仇打ち-44
「ありがとうございました……!思った以上に足の怪我が痛んでしまって、一人ではどうにも……本当にありがとうございました!」
救助したコリンクはそう言って深くお辞儀をした。報酬も受け取り、満足げにカイトが笑う。そんな中、コリンクはまだ何か言いたげな顔で私たちを見据えていた。まだ帰る気は無い、そんな目でこちらをじっと見つめている。
「……あの、どうしたんですか?」
カイトが不審に思ったのか尋ねると、コリンクは怪我をした足と空っぽのバッグを交互に見た。どうやらバッグの中身は奪われたらしく、見事に軽そうなバッグだった。足からはじんわりと血が滲んでおり、痛々しい。
こう見ると、彼も探検隊なのだろうか。持っているバッグがトレジャーバッグ。つまり私たちと同じバッグだった。フリーの探検隊ということなのか。
「……あの、実は、僕は皆さんと同じ探検隊です。でも、僕単独ではなくて、もう一匹いるんですけど……」
「……じゃあなんであんただけ帰ってきてんの?」
「アカネ!ちょっと口のきき方が……」
「あ、いえ、僕の仲間は僕より先に救助されたみたいで、無事なんですけど……僕以上に怪我が酷くて、起き上れないとあのダンジョンのポケモン達の声を聞きました。おそらくあの盗賊団の仕業だと思うんです!あの、あの!!どうか仇打ちしてくれませんか!報酬もさっきの倍にしてもいいです!お願いします!」
「か、仇打ちって君……それ探検隊の仕事じゃないよね……」
「頼める人が居なくて……やられっぱなしじゃ悔しいし……!お願いします!」
このコリンクは、探検隊でありながら探検隊の仕事をちゃんと分かっているのだろうか。そう思って、顔をそむけた。カイトはあたふたしながらも、私の背中をトントンと押した。「やろう」という事だろう。そんな事は分かっているが、どうも「仇打ち」となると気が乗らなかった。どうしてそんな事をしなければならないのだろう。簡単な救助依頼だった筈だ。
「やってあげたら?彼、本気で言ってるじゃない。確かにやられっぱなしは悔しい。よくわかる」
「俺達も一緒に行く。だから行ってみない?」
そう後ろのサラとガリュウに言われ、少し悩んでいたが、まぁいいだろう。依頼を選ぶ暇が省けると言うことで、了承した。
「それで、その盗賊って?どんな姿してる?」
「そ、それが……僕にもよくわからないんです……一瞬のことで、気を失ってしまって、気付いたらこれでした」
「は?何言ってんの。その盗賊が分かんなきゃ私たちは動きようが無いでしょ。全く………」
「アカネ!!口悪い」
「悪かったわね」
そういって、またプイと顔をそむけた。とても申し訳なさそうなコリンクの顔は、なぜか心をジリジリと追い詰める。何なのだ。まるで私が悪いみたいではないか……実際そうなのは分かっているが、なんだか無償に腹が立ってしまった。
「………まぁ良いわ」
その時の彼の嬉しそうな顔は、忘れようにも忘れられないだろう