第二話
「君面白いね? どっからきたの? 怒りっぽいってことは・・・北東地域から?」
そのネズミは俺の返事も聞かずに淡々と質問を投げかけてきた。
「北東・・・?」
「へ? 北東地域も知らないの?」
「・・・なんのことかさっぱり」
「あららー。じゃホントどこから来たのよ?」
「・・・それもさっぱり?」
「最後の「?」が気になるけど・・・」
「てかお前だれよ? しゃべるネズミなんて聞いたこと無いぞ?」
俺はようやく聞きたかった事を聞いた。
「ネズミって・・・そう言われるの初めてだ・・」
そいつは妙に肩を落として言った。
「あー・・・なんか・・気に障った・・か?」
「いや、ちょっと驚いただけ。そういう奴今時見ないから」
「そ・・そうなんだ」
気をとりなおしてそいつは言った
ピ「そういや自己紹介まだったね。僕はピカチ。っていってもこれ本名じゃないんだけどね。周りからそう呼ばれている」
「本名じゃない・・・?」
ピ「ま、まあそこはおいといて、っで君はなんていうの?」
「?」
ピ「な・ま・え」
「あ、そうか」
まだ名前言ってなかった。
「えー、と、俺は・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「その・・・おれは・・・オレワ・・・・・・・・」
ピ「・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・なん・・・だっけ?」
頭が少し歪んだ気がした。
「・・・・・それマジ? ・・マジで? ガチで?」
「マジで・・・それもガチで」
「・・・君今まで見た中で一番すごい奴だね」
目を疑いながらもピカチは答えた。
「ど、どうしよ」
「どうしよって・・僕にいわれても」
俺は頭を抱えてその場にうずくまる。
世間的にはこれを記憶喪失という。
絶望に追い込まれたニートのような気持ちになるあれだ(違う)。
「そうだ」
すると、ピカチはそこで手で相槌を打った。
「名前思いつかないんならさ、自分で考えればいいんじゃないの?」
「・・・自分で?」
「そ、自分で考えてさ、思いついたのを自分の名前にすればいいんだ!」
「・・・・・」
俺はそれよりなぜかハイテンションになっているネズミに目が行っていた。なぜに?
そんなことはどうでもいいとして、
「・・・えと、自分で考えるんだよね?」
「そ」
・・・・・・名前、ねえ。
どんなのがいいのだろうか。
俺は頭の中で構想を練ってみた。
ヒトカゲ・・・っていってたな。たぶん直感的に考えると「種族」なのかなあ。
・・・・人影。
いやいやいや、なんか存在感薄いような名前だ。
名前1号、ボツ。
・・・・日知御蔭。
・・・・なんて読むんだよ。
2号、ごみ箱へ。
・・・・「リザー「サセーンwww」
・・・・あれ?何言うのか忘れた。
「3号、脳内消去完了」
俺の脳内がそう命令を下した。
五分後―――――――
「なんか決まった?」
「・・・ヒトキ。俺はヒトキだ」
「うん、了解。よろしくヒトキ」
こうして俺は「ヒトキ」という名前になった。
「ところでなんでその名前にしたの?」
「・・・あえて言わない」
「えーーーケチーーー」
「・・・・・・・」
漢字で書くと「人気」という文字にもなることを俺は口に出さなかった。