モモナリですから、ノーてんきに行きましょう。

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ノーてんきに行きましょう
23-僕の理屈
 ドラゴンポケモンの育成は非常に難しい。幼生の頃から気性の荒い種が多く、並のトレーナーでは手に余るからだ。
 また、成長が遅く寿命も長い。育てるならば一生、もしくは親子二代から三代程の覚悟はしておいたほうがいい。
 最近はドラゴンポケモンに手を出しているアマチュアの方が多いようだが、それが将来的に社会問題に発展しないか僕は不安である。
 そもそも最近のトレーナーは形から入りすぎだ。少しでも才能があればコラッタやらキャタピーやらでもある程度のところまでは行けるものだ。タケシさんのイシツブテやカスミさんのトサキントに涙したトレーナーがどれだけ居ることか。大体強力なポケモンを使っておいてジムバッジを取れない時点で察するべきである。
 才能が無いことを強いポケモンを使うことで誤魔化すことほど不条理極まりないことは無いと僕は思っている。全く非生産的だ、トレーナー自身も育てられたポケモンにも得はない。
 バトルの才能がないからといって何も恥ずかしいわけじゃない、むしろ半端に才能があってこういう業界に足を突っ込まなければならなくなった僕みたいな人間のほうが厄介である。
 そもそもポケモンを戦わせて勝ったほうに価値があると言う概念は僕達のようなそれ以外に価値が無い人間に当てはめられるべき概念であって、本来間違っている感覚であると僕は考えている。原始時代じゃあるまいし。繰り返すが、ポケモンバトルで勝てるかどうかなんて実社会ではなんてこと無いのである。
 僕は才能が無いと思ったトレーナーにはすっぱりその道を諦めるよう一貫して進めている。昔は言葉が足らずそれが傲慢に聞こえ批判されたこともあったが、こればっかりは譲れない。よくトレーナーのサクセスストーリーで『全く才能がないと言われていたが、本人の努力で』というフレーズが出てくることもあるが、ここで言われている『才能がない』と僕の言っている『才能がない』は全く違う。前者は点数で言うと二十点とか三十点あたりで、僕が言っているのはゼロ、ゼロである。
 
 さて、なぜ今日はこんなにも毒づいているかというと、右腕が痛いからである。
 なぜ右腕が痛いか、それは噛み付かれたからである。
 誰に噛み付かれたか、フカマルにである。
 まあ、実際幼生とは言えドラゴンである、本気の殺意で顎に力を込めれば僕の右腕くらいなら余裕で持っていけるだろうから、フカマルとしてはじゃれあいの甘咬みのつもりだったのだろう。
 これまで遊び相手はアーマルドやユレイドルに任せ、僕はあくまで親として接していたので、フカマルはアーマルドやユレイドルにやるように僕にやってしまったわけだ。
 この件に関してはフカマルに非は全く無い、親であるガブリアスのような強靭な肉体を持っていない僕が悪いのだ、アーマルドやユレイドルにやるのとは違った感触と、僕の叫び声、それと血でフカマルもことの重大さは理解したと思う。むしろこれが原因でフカマルの能力に支障が出るようなことにならないか心配である。甘咬みは好奇心の発散法でもあるから、そろそろ外で遊ばせるのもいいかもしれない。
 ちなみにこういう時には離してくれるまで待った方がいい、間違っても振り払おうなどと考えてはならない、遠心力でもっと酷いことになる。
 僕がフカマルに噛み付かれた時にはそれを見ていたアーマルドが大声でフカマルをびくつかせてくれたから話が早かった。

 血なまぐさい話はしたくないが、結構縫った。しかし、ドラゴンポケモンを育成している以上これも仕方のない事だ。
 アマチュアの皆さん、あなたはそれでもドラゴンポケモン使いますか? それとも右腕縫いますか?

来来坊(風) ( 2015/07/01(水) 22:00 )