馬鹿二匹の茶番-43
「……あの、それで、どうしてガーベラのお二人が私たちの仕事に同行してるんですか……」
若干震え気味にそう呟いた。後ろからのっしのっしと付いてくるメガ二ウムとリザードン。彼らはカイトの両親だと言うのだ。しかも他の大陸やこの大陸でも『英雄』と言われているとてつもないポケモン達だとか何とか。カイトは相変わらずブスっとしており、いつもの彼ではないようだ。私がそれを知らなかっただけなのか、今のカイトがちょっと変わっているのか。なんだか、どことなく寂しい気持ちになったのは、私が隠している事実だった。
「……あのさぁ、僕達に付いてくるとか、そんなのんきなことしてていいの?基地放ってきてんでしょ」
「あっちはソルア達に任せてるの」
「ソルアに?………ならいいけど」
誰だよ。と、心の中で突っ込みを入れた。どうもこの三匹と私では私が確実に浮いてしまうようで、さっさと一人で仕事に行って帰りたい気持ちになった。今日の依頼は簡単な救助依頼だった。盗賊に襲われて動けない。助けてほしい。と、ここら辺では最近そんな被害ばかりだと聞いた。同じ盗賊がやっているとしか思えない。大きな被害を出しているということはかなり強いのだろう。
「あのさカイト。気持ち分かんだけど私の事も考えてくれる?ぎくしゃくしないで。気まずいじゃない」
私がそう言うと、カイトはなぜか衝撃を受けたような顔になり「ご、ごめん……」と、餌をとられた犬のようにしゅんとした。良かった良かった、いつものカイトだ、と少し機嫌を良くした。「ひひひ」「ふふふ」という声が後ろから響いてくるので、何事かと振り向くと、後ろの二匹が気持ちの悪い声を出してにやにやしながらこちらに笑いかけている。すいません気持ち悪いです。
「何か娘が増えたみたいな感覚ねぇ」
「ははは何言ってるんだよ。娘になるんだろう?」
「あ!そっか!」
「何意味分かんないこと言ってんですか怒りますよ」
「ごめん……馬鹿で……」
私は彼らの娘になる気は無いしそういうアレでもないのだから、そこまで騒ぐことも無いだろうに。確かに少し変わった両親だとは思った。カイトの天然をぼかした感じはこの両親から来たのか、と理解する。
「あ、そうそう。敬語じゃなくていいのよ。私達だってあれでしょ?かぞ」
「くでは無いですよね。ねえカイトちょっと疲れる」
「もう無視しとこ……ムシムシ………」
その後も何か色々と言われたような気がするが、無視を通した。私には関係ないことだ、関係ない事だと思いながら目的地を目指す。ダンジョンに入ると、ポケモンは出てくるもののサラが弦の鞭で全てなぎ払ってしまうものだから楽といえば楽だった。その時のサラの顔は随分楽しそうだったように見える。
「あのさカイト。この世界って盗賊も捕獲対象に入るわけ?」
「んー……入るっちゃ入るけど、皆放ってる事が多いからね……よっぽどの重罪じゃない限りは……」
「……そう」
救助兼ね盗賊の捕獲になると面倒な仕事になるな、と思いながら尋ねた事だった。その時、ガリュウとサラは少し驚いた顔で私を見ていた。それはそうだろう。この世界の事を知らないポケモン、と認識されたのだ。私が人間だなんて知る筈もない二匹だから、驚くのは当然だろう。