1-それでいいのかポケモン協会
電話が鳴った。顔見知りのポケモン協会職員からだった。空いてる時に協会本部に来てくれとの事だった。僕は何かまずいことをしてしまったのかと思った、恥ずかしい話だが、いくつかの心当たりがあった。
気の合う友人トレーナーと飲み会った時に随分とゴキゲンだったような気もする。友人も僕も酔うと声が大きくなるタチだった。それだけなら大した騒ぎにはならないかもしれないが、ファンに人気のあるトレーナーについてかなり批判的な議論をしていたかもしれない。その日にはした記憶が無いのだが、僕も友人も酔うと気が大きくなるタチだから、はっきりと言っていないとは確信できないでいた。
罰金の覚悟はしていたので、それなりの現金を財布に入れて協会本部へと向かった。言われた額をその場で払おうと思っていた。
ところが協会本部に行ってみると、何の事はない、今度新しく創刊される雑誌に載せる文章を書いてくれとの事だった。僕は緊張から開放された反動で、特に考えもなくそれをOKしてしまった。なぜバトル色の無いポケモン総合情報誌に僕のようなバトルしか脳がないトレーナーの文章が載っているのか、これが理由である。
当然ながら僕が文章を雑誌に載せるのは初めてである。一体何を書けばいいのかと担当の人物に問うと「貴方達や貴方達から見たポケモンについてを書いてほしい」とのこと。
貴方達、と言うのは僕達ポケモンリーグトレーナーの事だろう。知らない人も多いだろうから、今回は僕達について書くことにする。
各地方にはその地方を代表するチャンピオントレーナーが存在する。現在のカントー・ジョウト地方チャンピオンはワタルである。
カントー・ジョウト地方ではチャンピオンの下に三つのリーグが存在する。年一回のチャンピオン挑戦権を競うAリーグ、Aリーグへの昇格を争うBリーグ、Bリーグへの昇格を争うCリーグだ。
チャンピオントレーナーとは別に四天王と呼ばれる四人のトレーナーが居るが、彼等は前年度のAリーグのトップ四である。チャンピオン挑戦時の勝ち抜き戦で目にする方も多いだろう。
十ヶ月をかけて行うAリーグの順列一位がその年の十二月にチャンピオンと戦うわけだが、実はそれ以外にもチャンピオンになる方法はある。単純な話で、四天王とチャンピオンを全員勝ち抜けばいいのだ。このシステムは話すと長くなるので又の機会とする。
ちなみに僕は現在Bリーグに所属している。僕を含め十二人のトレーナーが一年かけてAリーグへの昇格を争っている。僕は一時期Aリーグに所属していて、順列七位に居たことがある。どうだ、ってもんである。
AリーグとBリーグには降格が存在する。それによってAリーグは十人、Bリーグは十二人の定員を維持しているわけだ。Aリーグからは毎年二人が降格、Bリーグからは毎年三人が降格し、それぞれ同じ人数が下位リーグから昇格する。先ほど僕はAリーグで順列七位についたことがあると言ったが、実は降格圏ギリギリだったわけだ。
この雑誌はポケモンの育成や、グッズ、コンテストについての情報が主で、僕達のような生き方についてよくわからない人が多いだろう。そんな人達が僕達に興味を持つキッカケになっていただければ幸いだ。