その瞳から、滲み出る-54
……暫く、話を黙って聞いていた。
境遇が、あまりにも自分とそっくりだった。ステファニーは話を途中で切り、夕食の時間だからと、食堂の方へ行ってしまった。私は、少し自分は残ると言って、ギルドの外へ出る。そして、ギルド前の階段に腰をかけた。
キュウコン伝説。それは、きっと自分では無い。けれど、サラでもなかった。それなら、誰だったのだろう。
そして、サラは元人間だった。私と、同じ存在だったのだ。元人間が、記憶をなくして、この世界に降り立った。
暫く考えていた。自分がこの世界に降り立った意味を、ポケモンになってしまった意味。カイトの事。
カイトは、両親の事を知っているのだろうか。いや、むしろ、両親の事を知っていたからこそ、私の事を受け入れた。すんなりと、人間の話を納得してくれた。
カイトじゃなかったら、どうなっていた?キュウコン伝説は、ステファニーが話した通り、世界に広まっている話だ。もしも悪かったら、私はもうしかしたら、とんでも無いことになっていたかもしれない。
私は、もうしかしたら何か、勘違いしていたのかもしれない。
カイトは、ポケモンと人間の間にできた子供だったということだ。もしかしたら、そのことで色々と苦労したかもしれない。もうしかしたら、一々両親の話を持ち出されて、辛かったこともあったかもしれない。
カイトは、何から逃げていたのか、少しわかった気がした。両親の偉大な存在と、世間からの束縛から逃げるために、一人でこの大陸に来たのかもしれない。
そこで、私と出会った。私の事を、勝手に「パートナー」なんて勘違いして、私の事を、最初から信頼して、何でも信じた。
馬鹿、本当に、馬鹿だ。
私は、あんたの母さんみたいに、素敵な人間じゃないのに。
私は、ただ自分で何でもできるみたいな顔してる、ただの世間知らずなのに。
あんたは私の事を初めから信じていた。
母親の存在の事も、きっと、私が不安がるから伝えなかったのだ。いつも、そんな風にやさしくして、そんな性格が、私は好きではなかった。
何よ、何なのよ。
私、ほんとになにも分かって無かったじゃないの。一番頭が悪いのは、私じゃないの。
何よ、ほんと、何なのよ、何だか、もやもやが痛くて、仕方ないじゃない。
「……ひっく……ぐずっ……」
きっと、このままじゃ駄目だ。