ドキドキ(?)親方様との対談‐72
ペリーが食堂へ行ってしまい、残ったのは僕と彼だけになった。
目の前に居るのはこのギルドで一番偉いポケモン、親方のパトラスな訳だが、二匹になってしまうとどうしていいか分からなくなる。
「二匹で話すのは初めてかな?」
「あっ……はい」
「そう固くならないでよ〜。最近どう?アカネとは上手くいってるかな?」
「そう……かな。前よりは何となく安心してるかも」
「何かあったみたいだね。まぁ、それを共に乗り越えてこそのバディ!みたいな!
……ペリーがちょっときつい事言っちゃったかな?」
それを聞いて、僕は思わず顔を上げる。どうやらパトラスは、僕たちの会話を聞いていたようだった。どのくらい聞いていたのかは分からない。が、相変わらず読めない表情をしているパトラスを見ると余計分からなくなる。
ペリーが何かあると怯えるような相手には見えないが、ドクローズを紹介された時のあの朝の出来事を考えると、通常のポケモンには無い力を持っているのだろう。
穏やかで妖精のような相手だからこそ、気を許してしまう。それもある種の恐ろしさかもしれない。
「……そうだね」
「ペリーのはたしかに一方的な言葉だったけどね。探検隊っていうのはさ、やっぱり発言だけじゃどうにもならない時もあるんだよ〜。
あの洞窟の奥深くには財宝が眠ってるとか、あの湖の底には古代遺跡があるんだ、とか?口で言うのは簡単だけど……。
問題はそれを誰が信じてくれるか、なんだ。信じてもらえたらそれで良いけれど、どうしようもなく否定したいって考えの人はたっくさんいるから。
それでも納得させるには、その考え方を根本からぽーんと、ひっくり返す必要があるわけだから。ていうか、必然的にそうなっちゃうっていうか。とにかく何か見せつけてびっくりさせなきゃいけない時があるんだな〜」
パトラスはいつにもまして饒舌に話す。パトラスだって功績のある探検家だ。きっとそういう局面にぶち当たったことは何度もあったのだろう。その度にこんな思いをしたのだろうか。
有名になればなるほど、聞こえる声も大きくなる。それが良い物であっても悪い物であっても、容赦はない。
……父と母も、そうだったのだろうか。
「……パトラスもやっぱり、ドクローズを信じる……っていうのかな」
「フフ。僕は君たちもドクローズも信じてるよ。だってトモダチだもん。ルンルン〜」
「そっかぁ……」
そんな親方を見て、何となく安心した。この場にアカネも居たら、不機嫌な顔をしながらもその言葉に耳を傾けていたのだろうか。
「じゃあ、またごはんの時にねー!僕、これでも親方だからね。うん。忙しいんだよ〜。じゃねー」
子供のように無邪気な声でそう言うと、パトラスはふらふらとどこかにスキップで移動していく。
ドクローズを追い返し、一応自分達の仕事は遂行した。
しかし、結局やるせない気持ちになる。何故、あいつらが笑うのだろう。
今日のアカネの行動についても色々と話したい事がある。パトラスに少しの安心感を貰い、さて、部屋に帰ろうと思った時だった。
『じゃあ、またごはんの時にねー!』
パトラスの言葉がよみがえる。
そうだった。
夕飯抜きだった。