第11話 山での出来事
透き通った鳥ポケモンのさえずりが聞こえる。もう朝なのかな?と思いアクアはゆっくりと目を開いて大きなあくびをしながらテントから出ていくと、雲一つ無い澄み切った水色の空が目についた。とても清々しい朝だ。アクアは今日は雨ばっかり多分降らないなと予測し、まだいびきをかいてるマロンを起こしに行くのだった。
「わあ〜! 綺麗だな〜」
朝ごはんを食べ終わり、早速山に入っていった2人は愉快におしゃべりをしていた。
「エクトシティはどんな店があるのかな?」
「うーん、どうだろうね。美味しいお店があったらいいなぁ〜」
……カサッ
「そうだね。僕は旅に役立つ道具が欲しいな」
「アクア、りつ」
グルルルルル……
突然の唸り声にアクア達は沈黙した。しかしその唸り声の主は、草を踏みつけてこちらへ近づいてくる。アクア達は恐怖のあまり、その場から動けない。アクア達がそうしているうちに、どんどん唸り声の主は近づいてくる。
「逃げて! マロン! ここは僕がおとりになる!」
アクアは意を決して叫んだ。アクアはマロンだけ逃がして自分はおとりになるつもりだ。しかしそんなことはさせない。とばかりにマロンは声を張り上げた。
「そんなことダメ! アクアがおとりになるなんて嫌だ!」
「でも! 早く逃げて!」
アクアは早く逃げてとマロンを急かす。しかし、マロンはダメだという。
「じゃあ、2人で力を合わせて正々堂々戦おう。」
それじゃあ、とアクアは提案をする。
「うん。あいつと戦おう。」
マロンも賛成する。どんなに強い敵でも、2人なら勝てる!そう2人は信じた。そして敵が草むらの暗闇から顔を出した。そのポケモンは2人の2倍はあり、鋭い目つきと爪、戦いで付けられた傷がこのポケモンの強さを物語っていた。
「リングマ……」
そう、そのポケモンは大きな熊のポケモン、リングマだったのだ。リングマは2人を見るなり、爪を振り下ろしてきた。2人はこれを咄嗟に避け、アクアは体当たりを繰り出した。全力で突撃したつもりだが、リングマにはそれほどダメージは入っていないようだ。やはり、このリングマは経験とレベルが違うのだろう。
「かみつく!」
マロンは得意技のかみつくで攻撃しようとしたが、それと同時にリングマがきりさくを繰り出した。きりさくはマロンに半減だが、かなりのダメージを負った。
「まずい……これは太刀打ちできない」
アクアは呟いた。
「うん。正面から戦っていたら絶対負けるわ。」
マロンもリングマの強さに堪えたのかつらそうに答えた。
「逃げよう!」
「うん!」
そうして、アクアとマロンはリングマから逃げ出すことにした。2人は同じ方向に逃げていく。しかし、2人よりリングマの方が明らかに速いので分かれて逃げようとアクアは目で伝えた。マロンもうなずく。そしてアクアは左、マロンは右に曲がり全速力で走った。
リングマは一瞬戸惑ったがアクアを追いかけることにした。アクアは見事にリングマの攻撃を避け続けたが、体力が限界になってきて、そのまま地面に倒れこんだ。そこにリングマの鋭い爪が振り落とされ……
……ズバッ、ジャクッ……ドスン
なかった。その代わり、後ろで何かが切り裂かれて、それがバタンと倒れる音がした。アクアがおそるおそる後ろを見ると、気絶しているリングマと、あるポケモンが目についた。
マロンはアクアと別れたあと、敵から逃げることだけを考えて全速力で走った。どれぐらい走っただろうか。マロンは後ろに誰もいないことを確認して休んだ。マロンが逃げるとき後ろから何かが追ってくる感じは無かったので、たぶんリングマはアクアを追いかけたのだろう。アクアは大丈夫かな。という気持ちがマロンの頭の中を渦巻いた。しかし、危機が迫っているはマロンの方だった。