ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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五章 悪意と罠
僕たちとドクローズと‐71
ギルドへ帰宅後、汚れた体を洗う元気があまりなく、そのままペリーの元へと直行した。気付けば夕暮れ時になっている。ダンジョンの中に居ると時間を忘れてしまうことが度々あるが、それも含めて『不思議のダンジョン』というのだろうか。
ペリーはまず、かなり汚れた僕たちの体を見て少々驚いていたようだが、直に食糧調達の結果を訪ねてきた。
「……なんだかよくわからんが……大変だったようだな。
 それでその……セカイイチは?」
珍しく生気のない目のアカネと顔を見合わせる。綺麗なリンゴはまだいいが、傷が入っている物はどう説明すればいいのだろう、と。
一応食べ物であるし、僕達が大丈夫だと思っていても汚染されていたりしないだろうか、と、先ほどは思っても居なかったことが少し不安になってきた。
「それが……トラブルがあってさ」
「はぁ!?じゃあなんだってんだい!セカイイチ採ってくるのに失敗したってのかい!?」
「うっさい。話聞きなさいよ」
異常に怒鳴り散らし、羽をばたばたと振るうペリーにアカネが毒づいた。ペリーは興奮してはいるものの、それはそうか、と思ったのか、羽を定位置に持っていき、少しだけ静かになる。
「まず、セカイイチは結構この中にあるんだけど」
そう言って僕はバッグを空けた。他の道具も混じって、少しバッグを傾けるとセカイイチがころりと一つ転がり落ちる。もともと綺麗な物は四つほどあったのでそれを持ち帰り、ついでにまだ木についていたものを少しだけもいできた。それを含めると六つほどある。
「おお、上等なセカイイチじゃないか」
「……こっちにもあるけどね。こっちは傷がついてたり焦げ跡がついてたりして、良くわかんないのよ」
アカネも自分のバッグを空けて傷が入ったセカイイチを取り出す。焦げ目がついたセカイイチで、恐らくただ表面が焦げただけなら全然食べられるのだろうが、ポケモンによる有毒ガスの引火によってついた焦げ跡だったため、微妙なところだった。
ただ、あそこで引火させていなかったら、恐らくセカイイチの木自体が駄目になっていただろうな、と思う。不思議なことに、引火させた後、あのガスの毒性は森の中に残っていなかった。あまり頭が働かず、あの時は気付かなかったが、今になったら少し妙だな、と感じる。
「何でこんなことになったんだい……?まぁ、深く考えるな。食い物の大抵のことは、ベルの知識でどうにかなる。で、なんでこうなったんだい?」
「ドクローズの三匹が邪魔してきて…………」
「はぁ?何故ドクローズ達がお前たちの邪魔をするんだ。適当な事を言うな」
「適当って!これはグロムとエターの毒ガスが引火した時に……」
「分かった分かった。お前があの三匹の事が気に入らないのは良くわかったよ。意地の悪いことをするんじゃない。親方様があの三匹をお認めになったんだ。お前達のような新人がどうのこうの言ったってどうにもならないだろう」
険しい表情でペリーが僕を叱咤する。その反論はこちらがドン引きするほどに自信タップリなようで、思わず怒りが呆れに変わる。
「飛び入り参加のドクローズを信用できて、私たちを信用できないと?」
「そういう話をしているのではない。今日、私が食料調達を度の合間にしようかと困っている時に声をかけてくださってな。私も暇ではない。スケジュールも時間ごとに決まっていたし、今日一日ではどうしても十分な食料を集められない、と相談すると、彼らが進んで引きうけてくれたのだ。
 そのおかげで、私は食糧集めに行っていたら夕飯に間に合うか分からないような予定だったはずなのに、今ここに居ることができるわけだ。ドクローズはお前達が帰ってくる随分前にとっくに帰ってる。
 残念だが、お前たちの言う事はあまり信憑性が無いな」
『セカイイチ』を持ちかえるという仕事を横取りするつもりだと思っていたが、そちらの仕事を引き受けていたらしい。
ペリーは随分誇らしそうに話をしていた。それをされたら、ペリーのようなタイプは完全にコロッといってしまうだろう。何となくわかる。が、それでもやはり腹は立つ。
アカネはいつものように眉間にしわを寄せ、腕を組んでペリーの話を黙って聞いていた。やがて「……はぁ」と、深くため息をつくと、バッグに入っていたセカイイチを全てペリーの前に置き、森で入手したほんの少しの木の実をその隣に並べると、何も言わずに部屋に帰ってしまった。
「あ、アカネ……」
「……兎にも角にも……セカイイチの採集の事は本当に感謝するぞ。この後ベルに一応調べてもらうが、これでどうにか全員の命が守られた。
 ……だが。あまり仲間の事を悪く言うんじゃない。一応親方様には報告はしないでおく。代わりに今日は夕飯抜きだ。自室でしっかり反省しておけ」
まるで生徒を宥める教師のようにペリーは僕を論した。真実は正反対。だが、いったいこれをどう証明すると言うのだろう。
「ペリー」
少しだけ考えていると、僕でもペリーでも無い、他の誰かの声がした。音が軽く爽やかな声。
このギルドの親方であるパトラスがこちらに近づいてくるのが見えた。「親方様!」と、ペリーはパトラスの方へと羽ばたいていく。
「何の話してたの?珍しく二匹で〜」
「あぁ!いえ!チームクロッカスにセカイイチを調達してきて貰いまして」
「そっか。じゃあ、とりあえずベルの方に回しといてくれる?」
「分かりました!」
そう言うと、ペリーは何処から取り出してきたのか自家用のバッグにセカイイチを詰め込み、ベルの居る食堂へと飛び立っていった。


ミシャル ( 2015/11/07(土) 20:41 )