがある。
それにあんなに気むずかしかったアーマルドも、ガブリアスが生まれてからはすっかり性格が変わったようになってしまったし、彼らは普通のポケモンと変わらないよ。
質問の答えとしては「他のポケモンとそう違わない」ということだね、例えば復元したポケモンが何らかの問題を抱えたとしても「もともと化石だったから」という考えは最後までとっておいて、野生のポケモンをゲットしたときのように接してあげることが重要だと思う。
Q モモナリ選手はじめまして、私はリーグトレーナーを目指してジムバッジを集めています。現在バッジは六つです。私のエースは子供の頃から一緒にいたラッタなのですが、最近はポケモンとしての力不足を感じています。あとから手持ちにはいったゲンガーやギャラドスに頼る場面が多くなり、結果的にパーティに負担もかけているような現状です。しかし、私はこれまでラッタを信じ多くのバトルに勝利もしてきました。そのエースをパーティから外す勇気がありません。一人で解決しなければならない問題だとはわかっているのですが、一つでもいいのでアドバイスが欲しいです(10代女性)
A 君は立派、だけどポケモンを信じるという行為を勘違いしている。
深刻な質問だね。これは難しい質問だと思うし、もしリーグトレーナー志望のトレーナーがこれを見ていたら一緒に考えてみて欲しい。
僕が入った頃のリーグは、まだ『自分の相棒と天下を取る』ところが美徳であるという雰囲気がまだほんのりとは残っていた。ただ、シゲルやそれに続く情報化トレーナーたちがその様な美徳を完全に吹き飛ばしたのは間違いないし、いまリーグを支配しているのはその概念だね、これが良いか悪いかという話は今はおいておくよ、関係ないからね。
ありがたいことに、僕は子供の頃に出会ったポケモンたちと戦うことができている。ただ、これは僕の運がいい部分もあって、例えば将来的にゴルダックというポケモンが『立ってるだけで損』であるという立場にならない可能性はゼロではない。もしそうなったときに僕達はどうするべきなのか
カリンさんは「強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手、本当に強いトレーナーなら、好きなポケモンで勝てるように頑張るべき」という名言を残しているし、僕はこの言葉が大好きだ。ただ、この言葉は勝敗をポケモンのせいにしそうになった自分を戒める言葉であって、悩んでいるトレーナーに浴びせる言葉ではない。そういう点では、この言葉は呪いの言葉でもある。
信じられないことに、最近はリーグトレーナー志望の子供の手持ちを考えるアドバイザー的な仕事もあって、たまにジムに挑戦している子供の手持ちを見てびっくりすることもある。二つ目のバッジに挑戦するのに手持ちにフーディンがいたりするからね。
その点では、質問の方はものすごく立派だと思う、たとえその様なアドバイザーを雇っていなかったとしても、この情報化社会の中でラッタというポケモンがどれほどの地位にいるのかをシャットアウトすることなんて不可能だと思うし、もしかしたら直接その様な言葉を投げかけられたかもしれない。それでもバッジ六つまでラッタを外さなかったのだから、ひとまずその点は誇るべきだと思う。
ただ、質問文から一つ感じたのは、もしかするとこの人は『ポケモンを信じる』という観点を勘違いしているのかもしれないなと言うことだね。
これは僕が思っていることであって、実際にリーグトレーナーたちにアンケートを取ったわけじゃないけれど、恐らくトップトレーナー達の多くは『手持ちのポケモンを信じない』という過程を一度踏んでいると思うんだよね。
もっと細かく言うと『ポケモンを信じる』なんてことは、例えばジュニアクラスの大会で親からもらったガブリアスで圧勝しているような子供でもできることなんだよね。だけど、その様な子供が強いトレーナーかと言われればおそらく違うでしょ?
強いトレーナーであればあるほど、自分の手持ちのポケモンが『何ができないか(できそうにないか)』という部分をよく理解している。『自分のポケモンを信じない(疑う)』ことから最良の戦略であったり組み合わせを考え、いざバトルの時、もう運否天賦で勝敗が触れそうになったときに初めて、すがるように『ポケモンを信じる』という選択ができるのが強いトレーナーであるのだと僕は思うよ。ムシのいい話だけどね。
質問の子はラッタを信じているから手持ちから外せないと言っているけど、彼女を含むこの『群れ』のボスが実質的にラッタだということになっているね。別に悪いことではないと思うけれど、リーグトレーナーになるという気概があるのであれば自分自身が『群れ』のボスであるという自覚と覚悟が必要だね。トップトレーナーのほぼ全員は『群れ』のボスだよ。
『群れ』のボスとしてラッタという戦力が必要なのか必要でないのかを考えてみると良いと思う。ただ、すぐには難しいだろうからもう二つバッジを取るまでにボスになれるように頑張ってみると良いと思うね(コンプリート自体はラッタが手持ちにいてもできると思うしトップトレーナーになるのならできなければならないと思うよ)