寝坊に構えば損をする-32
「ちょっと!起きなさいよ遅れるって!!」
ぐっすり眠っていた僕はそんな声で目を覚ました。目を開けると、僕の体をゆすって怒鳴っているアカネが居た。どうやら僕より先に起きていたらしく、僕を起こすために時間ぎりぎりまでここにいるらしい。
「あわわっ!!いま何時!?」
「7時1分よ馬鹿!私まで叱られるでしょ!」
怒りに満ちた表情をしているアカネは僕の背中を無理やり押して起こす。そう言えば、どうしてアカネがここに居るのか、ふと疑問になった。どうしてだろう、そう思いアカネに訪ねてみる。
「ねえ、何でアカネがいるの?」
「はあ!?私の部屋なんだから居てもいいでしょ!」
「じゃなくて、何で起こしてくれたの?」
「は?」と、阿呆のような声をぽろりと零すと、言葉の意味を考えているようで、カーッと顔が赤くなり始める。どうしたのか、と聞こうとすると大声でどなられてしまう。
「は、はぁ!!別に良いじゃないの!そんなこと言ってる間に体動かしたらどうなの!ほらさっさと行くよ!」
僕の腕をつかみ上げると、半ば引き摺り状態で朝礼に連れて行かれる。この小さな体にどうしてこんな力があるのか、少し疑問に思ったが、この体で馬鹿力の僕が言えることでもないだろう。引き摺られている中立ち上がると、アカネと朝礼へ向かった。
広場ではとっくの昔に朝礼は終わっているようで、ペリーがプンスカしながら僕たちの事をまだかまだかと待っていた。
しかし寝坊するのも無理はないのだ。一日四件の依頼をこなし、あのマリ誘拐事件から五日が経過していた。計二十件以上の依頼をこなしたのだ。疲れない訳がないだろう。
しかし、そんなのが通用しないのがギルドだ。いつもは僕が寝坊しても先先行ってしまうアカネだが、今日は迷惑をかけてしまった。
「おいお前達!遅い!とっくに起床時間は過ぎているぞ!カイトはともかくアカネまでどうしたんだ。いつもは早起きだろう」
「え、あ、いや、あの、アカネは僕を起こそうとしてくれてて、その」
「言い訳は聞きたくないよ!全く!………まぁいい。それよりお前達。ちょっとそこに並べ」
ペリーは自分の目の前を指さすと、アカネと顔を見合わせそっとふたり横に並ぶ。ペリーが納得したような表情を見せると、とてもとても楽しそうな顔をし、僕達にある事を伝えた。
「お前達、喜べ。今日は探検隊の仕事らしい仕事がある。」
「えっ!!?」
「探検隊の仕事らしいって……」
若干あきれたような表情を見せるアカネも、少し嬉しそうだった。僕は楽しみで楽しみで仕方がなく、ペリーの言葉をまだかまだかと待っていた。
ペリーは僕たちの前に地図を広げると、滝のような物が描かれている場所を指差す。
「お前達にはここにある滝の調査を任せたいのだ。一見普通の滝のように見えるが、この滝には何か秘密があるのではないかという話が持ち上がってな。お前たちの日々の功績もあるし、ここはお前たちに任せようと思うのだ」
「滝の調査かぁ、何かかっこいい……!分かったよ、僕達行ってくる」
「ま、あんま期待しすぎるのもアレだと思うけどね」
本当は嬉しい癖に、乗らないような事を言って腰に手を当てる。僕たちはその後、ぺリーの説明を聞くと、トレジャータウンに向かい、準備を済ませ、滝のある場所へと向かったのだ。