Mind of Discovery
第4話 “凶弾”


 身体が熱い。心臓が今にも爆発してしまいそうだ。喉の奥から血の味が滲んで、だんだん苦しくなってくる。視界もぼやけて狭くなってきた。もう限界だ。そう思って立ち止まろうとする度に、背後から迫りくるリザードンの咆哮が、ライムの小さな身体を奮い立たせた。
 まるで背中を大きな手で叩かれたように、ライムは再び跳ね上がった。直後、その足を灼熱の業火が掠めていった。

「あっっぢぃー!!」

 目に涙を浮かべて悲鳴をあげる。が、すぐに引っ込んだ。業火が過ぎ去った跡は、文字どおり黒炭の焼け野原になっていた。緑豊かな木々は一瞬で蒸発し、深い森に風穴が空いている。
 サアッと顔から血の気が引いた。今までテレビで見たようなポケモンバトルとはまったく違う、弱肉強食の生存を賭けた世界。気を抜いた瞬間にあの世逝き。ライムの顔は、引きつっていた。
 やっべえ……オレ、今この状況が楽しいと思ってる。

「って、そんな呑気なこと考えてる場合かよ!!」

 飛んでは逃げ切れないと悟り、ライムはなりふり構わず地べたを走った。あのリザードンのせいだ。あのばかでかい翼が空気の流れを引っかき回すせいで、風に乗ることもできない。
 火傷を負って足は痛むが、もう気にならなくなっていた。むしろ最高だ。風よりも速く駆け抜けられる気がした。

「アドレナリンの数値が急上昇しています。高揚しているのですか?」
「逃げるのに必死なんだよ!!」速度を合わせて飛んでいるミュウがすっとぼけたことを言うので、ライムは思わず怒鳴った。「お前強いんだろ!? あいつをなんとかできないのか!?」
「あれほど巨大なリザードンを制圧するには、私のバッテリー容量は不足しています。一方、あなたは電気タイプで、リザードンは飛行タイプです。相性的に有利なあなたの力で、ぜひとも制圧していただきたいのですが」
「体格差! 体格差ぁー!!」

 ちょこまかと逃げ惑う二匹を追いかけるのにいい加減飽きてきたらしい、リザードンはどんどん歩幅を緩めていく。かわりに突風が吹いて木々が傾くほどに大量の空気を吸い始めた。
 瞬間、チャンスだと思った。ライムは足に急ブレーキをかけて、身を翻し、リザードンに集まっていく風に飛び乗った。
 さっきの放電は皮膚をかすっただけだが、口の中に直接ぶち込むことができれば、大ダメージを与えられるのでは。算段を実行に移すため、ライムは迷わず死の大顎へと飛び込んだ。

「じゅう、まん、ぼる、とォォー!!」

 黄色い頬から迸る青白い電流。轟く雷鳴、そして小さな身体から振り絞った渾身の電撃が、牙の奥、業火溢れる口の中まで貫いた。
 風が止まった。リザードンの動きも。ボン、と腹の奥で何かが爆発して、口から煙をあげたまま天を仰いでいる。
 興奮鳴り止まぬまま、ライムはストンと着地した。

「……やった? 倒した?」
「一時的なショックを与えたようです」
「倒したんだろ?」
「はい、そのように判断しています。この一頭については」
「よっしゃあー!!」

 歓喜が全身を駆け抜けていく。勝ったぞ、オレは勝った! こんな誰も来たことのない世界で、でっかい怪物リザードンに追い回されても、オレは勝ったんだ! いやっほう!
 ガッツポーズを何度も決めて、ライムは……石のように固まった。
 待てよ? 今なんか、イヴの奴、変なこと言わなかったか? この一頭については?
 さて、時間を巻き戻してみよう。イヴが始めにリザードンに気づいたとき、なんと言っていたか。「複数の生命体を検知しました」……複数?

「……複数って言った?」
「はい、そのように申し上げました」
「それって」

 何匹?
 と、聞く前に答えが続々と降ってきた。大樹をへし折り、地響きが鳴り渡る。気がつけば十二匹の黒いリザードンたちに囲まれていた。もれなく全員が揃って口に炎を溜めて、発射まで秒読み段階に入っていた。
 ああ、そうか。ライムは唖然としたまま、木漏れ日を見上げて悟りを開く。

「理不尽って、こういうことを言うんだな……」

 *

 鬱蒼と茂る森の奥へ、道なき道をかき分けて突き進む。頼りはその手に握ったセンサー端末のみ。針が示す先には、必ず希望が隠れているはずだ。これですべてのピースが揃う。そうなったら、私は……。
 ミオは不安と一緒に枝葉を払いのけて、ようやくお目当ての原っぱに辿りついた。センサーもひっきりなしに反応している。ここにあるのは間違いないが、それよりも目に留まったのは、黒くてやたらと大きなリザードンの姿だった。
 リザードンは手当たり次第に小さなポケモンを襲っては、火で炙り、丸呑みにして腹を膨らませる。ちょうどミオが来たときには、ぐったりとしたプラスルを口に放り込んで、満足げにぺろりと口周りを舐めていた。
 あちこちに黒い焦げ跡が残り、その周りには小さなポケモンが倒れている。どうやら狩りに遭遇してしまったらしい。リザードンは喉を低く鳴らしながら、のこのこと訪れたミオに振り返った。

「……どきなさい。一度しか言わないわよ」

 聞く耳持たず、というより言葉が通じないようだった。リザードンはでかい図体をミオに向けて、次の獲物を決めたようだ。鋭い爪を構えて、口からは炎が漏れた。
 リザードンが吠えて、空気が震えた。風が巻き起こり、ミオの髪を激しくなびかせた。それでもミオは、氷のように冷たい顔を微塵も崩さない。口元には余裕すら伺える。『ワイルドジャンパー』の方が、もっと鋭く吠えて威嚇できた。彼の放つ覇気は、こんなものではなかった!

「がるるるぁァアッ……」

 口腔から紅蓮の業火を噴いた、そのコンマ数秒後、まばゆい閃光が走った。腰から引き抜いた銃から一筋の光が伸びて、炎を、リザードンの脳天を貫いた。炎は晴れたが、頭に穴は空いていない。かわりに巨体がぐらりと揺れて、焦げた草原に崩れ落ちた。
 ささいなトラブルを無事に治めて、ミオは宙を見上げた。そこには一見して何もない。だがセンサー端末を視線の先に向けると、機械は明らかな異物を読み取っていた。
 あった。
 口角がどんどん歪んでいく。銃の頭を再び上げて、宙に狙いを定める。そして……低い地鳴りが響き渡った。足下が揺れて、思わず銃を下ろす。ミオは訝しげに辺りを見回して呟いた。

「……まったく、何をやっているの?」

 端末のボタンを押して、通信の有無を確かめる。相棒からの救難要請は届いていないところを見ると、まだ助けは要らないらしい。
 それならいいか。ミオは再び、宙に向かって銃を向けた。

 *

「起きて、ライム。もう朝だよー」

 その日はなぜか朝になっても目を開けることができなかった。まぶたが重いし、身体はだるいし、まだ頭が眠っている。疲労感がずしりと重しのようにのしかかっていた。
 あと五分だけ寝かせて。
 寝返りを打ちながら、甘ったるい声で「えもえも」と返した。

「起きてよー。日直なんだから、もう行かないと遅れちゃうよ」

 ああ、そうだ。今日はマドカが日直当番として、朝礼の準備をしないといけないんだった。それなら起きない訳にはいかないな。さあ起きるぞ、待ってろマドカ。もう起きるから。今にも起きるよ。
 ……おかしいな、身体が動かない。目が開かないんだ。何かがおかしい。顔が、頬が熱い。熱い! 熱い!!

「もー。起きないんなら、先行っちゃうね!」

 待ってくれ! ヤバいんだよオレ、ひょっとしたらまた……!
 マドカ、マドカ……助けて。

 *

「マドカ!」

 暗闇の底で、ライムは目を覚ました。
 ひどく頭が痛い上に、びっしょりと寝汗をかいて、全身がベタベタしていた。まったく気持ちが悪い。心臓はバクバクと早鐘のように鳴りっぱなしだが、息を整えると少しずつ落ち着いてきた。

「お目覚めですか?」

 ミュウが言った。おそらく彼だ。暗闇の奥から声が聞こえてきた。
 節々がズキズキと痛む身体を起こしながら、ライムは「なんとかな」と、掠れた声で返した。

「オレたち、どうなった? リザードンたちに囲まれたところまでは覚えているんだけど……ここはどこなんだ?」
「これまでの地形調査では観測されていなかった未知の空間です。リザードンたちの『火炎放射』による大爆発で、足下が崩れたのでしょう。ここは古代遺跡の跡地と思われます」
「ほんとに!?」

 ライムは頭を振るって意識を起こし、全身にうっすらと放電をまとった。いわば発光技『フラッシュ』もどきだ。淡く青白い光に照らされて、石造りの柱や壁画がぼんやりと見えてきた。
 それに、ミュウのことも。景色よりも、彼の惨状にライムは言葉を失った。

「おまえ……それ……」

 ホログラムの身体が壊れかかっていた。あちこちで映像が乱れて、バグが全身に広がっている。今にも弾けて消えてしまいそうだ。
 技術には詳しくないが、ポケモンで言うところの瀕死状態に違いない。ライムが震える声で「大丈夫か?」と尋ねると。

「先の衝撃によって、私のミラージュ・システム全体に損傷が生じました。自己修復機能によって順次システムを復旧させていますが、イメージ・ジェネレーターの優先度は低いため、外観上の問題を後回しにしています」
「つまり、大丈夫なんだな?」
「はい」

 心配させるなよ。
 ライムは安堵のため息を吐いて、立ち上がった。ミュウはしばらく動けなさそうだったので、隣りに座って話を続けようと思った。
 そんな彼に、ミュウは(おそらく)不思議そうな顔をして。

「自己修復に付き添いは必要ありません。それよりも遺跡の調査をすべきでは? これは地球連合も未探査の領域、あなたが望んだ冒険の成果です」
「オレが調べたって何も分かんねえよ。それに遺跡ってさ、罠とか置いてあるかもしれないだろ」
「その可能性は否めません、しかし……わざわざ隣りに座る必要がありますか?」

 ぼふ、とライムの頭が爆発した。
 隣りに座った理由だって? そんなん言うか、普通。分かれよ、そこは!
 そっぽを向いた彼の仕草から、ようやく読み取ったのだろう。ミュウは「なるほど」と妙に明るい声で言った。

「私に友情を感じているのですね」
「そっ……そんなんじゃねーから!」
「違うのですか?」

 あからさまに落胆されると、今度は罪悪感が胸を刺した。

「違う、くは、ないけど……」
「それでは友情を?」
「いや……その……」
「感じていない?」
「でもなくて……」
「感じている?」
「う……うるせ〜〜〜!!」

 目をぐるぐるさせてライムは立ち上がった。この野郎め、一発放電を浴びせてやる!
 バチバチと頬が光って、まとった放電がさらに輝きを増していく。電流の膜が風船みたいに膨らんで、それはついに見渡す限りの遺跡をも包み込むほど大きくなった。
 明らかに通常のエモンガが一度に発揮できる放電の量を超えている。しかも未だに際限がない。外見を治したミュウは、薄いバリアーをまといながら尋ねた。

「ライム? これは少々やり過ぎでは?」

 どくん。
 心臓が一度、太鼓のように大きく鳴った。手足が一気に寒くなって、足下から崩れ落ちるような錯覚に襲われる。
 違う。あれは夢だ。ただの夢だったはずなんだ。ライムは仰向けに倒れて、瓦礫の天井を見上げた。

「……ライム?」

 力が溢れてくる。その奔流を止められない。まるでバケツの底に穴が空いているかのようだ。息が荒くなるにつれて、放電はますます輝きを強めていった。
 そして、いよいよ限界が訪れた。
 喉が張り裂けそうなほどの悲鳴をあげて、ライムの小さな身体に光の亀裂が走り、そこから電気が一気に流れだした。荒れ狂う電気の竜が、手当たり次第に柱や壁を抉っていく。コントロールを失った攻撃はミュウすらも塵に変えてしまおうと襲いかかってきたが、強力なバリアーがそれを弾き飛ばした。
 嵐は一瞬で過ぎ去った。だが、静寂はすぐに破られた。支えを失った遺跡が崩落を始めたのだ。
 ミュウは倒れたライムに寄り添って、叫んだ。

「ノーザンライツに通信、二名を緊急転送!」






 医療ベッドに横たわるライムは、ひどく息を乱していた。熱っぽい顔をして意識はなく、頬と胸の辺りには青白い亀裂が走っている。時折、頬の亀裂から放電しては、頭を固定する医療器具に吸収されていく。ミュウは何もできないかわりに、ライムの小さな手を握っていた。
 そこへミオが戻ってきた。

「何が起きたの?」
「ライムが異常な放電現象を起こして倒れました。医療スキャンで調べたところ、全身の分子結合に異常な変動が生じています」

 報告を受けながら、ミオはタブレットを受け取って医療カルテに目を通した。読み進めるにつれて、その表情は徐々に険しくなっていく。ミュウは補足をつけた。

「地球連合の医療用データベースを検索していますが、このような症例は報告されていません」
「それは記録に残っていないからよ」

 ミオは深いため息とともに、タブレットを医療ベッドに放り投げた。

「コンピュータ、地球連合の機密データベースにアクセス。機密ファイル、A−1937を開示せよ。承認コード、ミオ・デルタ・セブン」
『承認しました』船のAIが答える。

 すると、部屋いっぱいに無数の立体映像が浮かび上がってきた。まるでプラネタリウムのようだが、そのひとつひとつに、知れば闇から闇へと葬られるほどの危険な秘密が眠っている。
 情報の星々からミュウがひとつ両手で掴むと、また別のホログラムが現れた。人間だ。少し年老いた男性のようだ。
 首を傾げるミュウに、ミオは機械的な口調で語った。

「彼の名前はダモス。既に死亡。遠い並行世界の古代地球から、この時代に偶然タイムトラベルしてきたの」
「それは初耳です」
「彼はこれまで観測する限り、最も遠くの次元と時間を移動してきた人物よ。それが彼を死に至らしめた病の正体だった」
「と言いますと?」
「分子とは、それが作られた時間と次元でこそ機能するの。本来いるべき場所を離れたとき、すべての分子が時間を超えようともがく、次元の境界線を超えようともがく。時間と次元が遠ければ遠いほど、病はより深刻になるわ。しかも……」

 曇った視線で、ライムを見やる。
 うめき声を漏らしながら、耐えがたい苦痛に身悶えしていた。意識がなくてこうなら、起きたときの苦しみは想像を絶するだろう。ミオはすぐに視線を切った。

「彼の場合は、持病が症状の悪化に拍車をかけている。体内の制御器官が電気の統制力を失って、あちこちから漏れているわ。自分で自分を傷つけているのよ。このままでは数日もたないでしょうね」

 告げられて、ミュウは黙り込んでいた。というより、表面的に止まっているように見えた。フリーズしたのだろうか。いや、彼に限ってそんなことは。
 ミオが顔を伺っていると、ミュウが突然動き出した。顔を傾け、彼女に向いて。

「……あなたなら助けられる」
「はい?」

 はじめは何を言っているのか分からなかった。
 だが、徐々にミオの顔色がみるみる怒りに染まっていく。激高してミュウを突き飛ばし、唾を飛ばして言い放った。

「ダメよ!! それだけは絶対にダメ、あれは皆を救うために使うの! こんな見知らぬポケモンのためじゃない!」
「しかしライムを救う方法はそれしかありません……ミオ船長!」

 言い終える前に、ミオは医療室を出ていった。立ち去る背中に叫んでも、彼女は戻ってこなかった。

 *

 燃え上がった炎を鎮めるために、ミオはずかずかと通路を突き進みながら壁に拳を打ちつけた。何度も、何度も。それでも湧き上がる怒りは収まらず、ついにはその足を拘束室へと向かわせた。
 ここまで来て計画を変えろと?
 裏切られた気分だ、腹が立つ。だけど前向きに捉えよう。今の私ならトサカ兄弟をやれそうだ。
 バリアーに閉じ込められたストリンダーの兄弟は、それまで「お前のせいだぞ!」「兄貴のせいだ!」と諍いを起こしていたが、ミオが来るなり、黄色いタテガミの兄はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。

「これはこれは、恐れ知らずの船長さんか。ちょうどよかった。取引をしようじゃないか」
「取引?」ミオは恐ろしく冷たい鉄面皮で答えた。
「そうだ。貨物を独り占めするのはやめようぜ。どうせアレはお前ひとりじゃ使えない。地球連合の手を借りれば分からんが、素直にお願いできる立場じゃないだろ? なにせお前は、今や立派な犯罪者だ」
「犯罪者同士、仲良くしようってお誘いかしら」
「困っている者同士、と言ってほしいな」

 ミオは目を鋭く細めて続けた。

「シンジケートが困っているとは知らなかった」
「ライアンも時間戦争の犠牲者なのさ。あの方は戦争で多くを失った、それを取り戻したがっている。たとえ何を犠牲にしようともな」
「船の切符はたったの一枚しかない。あとはそれを誰が使うか、そうでしょ? 切符は私が持っている」
「だが船を持っているのはライアンだ。このまま不毛な平行線を続けるか、それともライアンから船を奪うってか? このちっぽけな貨物船で? いくらあんたが無謀でも……」

 せせら笑いながら話していたストリンダー兄が、徐々に笑みを失っていく。まさか、そんなことできるはずがない。

「あんたらがせっせと犯罪に手を染めている間に、私もずうっと計画を温めてきたのよ。実行のために足りないピースはあとひとつ、それが何だか分かる?」
「あ、あわわわ……」

 元々青い顔がさらに青ざめて、ストリンダー兄はわなわなと震えた。何も知らぬは弟の方だ。のんきに「兄貴?」と首を傾げている。ミオは銃を握りしめて唱えた。

「コンピュータ、拘束室のバリアーを解除」

 二匹を閉じ込めていた……もとい、守っていたバリアーが消えて、女の足が踏み込んでくる。一歩近づくたびにストリンダー兄は震え、哀れっぽい声で抵抗した。

「ち、近づくんじゃねえ! 来るな! やめろ!」
「兄貴、どうしたんだよ!?」弟は兄を揺さぶって言った。「今ならあいつを襲えるチャンスなんだよ、サクッとやって船を乗っ取っちまおうよ!」
「頼む、やめろ、弟だ、やるなら弟をやれ!」

 銃にエネルギーが充填され、甲高い音が鳴り響く。必要なのはシンジケートの構成員の死体。ミラージュ・システムが完璧に生物を模倣して成り代わるためには、その死体をコンピュータに取り込まなければならない。かつて、二百年前の地球でゼロがギラティナの力を手に入れようとしたときのように。
 どっちでもいいんだ。あとは引き金をひくだけでいい。さあやれ、ミオ。これで計画に必要なものが全部揃うんだ。皆を失ったあの日、覚悟しただろ。必ずやり遂げてみせると。たとえ何を犠牲にしようとも。それが、自分の信念だとしても。
 なのに何故……。

「どうせお前は腐っても地球連合艦隊の士官だ! 撃てる訳がねえ! そうだろ!?」

 ミオはその一言で目を見開いた。
 森に囲まれたノーザンライツの中から、凶悪な閃光が漏れた。

きとら ( 2021/03/27(土) 21:02 )