調査報告-37
「………なるほど。つまり、滝の裏側には実は洞窟があり、その、何だ、でかいのを押すと仕掛けが動き、温泉まで流されてしまったと……」
「うん。宝石はたまたまアカネが持ってたこれだけだけど……」
少し残念だな、そんなふうに思った。僕ももう少し小さな方の宝石に興味を持っていればもう少し持って帰れたかもしれないのに……と、若干落ち込んでいた。アカネは、何かを考えているように下を向き、ゴニョゴニョと何かを呟いていたが、あまり聞こえはしなかった。
ペリーはそんな僕とは裏腹に、とても喜んでいる様子だ。僕もペリーの褒め言葉を聞き、舞い上がっていたところに、アカネが口を開いた。
「………ねえ、ペリー……もしかしてパトラスってあの洞窟行ったことあるんじゃないの?」
「は?いや、それはないよ。そしたら何故お前たちに滝の調査を任せるのだ?」
まったくもってその通りだが、そもそもどうしてアカネはそんなことを言ったのだろう。もうしかして、あの例の「夢」に出てきたシルエットが、パトラスだと思ったのかもしれない。
そして、一応の為ペリーが聞きに行ったところ、やはりパトラスはあの滝に行ったことがあったようだ。その話を聞いて、僕はがっかりしていたが、アカネは納得した様子で、なんだかとても満足そうだった。
「嗚呼、お前達。そういえば、朝礼に来ていなかったから重要な事を伝え忘れていた」
「重要な事?」
「嗚呼、実はな」
『キザキの森という場所の時の歯車が盗まれたらしい』
その言葉を聞いて、僕は衝撃を受ける。時の歯車、という物を知っている者なら、皆驚くだろう。しかし、アカネはなぜかピンとこない顔で、「何それ」という顔をしていた。
「……あのさ、ペリー」
「何だ?」
「時の歯車ってなにさ」
この世界のポケモンとして言っていいのか、という言葉をアカネは口に出した。確かにアカネは記憶喪失で、元人間だがペリーの前では話が違うのだ。豆鉄砲を食らったマメパトのような顔をしたペリーが、アカネにぐっと迫った。
「お、お前本気で言ってんのかい!?」
「何よ。知らなくて悪いわけ?」
「全世界のポケモンたちならほぼ誰だって知っていることだ!カイトならともかく、しっかりしたお前が知らないってどういうことだい……」
「はぁ!?ちょっといい加減にしてよ!本当にしらないんだってば!」
バチバチ、バチバチと本気の電撃がペリーに迫ろうとしていた。アカネの電気袋からびりびりとした電気がこちらまで伝わってくる。このままではペリーは焼き鳥ゲフンゲフン攻撃されるだろう。とにかくこの激闘を止めなければ。
「そ、それよりぺリー!時の歯車が盗まれたって、そのキザキの森っていうところはどうなったの?」
「………嗚呼、そうだな。風も吹かず、水滴は固まったまま。木の葉は鮮やかさを失い、全てが灰色、というべきか」
ペリーの言葉に、アカネも僕もただ呆然としていた。
「まぁ、お前たちも不審なポケモンを見たら通報するように。それでは、解散だ」