41-魔境
今期Aリーグはこれ以上ないほどの混戦となっている。
クロセ君が初戦でシバタ君に敗北した事で、クロセ君の独走は難しいかと思ってはいたが、まさかここまでの混戦になるとは想像していなかった。
クロセ君とシバタ君の試合は衝撃の一言だった。そりゃリーグの肩書だけを見ればクロセ君はBリーグから昇格してすぐのペーペーで、シバタ君は四天王経験あり、Aリーグ三期の超一流である。最もクロセ君はシルフトーナメント決勝でチャンピオンを破って優勝したトレーナーなのだが。
シバタ君とゲンガーは開幕から勢いのある踏み込みでクロセ陣営に襲いかかり、そのまま押し潰すように完勝したのだ。あのクロセ君に何もさせず一方的に勝利したことはリーグトレーナーに大きな衝撃を与えた。シバタ君、とんでもない当たり年である。
シバタ君は勢いそのままに三連勝で暫定トップについている。クロセ君もその後は二連勝し食らいつくが、シバタ君と直接対決を終わらせていることが後に響きそうだ。
シバタ君の他に三戦三勝のトレーナーは居ない、キシ君やワタルさんも黒星を喫し、混沌としている。
ある新聞記事で『クロセは兎も角、昇格組のモモナリが意外と勝ち星を供給しないのが混戦の原因』と書いてあったが、正直僕自身もそう思う。
僕は現時点で二勝一敗、もう一つ二つ勝てばまあ降格は無くなりそうではあるが、そんな低いところで満足していてはいけない。
何と言っても僕の新戦力であるガブリアスがいい働きをしているのだ。僕は元々フェアリータイプや氷タイプのポケモンはあまり苦にしていなかったのだが、ガブリアスをパーティに組み込むことによってジバコイルの存在がより引き立ち、全体にいい影響を与えている。素質はあるとは思っていたが、ここまで僕のパーティにハマるとは思わなかった。
二戦目でオグラ君に勝てた時はとても嬉しかった。僕は結構敗北を根に持つタイプなのである。
しかし、オグラ君も敗北を気にせず二勝一敗。負けることを『仕方がないこと』と捉えることができるようになったトレーナーはドツボにはまらない。
あまり書く機会がなかったので、先ほど名前が出たジバコイルについて少し思い出を語りたい。
そのためにはまず、ハナダの子供達の行動パターンについて話す必要がる。
まずハナダの少年はニョロモやトサキント、クラブ、タッツー、ヤドンそしてコダックをゲットする。理由はハナダは湖の町であり、ハナダの子供達は物心ついた頃から湖で泳いで遊ぶ、彼等にとって浅瀬の水ポケモンは友人に等しい存在であるわけだ。
そしてハナダの子供達はそのポケモンを持ってハナダジムへ行く。子供達にとってバトルはとても魅力的であるからだ。
しかし、彼等がハナダジムリーダーカスミと戦える事は少ない、大抵ジムトレーナーにボコボコにされるからだ。
そして子供達は水タイプには電気タイプが相性が良いという知識を噛じり、無人発電所に向かう。
ここで二種類のトレーナーに別れる。野生の電気ポケモンに手持ちの水ポケモンをボコボコにされ、泣いて家に帰った理由を親に問い詰められ更に怒られる子と、僕だ。
僕は無人発電所で泣きわめきながら、執念で一匹のコイルを捕まえたのである。何をどうやったとかそういう理屈ではない、とにかく執念で捕まえたのである。だいぶボロボロになって家に帰ったのだが、あまり親に怒られた記憶はない。多分その頃から何を言っても無駄と思われていたのだろう。
子供の頃の僕は彼の体を磨いてその体に映る僕やゴルダックのひしゃげた顔を見るのが楽しくて楽しくて仕方がなかった。今でも暇を見つけてはやっている。恐らく全世界で最もピカピカで強いジバコイルだ。自慢である。