嵐の海で 〜tenner side〜
『ピッシャーン!』
稲光が、景色を反転させる。
夕方から降り始めた雨は、激しさを増して降り続いていた。
『ピッシャーン!』
私はベッドのなかで、雷鳴と雨音に耐えていた。
鼓動がはやい。目を閉じ、耳を塞いでも聞こえる轟音は、恐怖をつのらせる。
でも、私は怯えるわけにはいかなかった。
「そんなざまで…」
勇気を奮い立たせるために声をだす。自嘲気味になってしまうのも気にせず、続けた。
「そんなざまで、探検隊になれるとでも思ってるの?」
少しづつ心が落ち着いてくる。今度は声に出さずに、胸の中でつぶやいた。
――そう。落ち着きなさい、テナー。
傍らに置いた鞄からそっと、文様の描かれた小さな石を取り出し胸にあてる。
――私は、負けない…父さんを超えるためにも。
雷鳴が、ひときわ大きく響いた。