ドキッ!深夜の雑談会【弐】‐89
「よし……じゃあ、質問だ!!年齢を教えてくれ」
ゴルディは自身の年齢に引け目を感じることがないのか、僕たちにその質問を投げかけてきた。年齢的には上であろうクレークは爆睡しており、アドレーも特に待ったをかけることはなかった。
「ヘイ……じゃあ、誰から行くんだぜ?ヘイヘイ!」
「心の準備ができた順からでいいんじゃないか?」
ヘクターとアドレーがそう結論付ける。少し間は空いたものの、順々に自らの年齢をカミングアウトしていった。ヘクターは22歳。拭い去れない違和感があるが、気にしない。グーテは19歳。実際もう少し行っているかと思っていた(口調と若干老け顔のためだ)が僕と一個違うか違わないかというほどだった。僕は近いうちに19になるだろうし、そうすればグーテと年齢を並べることになるかもしれないと思う。
アドレーは33歳、トランは13歳だった。やはりトランはかなり幼い面があるが、しっかりと自分の役割を務めており、それに対する真剣な姿勢はすごいものだと思う。父親に関してはノーコメント。
リオンは20、ということだった。しかし、それを発言する前に少し考えるしぐさを見せたので、実際のところはよくわからないが、本人がいうのだからその年齢で考えよう。自分より少し年上だったのは特に驚きはしなかったが、年齢が同じなら、また話題も広がるかな、と少し期待していた。
何にしろかなり近い方なので、これからも上手く絡んでいこう。
ゴルディにも詰め寄ったところ、26だということだった。予想より上だったが、彼の雰囲気からすれば妥当だと感じる。基本的に20歳からその半ばが多い。クレークの年齢は皆知らず、不詳ということだった。何なんだろうか、あのポケモンは……と、しばらくクレークについて探りあっていた。
「カイトは?」
「僕は……まだ18。でも、少ししたら19かな」
「へえ、カイトあっしとほぼ同じでゲスね!何だか、実力差ありすぎて不甲斐ないでゲス……」
「ヘイ!まぁ、グーテに関しては仕方ないぜ!ヘイヘイ!」
「ひ、ひどすぎでゲス……」
全員のカミングアウトを終えた後、別の質問へ移行する。グーテからの質問だった。
『なぜこのギルドで働こうと思ったのか』
この中には、探検家を目指す以外の目的が有るものもいる。そのため、このような言い回しにしたんだろうと考えられた。
「んー……僕はお父さんの手伝い、かな。ちょっと家計危ないから。それに、ペリーに判断力が高いから見張り番の才能あるって言われて、この仕事好きなんだ」
「わ、我が息子よ……!家計のことは言わなくてもいいが、なんて素晴らしい!」
「アドレーもサボらなければ少しは給料あがるんじゃねえか?ヘイヘイ」
「さ、サボってなどいない!何を見ているのだ、お前たちはっ」
「前さ、サボってるアドレー見てアカネが毒づいてたよ?」
「あ、ぐ、ぐぅ……」
ほぼ全員にサボりのことについてアドレーはフルボッコされていた。尚、僕もそのうちの一人である。
アカネの名前を出してみて、ふと思った。アカネ、もう寝たかな。いや、あの強烈な女性陣が寝かせてくれるわけないから、きっと今も起きてみんなの話を聞くとかしてるのかな、と。
「なんとなく言いづらいかもしれないでゲスから……あっしも少し話させてもらうでゲス。
あっしは兄弟が多いんでゲスが……あっしはその長男にあたるでゲス。
一流の探検家になるのが夢で、そのためにはギルドに入って修行するのが良いと思ったでゲス。だから、母ちゃんたちに見送られてギルドに加入したでゲス。
まだ全然だめでゲスが……頑張るでゲス!」
グーテの話に、みんなうんうんと頭を上下に揺らす。皆どこかしら通じる点があるのだろう。僕もその一匹だと思う。
「俺は……探検家になるのが夢であるステファニーに便乗したんだ。最初は成り行きだったけど、今ではすごく楽しいと思ってるよ」
リオンについてはすこし意外だった。彼はチームリーダーを務めている。彼もそれなりの志があったのかと思ったが、違ったようだ。
彼の発言前のしぐさに、また考えているような部分を感じた。きっと、こういう場では話の道筋を立ててから話すようにしているのだろう。
「ヘイヘイ!オイラは……お宝ががすk」
「あ、お前はいい。カイトは?」
「へ、ヘェェ―――イ!!!!」
ゴルディがヘクターの発言を妨げて僕に個別で質問してくる。
僕は考えていた。そういえば、僕はどんな思いで探検家になろうと思ったのかを。重い話はしたくはない。いろいろと複雑な気持ちが絡んでいることを感じたが、表面部分だけに浮き出てきたものだけを喋ろう、と決めた。
「僕は……とても謎を解きたい、と思ったことがあったんだ。それを話すと少しだけ長くなるから省略するけど、そう思ったことがきっかけ。
でも、おかしいよね。はっきり言って、僕はそれまで探検隊にさほど興味はなかったんだ」
「……ん?でも、カイトのご両親はサラさんとガリュウさん……救助隊でゲスよね?それは考えなかったでゲスか?」
「――――……僕が救助隊やったって、親の七光りとか言われるだけでしょ」
自分でも思っていなかった程低い声が出た。慌てて声をのどの方にひっこめるも、時すでに遅し。場の空気は重くなり、皆驚いた顔で黙り込んでいる。
苦笑いしながら、「ごめん!ちょっと気持ちが行き過ぎたよ」と、軽くはぐらかそうとした。
「そ、そうか、ヘイヘイ」
「なんか悪いこと聞いちゃったでゲスね……申し訳ないでゲス」
「……と、とにかく、さ。
そのきっかけには、僕の行動力を大きく跳ね上げるような力があった、って話だよ。
アカネとチーム結成して、本当によかったなって思ってる。毎日が楽しくて仕方ないよ」
アカネの名前を再び出して、アカネとの出会い方を聞かれないか心配になった。こればかりは勝手に話せばプライバシーの侵害。アカネの気持ちを考えると……話すわけにはいかない。
しかし、皆アカネと僕のことについては言及しないものの、先ほどの重々しい空気とは一変し、部屋にいるメンバーたちがみんな僕を見てにやにやと目を細め、口元をぴくぴく吊り上げている。
「ど、どうしたん……だい?」
「ヘイ!前から聞きたかったんだけどさ……ぶっちゃけ、アカネとデキてるのかい?ヘェイ!!」
「で、デキ……!?」
「やっぱ、このギルド多少男臭いとこあるからさ、なかなかそういう話は出ないんだけどよ……!!
前さ、リオンに『ステファニーとデキてる?』って聞いたらなんか威圧的に否定されたし、そしたらもうカイトに聞くしかねえだろ!!」
「声大きい!デ、デキてないよ。というか、アカネがそういうわけないし……」
「あれ?でも、カイトさんってアカネさんのこと好きなんじゃないの?」
「どこからそんな話が…!?」
「そうなんじゃないのか?俺はアカネが絡む事なら日々お前におびえてるぞ」
「えっ!?あー……リオンは……うん……」
残念だが、リオンがおびえる理由に関しては多少覚えがあるような、無いような。なんとなく引っかかるので、たぶんあるんだと思う。具体的には言えないが。
「え、リオンこいつに何されたんだよ!」
「早く言え!トランが寝られないだろう!」
「えっと、まずは……」
「やめろ、ちょ、やめろ!」
僕の数多いのか少ないのか、自分でも把握していないことを、あっさり友人に三分の一ほど(リオン曰く)だろうか?ばらされた。
リオンは自重してくれるやつだったが、それでもすごく恥ずかしい。
僕はリオンによって打ち明けられる事実を聞きながらも、恥ずかしさから尾先の炎を轟轟と燃え上がらせていた。