14話 人間学研究者・セイラ
早朝。
結局、アカネは自室に帰って来た形跡がなかった。カイトは朝食の前に自室を抜け出し、そしてアカネが昨日閉じこもってしまった個室へと向かう。一度船の内部から出ると、朝の涼し気でさっぱりとした潮風に体を撫でられた。塩の香り、そして澄み渡るような空に、サンサンと船上を照らす太陽の光を感じる。朝のみはゲイルズが多忙であり二匹についていられないので、厳しい食事マナーチェックは免除される。どうせなら、二匹で海を眺めながら食事をしたいなどと叶いそうもない願いを持ちながら、カイトは個室をノックした。
「アカネ、朝だよ。開けてもいいかな?」
コンコン、と加えて二回ノックする。個室から何かが動く気配を感じ、やがて内側からギィと扉が開いた。そこには、アカネが目をこすりながらドアノブをつかんで開く姿が伺える。
朝が弱いのも加え、昨日の一件の所為かかなりやつれたようすのアカネが姿を現した。心無しか黄色い体毛は少々乱れており、目は少し充血している。ギルドで叩き起こされていた時ほど機嫌はわるくなさそうだが、普通に体調が悪そうな様子だった。
「おはよう、昨日きちんと寝た?」
「…………三時間くらいは……」
声も多少擦れているようである。そっとカイトが個室の中を覗き込むと、机のうえに何やら硝子の瓶、そしてその中に琥珀色の液体と、黄色い果実が入っていた。まさか、昨日一晩中練習していたのだろうか。それにしては、声の擦れがそれほどでもない。
「アカネ、あれは?」
「……あぁ……なんか、この船に一緒に乗ってるポケモンが持ってきたのよ。
喉に良いから、って。オボンの実のハニーシロップ漬け……少し飲んだら、かなり喉の痛みが取れて……なんとか喋れてる」
フラフラとした様子で個室の中に視線を向ける。はっきり言って倒れてしまいそうだった。ただでさえ最近は疲れやすいというのに、カイトはそれを指摘することが出来ず、やんわりともう少し眠るように伝えた。本当は一緒に食事をとりたかったが、そうもいかないらしい。
「食事は後で食べるから、それじゃ……」
と、一言いうと、彼女はぱたんと扉を閉めた。おそらく眠る気はないらしい。ゆっくりとした音だが、ゴソゴソとまた部屋の中で何かしているようだ。
とはいえ、こればかりはカイトは出来ることがない。アカネは一匹で練習したいと思っているだろうし、カイトも自分がアカネを助けられるほど歌に自信がある訳でもない。せっかくの海上のバカンスを満喫できると思っていたのに、想像がかなり斜め上を行って違った。
アルストロメイア行きを朝礼で発表される以前から、カイトはパトラスからこの提案を受けていたのだ。旅行がてら行ってこい、ゆっくり休めると……言われたはずなのだが。アカネの体調のこともあり、その提案はカイト自身も悪くないと思っていた。パトラスは王宮でアカネがやらされることを知っていたのか知らなかったのか……おそらく、知らなかったものだと思いたい。
朝一緒に過ごす相手もおらず、仕方がなく慣れない読書でもしながら食事をとるか、と再び船内へ戻ろうとした時だった。
「一緒にお食事でもいかがです?」
背後から……否、もっと更に上から、女性の声が響いてきた。カイトは船内への階段を覆うように設置されている屋根の上を見上げると、そこにはカイトと同じくらいの大きさをしたポケモンがにっこりと微笑んで彼の方を見つめていた。
紅色で吊った瞳に、両こめかみや頭の中心部から生えた黒いツノのような房のようなもの。頭のツノの付け根には桃色の綺麗なアクセサリーを付けており、首からも何か小さなキラキラと光る石のようなものを付けているようだった。
「……えっと、いいけど君は?」
「わたくしは海の環境や天候を予測し、この船の航海を手伝っておりますの。わたくし、貴方にずっと前からお伺いしたいことがありましたの。昇ってきてくださる?」
カイトはやや不思議そうな顔で彼女を見ながらも、屋根によじ登ると彼女の全体的な姿を初めて目にした。
雌のクチート。ちょこんと屋根の上に座って海を眺めている彼女は、カイトが昇ってくると非常に嬉しそうな表情を浮かべながら手招きをした。屋根の上には、ティーセットやパンが並んでいる。……不思議な光景だ。
「探検隊クロッカスの、カイト様ですわね」
「うん。……キミは?名前はなんていうんだい?」
「わたくしはセイラ。セイラ・コンスタンスと申しますわ。見ての通り、種族はクチート。一応、考古学者……ですが、基本的になんでもできますわ」
にこりと微笑み、クチートことセイラは紅茶を注ぎ始める。一体そのお茶はどこから……と思いながらも、屋根の上は海の眺めも良く、カイトはその場に座り込み、暫くセイラと会話をしてみることにした。
アルストロメリアのポケモンならば、交流関係を広めておけばアカネも着いた時に少し楽になるかもしれない。カイトはそう思い、セイラに尋ねる。
「なんでもっていうと?」
「ええ。例えば、今わたくしがやっているような環境の変化、天候についての予測。お薬の知識も少々ありますので、薬師としても活動していますわ。バトルやダンジョンに潜ることはあまり好きではありませんが、仕事でしたらやります。楽器の調律など、それなりに幅広くやっておりますの」
そう言いながら、セイラは紅茶の中に琥珀色の液体を入れた。アカネの部屋にあったものと同じものである。ほのかに香るオボンの果汁の香り。おそらく、アカネに差し入れをしたのはセイラだろう。
「アカネにハニーシロップ漬け持って行ってくれたみたいだね。ありがとう」
セイラに手渡されたカップの中のお茶をスプーンで書き回しながら、カイトは言った。
「いえ。わたくしの今回のお仕事は、船の上で皆さまをサポートすることですの。それくらい当然ですわ」
「本当にありがとう。……考古学者、って言ってたよね。どんなことをするんだい?」
「……一応、家系で考古学者の者が多かったので、わたくしもそうなってはおりますが……わたくし、古代の人間学を研究しておりますの」
かちゃん、とスプーンがカップの底に付く。カイトは少々驚いたような顔をしてセイラを見ると、『人間学?』と聞き返す様にして言葉を返した。
「ええ。御伽噺上に現れる人間という存在。彼らは一体如何なるものなのか、どのような存在なのか。そもそも存在したのか、存在するとして、その根拠はいかなるものか…………そのようなことを、研究しておりますの」
にこり、と笑顔を浮かべながら、セイラは紅茶を啜った。甘ったるいお茶の香りが潮の香りと混ざり合い、複雑な香りがする。
「人間について、キミはどんなことを知ってるの?」
カイトは少し食い気味になりながらも、率直な感情を疑問形にしてセイラにぶつけた。焦らないで、というように再びセイラは微笑みを浮かべると、カチャリとカップを置く。
「……アカネさまの為ですの?」
「…………あ、いや」
「いいんですわ。人間を調べているなんて、珍しがられるのも当たり前。それらを知りたいと感じているなら、尚更聞きたくなるのも無理はありません。
……カイトさまはご存知かわかりませんが、『王都・アルストロメリア』とは……人間という存在についての発祥の地でもありますの」
驚いたような顔。カイトのそんな表情の変化を、まるで楽しむかのようにセイラは目を細めた。
「人間は御伽噺上の存在であると主張するポケモンが大半を占めてはいますが、わたくしは間違いなく存在したと確信しているのです。
彼らは認めたがりませんが、人間はかつて、ポケモンを支配する存在でした。勿論、対等に暮らそうとしていたものもいましたが、人間にとってポケモンは家畜であり、そして時にはペット、戦争の道具……そのように関係の波は移り変わる。そんな不確かなものでしたわ。
カイトさま。カイトさまは、どうして今わたくしたちが言葉をしゃべることが出来るのか、ご存知ですか」
「…………いや。進化の過程、としか知らないよ」
「ポケモンはかつて、鳴き声や種族それぞれのコミュニケーション方法、時には電波を使いながら会話……いう名の意思の疎通を行っていましたわ。それは、今わたくしたちがこうやって交わしているような、細かなことまでは伝えきれない様な……そんな曖昧なものでしたの。
一方、人間は違いました。人間として世界に誕生し、そして早い段階から言葉を取得し、細かな会話で意思を通じ合わせることで、それはそれは巨大な文明や技術を作りだしましたの。
ポケモンは力を持っていましたが、そんな風に考えを伝えあう術を持ちませんでした。それ以前に、知能も今より低かったと言います。結果、人間の考えも読み切れず、人とポケモンの上下関係が生まれたのです。
しかし、何時の時代からかポケモンも言葉を獲得した。その原因は、人間がこの世界から消えたからだと、わたくしは考えております」
人間が消えた……消えた、という表現を聞き、カイトの頭の片隅がずきりと痛む。アカネが一度、消滅を迎えた時のことを少しだけ思い出してしまった。良い記憶のない言葉だ。
「どんな理由かは分かりませんが……人間は、唐突に姿を消した。人間が生きていたという殆どの証拠と共に、影も形も無く消えてしまった。
ポケモン達は支配から解放されました。が、ポケモン達は人間を知ってしまった。そしてそれらが完全に姿を消した時、ポケモン達は人間に成り代わったのではないかと思っています。
人間たちが使っていたものと同じように言葉を獲得し、建物をつくる技術や大きなものを統治する力を手に入れた。それが結果的に、今のわたくしたちになったのではないか、と……わたくしの今までの研究で立てた仮説ですが」
カイトは紅茶に口をつけた。彼女は甘めが好みなのだろうが、カイトのお茶からはそんなに甘ったるい匂いはしない。いたって普通の、少しオボンとハニーシロップの香りがするお茶である。普通に美味しいので、再びカップの縁を口に運んだ。海の風景を見ながら紅茶を飲む。なかなか贅沢な朝である。
「研究って」
「先程も申し上げました通り、アルストロメリアは人間という存在が御伽噺としてしられるようになった……その発祥の地ですの。
他の大陸よりも多くの痕跡が残っております。それらの痕跡をかき集め分析する……。といっても、もう調べつくしてしまったようなものですわ。なんせ、本当に少ないんですの」
そう言いながら、どこか遠い所を見る様な目をして海の方へ視線を向けた。と言っても、見えるのは地平線とポツポツと本当に小さく海の上に浮かんでいる島々である。はぁ、と小さくため息をつくと、セイラはその小さな島々を指さしながら、紅色の瞳をカイトへ向ける。
「アルストロメリアは入国に関しても厳しいところですが、それは出国もかわりませんの。有名な場所ではありますが、閉鎖されています。運が良かったですわ。こんな風に船に乗ってクロッカスの二匹を迎えに行けるなんて。わたくし、すごく興味を持っていましたの」
「興味?アカネに?」
人間への興味が強い彼女なら、アカネに興味をもっても不思議ではない。そう思いながら、カイトは問いかける。しかし、彼女は否定も肯定もせずお茶を啜った。
「アカネさまにも確かに興味がありますが、それならあなたも同じですのよ」
「……ん?僕?何でだい?」
「だって、あなたも半分は人間でしょう?」
かちゃん、と。危うくカイトは持っているカップを落としそうになる。しかし、咄嗟に両手でカップを押さえると、小さく小首をかしげてとぼけるかのように笑った。
両親のことも知っていたのか……と。しかし、考えてみればあたりまえである。カイトの母であるサラは、父のガリュウと出会うまでは人間という存在だった……と言われている。とある事件によってそれは世間に広まったが、そのことについても知っていたのか。
「あぁ……。そう言う捉え方もできる、か。……でも、半分だけっていうなら、やっぱりアカネの方が興味をそそられそうだけど」
「わたくし、夢がありますの」
「夢?」
「ええ、小さい頃から考えていたことですの」
くすり、と怪しげに笑うと、からかうようにクイっと空になったカップを持ち上げ、カイトの鼻先につきつけるようにして腕を押し出す。
「人間と、結婚することですわ」
* * *
二日目は、不思議なクチートと会話をして過ごしたような記憶しかなかった。カイトは定期的にアカネの様子を見に行きながらも、基本的には船上のテラスのような場所に座って本を読んでいた。三日の試練を課されたアカネとは違い、カイトはこの三日間を風邪をひかないように過ごす、くらいしかすることがない。つまりすることが無い。
カイトにとってはアカネと一緒に船上で海を見ながら過ごす、というだけで一日を有意義に過ごしたのではないか、と思える。しかし、当のアカネは個室に閉じこもって練習をして出てこない。碌に食事もとっていないので心配である。
個室の壁は厚くなっており、アカネの声はあまり聞こえない。ドアに耳を付けて盗み聞くのもわるいと思ったので、定期的にノックをしてアカネの顔を確認するようにしていた。結局、朝食を食べると言いながらも昼になっても出てこないので、カイトがパンの籠を持って個室のドアを叩く。
アカネに軽く謝られたが、気にしない。アカネの瞳にもう怒りは灯っていなかったが、意地でもここを離れまいとする気迫を感じた。
アカネと会うのは一日に二回、昼食と夕食の時だけだった。さすがにゲイルズが呼びに来るとアカネも出てきて、厳しいマナーチェックを受けながら食事をとる。アカネは大分やつれており心配になったが、意識ははっきりしているようで彼の言うことに従って食事を続けていた。既に昨日言われたことをしっかりと覚えているようで、アカネに対する注意は疲労による姿勢の悪さ以外は特に指摘されていない。一方のカイトは、まだまだ少し時間がかかりそうであった。
「カイト様、内に秘めている粗暴さが目に見えて分かります。もっと手つきを柔らかく」
「粗暴さって」
元不良だったことは否定できないのでその言葉を復唱するだけに終わるが、アカネは違った。さっさと食べ終えると、昨日習ったばかりの作法で食事の後始末を終えてゆっくりと部屋を出ていく。カイトの邪魔をしまいと思ったのか、アカネはちらりと彼を見るだけで扉の向こうへと消えていった。ゲイルズは止めない。おそらく、先ほどアカネが使った作法が合っていたのだろう。食べ終わったあと自分もやらなければ、とアカネの行動を頭の中で繰り返した。
「カイト様、まずは目の前のお食事に集中なさってはいかがか」
「…………はーい……」
* * *
四日目。
二日目も特にこれと言ってカイトとアカネの会話は無かった。その代わり、カイトに関してはセイラが仕事の合間に来て少し話し相手になっていた。セイラは様々な事をできる分実に多量の仕事をこなさなければならない。そんな彼女に申し訳なく思い、カイトはセイラを何度も仕事場へ返そうとしたが、『息抜きは必要ですわ』などといって、セイラはティーカップに紅茶を注いでいた。
今日も今日とてセイラが淹れた紅茶をいただきながらクッキーなどをつまんでみるが、ふとした拍子に本心が口から零れ出る。
「アカネとのんびりできると思ったんだけどな」
もう船の旅も残すところ僅かである。今は朝だが、時間がたてば夜になる。船の進みが順調なため、セイラによれば今日の夜には『アルストロメリア』のある『花の大陸』に到着するとのこと。普段からとにかくトレジャータウンやダンジョンの中を動き回っているクロッカスの二匹にとって、二匹揃っていればそこまで何も思うところはないものの、特にカイト一匹となると非常に心細く少し気持ちに来るものがあった。
セイラは少し寂し気に目を細めると、『わたくしではやはり役不足ですわね』と言って、遠い海を眺めながら紅茶を飲んだ。別にセイラに嫌味を言ったつもりはなく、ただただアカネがその場にいない寂しさから出た言葉である。しかし、今のセイラは本心を呟いた時のカイトと同じ表情をしていた。
「そ、そんなことないよ。すごく有難いと思ってるし。仕事はやった方が良いと思うけどね……アカネの代わりになろうとしなくても、僕はそれなりに満足だから」
半分は嘘で形成されていたが、相手を傷つけないためとカイトは柔らかく笑った。セイラはくすりと笑うと、『冗談ですわ』と面白そうに笑った。しかし、目の奥が笑っているようには見えない。カイトの感受性の強さ故かもしれないが、セイラが心から笑っているようには見えなかった。強がっているわけでもなく、悲しんでいるわけでもなく。ただ自嘲を含むような、そんな笑顔である。
何かが心に引っかかる。嘘をつかれているのがあからさまに分かってしまうと、気になってしまうような……そんな感覚だった。
何か違和感を感じながらも、カイトは暫くセイラと雑談をしていた。カイトは主に、『吹雪の山』に行った際の事を話して聞かせる。そして、彼女は終始それをにこにことしながら聞いていた。
朝の風の冷たさは徐々に変わっている。話のネタがそろそろ尽きるかという時、大体昼の十一時くらいだろうか。セイラは少し眩しそうに太陽を見上げると、紅茶のカップを持ったまま立ち上がって言った。
「わたくしはそろそろ戻りますわね。ついでに、アカネさまも呼んでお昼にいたしましょう。ゲイルズさまを呼んできますわ」
ゲイルズを呼び、再び食事の時間になった。さすがのカイトも覚えなければいけないと念じているからか、かなり様になっている。しかし、トレジャータウンに変えればこんな知識はすぐに手放してやるといわんばかりだった。そして、昨日よりも大分体調が良さそうなアカネは当たり前のように教えられた方法で食事をこなす。もはや、食事がこの船の中での任務と化しているのが悲しい。
しかし、この数日間とは少し様子が違った。アカネが食事を食べ終わっても席を立たない。カイトの方をじっと見つめて、食べ終わるのを待っているようだった。
「アカネ、どうしたの?」
「カイト様。私語は慎んでいただきたい」
ゲイルズからまた注意がとぶものの、アカネはそんな彼を無視してカイトの言葉に応える。
「今日は普通に過ごすわ」
「え?」
カイトの表情に輝きといっていいほど明確な光がともる。そんな表情の激しい変化に少々戸惑いを覚えつつも、アカネは少し眠たそうに眼を擦って言った。
「とりあえず歌えることは歌えるようになったみたいだから。今日は普通に過ごすわ……今日の夜、アルストロメリアだし」
カイトは心底嬉しそうに強く頷くと、やり直しをさせられる可能性をすっかり忘れて食事をかき込むほどの勢いで食べていく。ゲイルズの叱咤が飛ぶが、カイトは『ハッピー』と表すしかないような気持ちで一杯だった。
二匹は特に海を眺めながら会話、ということもなく自室に戻ると、アカネがベッドで横になって眠気を堪えている中、カイトがこの数日間の思いを話す。カイトはとにかくうれしそうだが、アカネはとにかく眠たかった。
到着は夜になるという事で、アルストロメリアに宿を取ってあるのでそこで眠る……という手もあったが、何せ夜更かしを好む性格ではないアカネにとってここ数日間の徹夜はかなり来たようだ。
カイトの話に適当に相槌を打ちながら、揺蕩うように船を漕ぐアカネ。それでも、目の前にいるだけで嬉しくて仕方ないカイトは、ここ数日一番の笑顔を浮かべていた。
アルストロメリアへの到着は、もう近い。