チームMAD-48
「……話をまとめよう。アンタ達は、あたしらへの仇打ちを、そのコリンクに頼まれた。あたしらはあんたらが、刺客だと思い、攻撃した。そして今に至る」
あちらのリーダーのマニューラが話をまとめる。話せばなかなか、常識的な筋の通っている一団だった。話が分からないポケモンたちだったらどうしようかと思っていたが、話しあいにも応じ、積極的に声を上げている。
「……あのコリンクは、もう一匹いると嘘をついていた。それは多分「仇打ち」という目的に話が行かなくなってしまうから、嘘でそれを取り繕ったのね。実際はコリンク一匹、あんた達MADを襲ったのもコリンクの独断」
「……つまり、あいつは元々自分であたしらを倒す気はなかったんだ。あんたらに頼むつもりで自分がフルボッコにされたってこった。ハメられたね、あたしらも、あんたらも」
呆れたように、マニューラは呟いた。確かに、そうすればなっとくがいくだろう。コリンクが何一つ明らかにしなかったのは、嘘がばれるのを恐れたからだ。なら、何故そんな事をしたのか。それは良くわからない。アカネや両親達もまた、どうしてなのかはよく分かっていないようだ。
「貴女達は、あのコリンクに覚えはないのね?」
「……まぁね。だが、確かにあたし達は沢山の探検隊を襲ってきた。その中にあのコリンクが含まれていたって、そんなの忘れちまったよ」
質問した母さんの方が、首を傾げてしまった。困ったときに、眉間に少し皺が寄る。それは昔からの癖で、今も変わっていなかった。
「お前たちの噂は、俺達の大陸でも大きく広がってるよ。チームMAD。こんなとこで御目にかかれるとはね」
「そうかい。あんたらの事も知ってるよ。あの伝説の救助隊だろう。最初見た時はまさかと思ったが、まさかこの大陸に来ていたなんてさ。大目玉だよ、まったく」
微かにマニューラは笑うと、後の二匹を引き連れて僕達から離れていく。いつもなら、こんな場面になると眉間にしわをよせ、目をとがらせているアカネも、今回は落ちついた目をしていた。そして、彼女はチームMADに向かって声をかける。
「私たちはコリンクの事について言及する。あんたたちはどうなの。どう思ってる?」
「……あたしらはそんなの慣れっこだ。雑魚相手に構ってられないよ」
そう、アカネの方へ声をかけた途端に、マニューラの足が止まった。
「ただ、やはり強いね。伝説の救助隊ってやつは。そこのピカチュウとヒトカゲも、一部では噂になってるしね、いつかまた会ったら、御手合わせ願いたいもんさ」
「……ええ、そうね」
マニューラもアカネも、同時に微かに笑った気がする。何とも言えないその空気に、僕はただ、少しの間その空気を感じていた。その空気は僕が昔、よく感じていたもので、でも、どうしてそんな空気が流れているのか、不思議だった。
似た者同士の間に流れる、「信頼」、その言葉の空気だなんて、そんなの、どうして流れているのか、分からなかった。