task15 進
「…」
ギルド内のチーム・ルミエールの部屋で、エリスはノートを眺めつつ、途方に暮れていた。
そもそもの原因はディアナ達の部屋を出る直前、耳にしたキアロの名字。
それがエリスにひらめきを与えたのだった。
自分の部屋に取って返し、メモ用ノートを掴んで再度ディアナ達の部屋を訪れたのは流石に彼女達を驚かせたようだが、それでも『考古学者キアロ』について知っていることを話して欲しい旨を伝えると、快く引き受けてくれた。
そうして、彼女達の言葉を書き取って出来上がったのが、目の前にあるノートだという訳だが、
「私が処理できる情報量じゃないよ…」
彼女たちがおしゃべり好きだった故か、それともキアロが有名人だからなのか、ノートの記述は何ページにもわたっていた。
内容が内容なのでテナーの助けを借りるのは以ての外だ。だから文章を書くことが苦手なエリスが自力で、苦労して膨大な情報をまとめなければならなかったが、重要な箇所をかいつまんでいうとこういうことだ。
〇キアロ=マオシアンは考古学の中でも先史、つまりは『人間』の時代を専門としていた。
〇現在の考古学集団『ユニオン』の基礎を作っていたが、十年程前に行方不明になっている。皮肉にも、彼の失踪が考古学者保護団体『ユニオン』結成のきっかけとなってしまった訳だ。
〇その原因は遺跡調査中、不思議のダンジョンに迷い込んだからとされているが、諸説あり噂話の粋を出ない。
そして――エリスにとって最も重要だったのは彼の残された家族についての話だった。
〇事件の後にキアロの家族、とりわけその妻は公の場を嫌い、子供と共にひっそりと暮らしているらしい。
エリスの疑念が確信に変わるにはそれで十分だった。
無論、全てが偶然だということも可能だ。
――でも…テナーがもし、『考古学者キアロ』の家族だとしたら、いろんなことに辻褄が合うんだよね…
名乗るときはいつも名前だけだということ。
『家族』、『ユニオン』という言葉に異常に反応すること。
三天王のページだけが破れてること。
それが、テナーが自分の過去に関連する故に避けているとすれば。
――テナー…今、どこで何してんのかな…私に秘密にしてるってことは、やっぱり家族絡みのことなのかな…
しばらく藁ベットにうつ伏していたが、おもむろに頭をあげた。その顔は、悩んでいた割には明るい。
「うじうじしてるのは苦手なタイプだな。私って」
ない知恵を絞って考え事した直後である。そもそもこれ以上頭を使おうとは思っていなかった。それが悩むことであってもだ。
「外の空気吸ってこよ。考えるのはそれからだね」
鞄を持って行こうか一瞬迷って、結局何も持っていかないことにした。