可愛い看板娘-60
朝礼を終えた後、カイトに「水飲んでくる」と言って、ギルド前の水場に行き、を張ってある水を覗き込んだ。
今更、だが。私はやっぱり、ピカチュウ何だな、と思う。本当に、今更だけれど。いったい、私は人間の時、どんな姿をしていたんだろう。思い出せないし、そんなもの元からなかったようにさえ感じてしまう。ピカチュウになって、時間が立ち過ぎたのかもしれない。体が覚えている、自分の腕と物の距離感。から回ることが多くなった指先もすっかり物を捉えるようになってしまって、人間に戻ったら、また面倒だなと思う。人間の癖に、電撃を放つために、体に力を入れてみたり。本当に、めんどくさいな。
昨日、カイトと仲直りをした後、直に寝た。あの時、本当に疲れていた。だって、二度も同じ所に帰って、依頼遂行して、バトルして。おまけに、泣いたりして。何だか、恥ずかしい。
水を手ですくい上げて、飲み込んだ。渇いた喉に染み込んで、心地が良い。この世界の水は、ろ過とかされていないのだろうけれども、とても美味しく感じる。
用が済んで、振り返ると、見覚えが無い物が通路の向こう側に会った。ぽっかり穴があいて、そこから階段で下りれるようになっている。階段の隣には、「パッチールのカフェ」と、木の板に書かれていた。
「カフェ?」
あの、カフェか?こののんびりした街にも、こんな洒落たものがあったのかと感心する。不意に、少しはいってみたくなり、バッグの中のポケを確認した。1000ポケ。銀行に預ける予定だったが、結構溜まっているし、少しなら使ってもいいだろう。そう思い、階段をゆっくりと降りていく。
「いらっしゃいませ!」
店に入ると、さっそく声が聞こえてくる。挨拶をしたポケモンの声は、女性らしい綺麗な声だった。
挨拶したポケモンの方を振りかえると、そこにはピンクと白色のポケモンが居た。大きなリボンのような物を付けている。なんだか、とても綺麗で可愛い。何て言うんだろう、女の子だろうけれど、何だろう、すごく可愛い。
「お店、初めてですか?」
「あ、え、ええ……」
「そうなんですか!あの、食べ物はお持ちですか?」
「あ、ええ。林檎とグミなら……」
「このお店は、お客様がお持ちの食材でドリンクを作るんです。持ってきていただければ、いくらでもおつくりできます」
「へえ、そうなの……」
店はぎゅうぎゅうで耳が痛いほど騒がしいというわけでもないが、それなりににぎわっていた。見覚えのあるポケモンも居る。ポケモン達が飲んでいるドリンクのコップを除くと、なんだか綺麗な色のジュースのようなものが入っていた。正直ギルドで飲むドリンクよりおいしそうだ。当たり前だが。
「面白いシステムね……店の方もお金かからないし」
「えへへ、面白いでしょう?」
ポケモンがにっこりと笑う。そういえば、彼女は何と言う種族なのだろう。見たことが無い。この大陸にはなかなか居無いポケモンなのだろうか。
「あの……貴方は、何て言う種族のポケモンなの?ごめんなさい、ちょっと気になって……」
「大丈夫ですよ。よく聞かれます、私、あそこにいるパッチールのエルフさんに、こことは違う大陸で出会って、そのままついてきちゃったんで、私の種族しってるポケモン、あまりいないんです」
「そ、そうなの」
「私の種族は、ニンフィアと言います。イーブイの進化系なんですよ。名前はレイチェルです。貴方は……もしかして、パトラスさんのギルドの方ですか?」
「そうだけれど。チームクロッカスの、アカネです、どうも……」
「クロッカス!最近有名ですよね!……あ、せっかくお店に来てくださったのに、立ち話ばかりで。ごめんなさい、喋りすぎちゃうの、私の癖で」
「いいと思うわ。お店で客とコミュニケーションを取れるのは」
しかし、ニンフィアというのは聞いた事の無いポケモンだった。イーブイと言えば、ステファニーだ。ステファニーも、進化すればこんなポケモンになるのだろうか。なんだか羨ましい。
「では、こちらへどうぞ」