ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















小説トップ
一章 茜色の花歌
マリ奪還-30
 トントン、トントンと足音が響いていた。怯えて震える声に、悪意に満ちた轟き。二匹の元に、走って、走って。どうにかこうにか早く行こうととにかく走った。怯えているマリは涙をぽろぽろ、ぽろぽろと流していた。マリに何かをさせようとしているザドクの顔は「お尋ね者」の顔だった。今の彼は、悪意の塊といえるだろうか。お尋ね者の増えるこの世界で、何万とこんな事が起こっているのだ。ゾッとする。
「ま、まて!!!」
 僕の声は、少し震えていた。アカネが前に飛び出し、大声でザドクに声をかける。
「その子から離れて!!!」
「お、お前たちはさっきの……まさか、探検隊…!?」
「僕たちはチームクロッカス!お、おまえをつかまえるためにきた!」
 後半から声が震えてしまい、アカネに片手でバシッと叩かれる。「しっかりしろ」と言いたげな目で見られ、何とか怖がらないように、怖がらないようにザドクをしっかり見据えた。ブルブル、ブルブルと足が震えるも、それを止めようとして余計震えてしまう。それを見たザドクが、嫌な笑みを浮かべた。
「そう言うことか。お前ら探検隊といっても新米だな?数々の探検隊を見てきたが、ここまで弱そうな探検隊は初めてだぞ。余裕だな」
 マリは、とても不安そうな顔をしていた。怪我はしていないようだが、精神的にも重いだろう。早く終わらせてあげなければ、とマリに声をかけた。
「マリ!!こっちへ!」
 そう叫ぶと、マリの全力とみられる速さでこちらに向かってきた。不意打ちにザドクも反応できなかったらしく、豆鉄砲を食らったマメパトのような顔をしていた。
 マリが僕たちの後ろ側へ回ると、ぷるぷると震えて岩の影に隠れた。とにかく、マリを取り返したらこっちのものだ。悔しそうな顔をしていたザドクが、次の瞬間にやりと笑った。
「アカネ!!何か来るよ!」
 思った通り、ザドクはサイコキネシスを繰り出した。体が浮かされ、次の瞬間に衝撃のようなものが体中に染みわたった。それはアカネも同じのようで、二匹して壁に叩きつけられる。ザドクの高笑いが響く中、僕たちはゆらゆらと起き上った。
「絶対、倒そうね」
「……当たり前でしょ」
 頷きあうと、ザドクに向かって走り出した。『火の粉』を吹きつけるも、あっさりとよけられてしまう。アカネも『電気ショック』を繰り出すが、それもよけられる。先ほどの攻撃を見る限り、レベルはそこまで高くは無い筈だ。
「スリープの特性は予知夢だった気がする」
「え?じゃあ全部読まれちゃうの!?僕たちの攻撃!」
「発動するのはまれだって聞いたけど、とにかくどうあろうと命中させなきゃね」
 十メートル以上離れたザドクを二匹で見据えた。マリがちらちらとこちらを窺いながら、不安そうな顔で見ている。マリを守るためにも、負ける訳にはいかないのだ。
 アカネが背中を丸めると、すごい速さで走り始める。それはもう、とてつもないスピードだった。
「電光石火?」
 目に見えない、そんな速さでザドクに向かっていく。確かアカネは電光石火など使えなかったはずだ。今取得した、ということか。その早い事早い事、それに目が付いていけないのかザドクも驚いた表情をしてみていた。
「アカネ!!電気ショックだ!!」
 アカネは僕が叫んだ通りに、いつの間にか回り込んでいたザドクの後ろ側で電気ショックを放つ。それはザドクに直撃し、苦しそうなうめき声が響いた。

■筆者メッセージ
技の覚え方や、ストーリーの流れは若干というよりは大幅に異なります〜
ミシャル ( 2014/06/25(水) 21:44 )