ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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四章 パッチールのカフェ
にやけトカゲ-59
「どうしたの?カイト、今日すごく機嫌良いね」
 ステファニーにそう言われて、にやけた顔を思い切りたたいた。じんわりと痛くて、思わず頬を押さえる。ステファニーがクスクスと笑い、「大丈夫かよ」と、リオンが僕に声をかけた。
「大丈夫大丈夫、いたたた……」
「カイトどしたの?なんでそんな機嫌良いの?」
「えへへ、ちょっとね、えへへ」
 でへへでへへと笑っていると、リオンが隣に来て、僕と肩を組んだ。「何かあったのか?」と、にやにやしながら聞いてくるあたり、こいつまさか知ってるのか?と、目を細める。
「あ、そうだ。昨日アカネの様子が可笑しかったんだよ?なんかちょっとしょんぼりしてて……だから、ガーベラとキュウコン伝説の事話したんだけど。良かったのかな?カイト、大丈夫?」
「大丈夫、むしろ話してくれて良かったかもしれない。どこまで話したの?」
「えっと、サラとガリュウが逃亡する所まで」
「中途半端なとこで切ったねー」
 ……でも、まぁ、あまり先の事は教えない方が良いかもしれない。だって、最後には確かにハッピーエンドだけれど、途中で辛いことがいくつもあるから。アカネが、自分と重ねてしまったら、更に辛いだろうから。
 そういえば、この二匹はアカネが元人間だと言うことを知らないのだ。考えていることを顔に出さないように、笑顔でウン、ウンと答えていた。
「で?カイト何かあった?」
「あのね、あのねー。アカネがもっと構ってって言ってきたんだよ〜」
「あのアカネが?」
「カイト、多分聞き間違いか意味を履き違えてるだけだと思うわ」
「何でそんな冷たい視線向けてくるのさ!」
 「痛ーい」と言うかのように、二匹が冷たい視線を僕にあびせる。ステファニーまでもが、僕を痛い目で見ていた。何なんだ、本当に!
「ところでアカネは?」
「え?なんか、水飲みに行ってくるとか言って出て言ったよ?」
「やっぱりちょっとカイト、何か勘違いしてるよ、それ」
「だから何で!?」
 朝礼を終えて、実は今は仕事時間だった。ボードの前に突っ立って、三匹で会話をしている。あちらからペリーがじっと冷たい目で僕たちを見ているが、気付かないふりをして三人で話し続ける。
「実は昨日、アカネとちょっと喧嘩しちゃって……チーム解散まで行きそうな感じだったんだけど、見事復活しました!いえい!!」
「カイトってそんなキャラだったっけ?」
 思い切りガッツポーズをする僕に、再び冷たい視線を向ける二匹の顔はひきつっていた。これは完全に引かれているが、僕は今日、すこぶる機嫌が良いのでそんなことは気にしない。
「あ、そうだそうだ。あのね、ギルド前にカフェが出来たんだけど、ちょっと仕事行く前に寄ってこうよ!」
「え?カフェ?」
「そうそう、パッチールカフェ。俺も少し前にしったんだけど。まあ、帰る時間はいつ帰ってきても文句は言われないしな。ちょっとだけならいいだろ」
「……うーん、そうだね。カフェかぁ、初めてかも。いってみよっか」

■筆者メッセージ
新章です。この章はすぐおわります
ミシャル ( 2015/02/04(水) 22:09 )