でこぼこ二匹のストレス解消-64
「あー……うー……」
カイトが意味なさげに掠れた声を溜息と共に零し、チラチラとこちらを見てくる。言いたいことがあるなら話しかけてくればいいのに。と、若干の苛立ちを覚えながらバッグの中の荷物の整理をしていた。
今日は朝の事もあり、あまり上手く依頼を遂行することが出来なかった。熱が大分下がった今思うと、昼間の以来の最中にカイトと私は半ば八つ当たりする形で敵をなぎ倒して行った。
依頼が上手く遂行できなかった理由というのも、所々チームワークが合わなかった事もあるが、基本的に私もカイトも「今あいつガンつけた」という理由などで比較的遠い所にいた野生のポケモンに喧嘩を売りに行っていたことが原因だと思っている。訴えられても文句が言えない。ポケモンも適度にストレスを解消しないと何をするか分からない。まだ一日を終えていないのにも関わらず、無駄な戦いをして頭も体も徹夜明けのような状態になっていた。
「……アカネー」
「なに」
「あいつら絶対怪しいよ、何かたくらんでるよ。寝てる時攻撃されるかも……」
「……ギルドの中で私たちに攻撃してくることはまずないと思うけど。わざわざ『遠征するにあたっての協力者』という立場まで得てるわけなんだし、結局は遠征の収穫が目的でしょ。
まぁ……警戒しておくに越したことはないけどね」
「うん……とりあえずギルドの中でも気をつけた方が良いね」
そう言ってカイトは大きく背伸びをした。カイトも随分疲れたようで眠たそうだ。だが、疲れと今回の仕事の成果は比例せず、今日の報酬はいつも稼ぐその三分の二程度だった。
私も鞄を隅の方に置くと、そのまま床に寝転がった。気がつかなかったが、空腹で頭がぼーっとしていた。
そう言えば昼間も何も食べていなかったことを思い出すと、部屋の片隅に置いてある木でできた時計に目を振る。
丁度夕食の時間だと思ったその時、ちりんちりん、と、食事の準備が出来たと言う合図がギルド内に響いた。
「ごはん!!」
そう叫ぶとカイトは疲れたように下に向いていた視線をガバッと上に上げた。目が輝いている。相当腹が減っていたのだろうか。疲れているにもかかわらず、食堂へ向かう彼の足取りはふわふわと軽く、まるで羽でも付いているのかと思うほどだった。