39-お菓子パーティの話
クシノがまた本出すらしい、節操ないなあいつ。
『簡単な木の実ならばほっといても簡単に増やすことができる』をテーマにした初心者向け木の実育成本『きのみそのまま』が相当評判が良かったらしく、次も木の実で攻めるらしい。
しかも今回はリーグトレーナーのシンちゃんと共同らしい、どうもクシノがお菓子作りにかなりディープにハマったらしく、自身の木の実コレクターとしての趣味も相まってこの一年シンちゃんと二人で相当色々やってたそうだ。
と、言うわけで彼等の本に載せるべきレシピの優先順位を決めるために僕とポケモン達は彼等のお菓子パーティに呼ばれる事になったのである。
とは言え僕も良いオッサンである、とても甘いもの甘いものの連続には耐えられない。酒と辛いもの持ってこいってなもんである。
なので僕は実験台としてハナダジムの若い衆を連れて行くことにした、ハナダジムのジムトレーナーといえばタマムシジムに次いで女性が多いことで有名である(タマムシジムは男禁止の華の園だが)日々鍛錬と水泳で疲れている少女とポケモンといえばこれはもうスイーツしか無い。「ほんと呆れるほど食うと思うけどそれでもいい?」と聞くと、どんと来いとのことだったので、本当に希望者全員を連れて行くことにした。まさかジムリーダーのカスミさんも一緒に来るとは思わなかった。そしてカスミさんがナツメさん呼ぶとも思わなかった。ナツメさんがエリカさんとアンズさん呼ぶとも思わなかった。その日にジムに行ったけどジムリーダー不在だった人がもしいたら本当にごめんなさい。
僕の想像を超える人数、そして面子になってしまったのだが、シン家は快く迎え入れてくれた。
今回はシンちゃんとクシノが書いたレシピをお菓子作りが趣味の人とズブの素人トレーナーがそれぞれつくる形式のようで、察しのいい読者の方はもうお気づきだろうが、僕はズブの素人枠でお菓子を作る羽目になったわけである。
ちなみにカスミさんとナツメさんもズブの素人枠でお菓子つくりました。エリカさんとアンズさんは普通にお菓子作れるそうです。感想としては思っていたよりかは簡単だけど、そりゃ簡単に美味しいものを作ることは出来んわなと言う程度には難しいという感じ。でもお菓子経験者の方はほんとポンポンつくるんだから凄いね。そこら辺は写真付きで本誌巻頭で特集を組まれているので興味のある方はぜひとも確認して欲しい、ただカスミさんはあの壊滅さが世間の目に触れるとまた婚期が遅れそうである。
僕が感心したのはラムとオボンのポフレ、この二つの木の実は栄養満点で、ポケモンがちょっと調子が悪いけど別に病気って程でもない時に食べさせるとたちまち回復したりするのだが、ポケモンによっては好き嫌いがあったりする、しかしこのポフレならどのポケモンも無理なく食べることができるだろう。レシピは覚えた。
味で言うならマゴの実のアイスクリームが美味しかった。トッピングを自由に選べるのだが、僕はザロクの細かい果肉をふりかけて食べるのが気に入った、小さい果肉が口の中でプチプチと弾け、甘辛い果汁が口の中にちょっとした刺激を与えてくれるのだ。ガブリアスはとことん甘いものが好きなので、凍らせたカイスの実の果肉をふりかけると「どこ食べても甘い!」と至福の時間と言わんばかりに喜んでいた。
今回の本はポケモンと人間がともに美味しくお菓子を食べる事をテーマにしているらしいので、甘い木の実だけではなく、辛い木の実や渋い木の実の美味しいお菓子もやっている。結構な人数とそのポケモン達でお邪魔したのだが、好みのお菓子をもらえないポケモンは居なかった。
「俺ももう若くないからなあ、色々やってみるわ」
シンちゃんの肩を抱きながら、クシノはそう言っていた。僕はお前今期のBリーグ大丈夫なのか、と一つ憎まれ口を叩いて木の実のミックスジュースを頂いた。