プロローグ 
嵐の海で 〜tenner side〜
『ピッシャーン!』




稲光が、景色を反転させる。
夕方から降り始めた雨は、激しさを増して降り続いていた。




『ピッシャーン!』



私はベッドのなかで、雷鳴と雨音に耐えていた。
鼓動がはやい。目を閉じ、耳を塞いでも聞こえる轟音は、恐怖をつのらせる。
でも、私は怯えるわけにはいかなかった。



「そんなざまで…」



勇気を奮い立たせるために声をだす。自嘲気味になってしまうのも気にせず、続けた。



「そんなざまで、探検隊になれるとでも思ってるの?」



少しづつ心が落ち着いてくる。今度は声に出さずに、胸の中でつぶやいた。



――そう。落ち着きなさい、テナー。



傍らに置いた鞄からそっと、文様の描かれた小さな石を取り出し胸にあてる。




――私は、負けない…父さんを超えるためにも。




雷鳴が、ひときわ大きく響いた。

■筆者メッセージ
はじめまして。
神戸ルイと申します。
この小説は、某サイトで書いていたもののリメイクです。
お付き合いいただけると幸いです。


今回はパートナーのモノローグですが、普段は三人称にするつもりです。
神戸ルイ ( 2012/07/04(水) 23:31 )