伝説の救助隊とな-42
サラはカイトの名を呼んだ。それに反応し、不思議そうに首を傾げたペリーがサラの方へ向かっていく。「?」を具現化したような顔をすると、「確かにあのヒトカゲは我がギルドの弟子ですが、どうかしましたか……?」と尋ねた。
ガリュウとサラは、迷ったような困惑したような顔をし、何かを考えるような顔をすると、一言、サラがこう呟いた。
「息子です」
*
「え!?アカネ、キュウコン伝説とか世界を救った救助隊の話とか、知らないの!?」
「……ま、まぁ」
冷や汗をかきながら、そう返事をした。ステファニーもリオンも不思議そうな顔をして私を見ていたが、やがてその顔は落ち着く。「まぁ、誰にだって事情はあるかもしれないし。私話すね!」と、いつもの笑顔でそう言う。彼女の笑顔は心に響き、とても自分が落ち着いているということが分かった。それに先ほどの言葉は、私にとってかなり嬉しい言葉だ。聞かれてしまったらどうこたえていいのか分からない。
「……って言っても、私も伝記や小説でしか読んだこと無いから良く知らないんだけど。今日は普通の仕事だし、のんびりできないから、また今度話すよ」
ごもっともである。今日は掲示板やポスターの仕事が入っており、あまりのんびり話している時間は無い。筈だ。と、ちらりと後ろを向いた。何やら、ガリュウ、サラ、カイトで何か話しているらしい。いや、話していない。三匹は黙って向かい合っていた。
「………なんで、来たの?」
カイトが口を開く。ガーベラの二匹は顔を会わせ合うと、「まだそれは言えない」と呟いた。
「ごめんね。……でも、カイトが大陸を出て行って、心配だったのは分かるでしょ。連絡も本当にまれで、最近ずっと来ないから、心配してた」
コクリ、とカイトが頷く。どうやら「悪かった」と思っているようで、汗が額を伝っていた。二匹も、なんだか申し訳なさそうな顔でカイトを見ている。
「探検隊を始めてたなんて知らなかったよ。危険な仕事だし、せめて連絡位はしてくれ」
「………それはごめん」
「……それと、もう長い事レイ君にも会ってないよね?あっちではレイ君も元気にしてるし、たまには会いに行ったら?」
「………もう、関係ないよ」
何やら暗い話になっているようで、一体どうすればいいのか分からなかった。なので、その様子をじっと見つめていると、サラがこちらに顔を向けた。私の顔を見てにっこりと笑うと、「あなたもこのギルドの弟子だったのね」と言った。どうすればいいか分からず、「ええ、まぁ………」と気まずそうに答える。
「あー……えと。カイト。申し訳ないけど、そろそろ仕事行かなきゃ帰るの夜になる」
「あっ、そうだね……この話はまた今度ね。母さん、父さん。そっちも何か用事があってここにいるんでしょ?」
「あ、嗚呼。まぁ……え?あの、それよりもしかしてその子がパートナーなのか?」
「……悪いですか」
何だか悪く言われたような気がして、ついつい口調を乱してしまう。「いやいや!そんな事ないけど!」とガリュウが慌てて言ったものだから、つい「そうですか」とそっけなく返事をしてしまった。流石にあまり悪い印象を与えない方がいいとは思ったが、素には逆らえなかった。
「ガリュウ……うちの子もついに女の子を……しかもこんなに可愛らしいなんて……」
「いやちょっとまってください可笑しいですから」
私が思っていた事とは裏腹に、サラは感激の涙で目を潤ませ始め、そんな事を呟き始めた。ガリュウも「ほうほう…」と、何か考えている。困惑し、つい突っ込みを入れてしまった。普段はこんなキャラでは無い筈だ。
「か、母さん!違うよ!アカネはあの、パートナーだから!うん!」
「何あんたまで赤くなってんのよ!キモ!!」
「もともと赤いからじゃないの!?」
そんな口論を、懐かしむかのような顔で見る二匹が居た。