トゲトゲ山、道筋-29
その山の敵は、強かった。僕やアカネのタイプに不利なイシツブテなので溢れかえっている。ムックルやニドリーノ、戦い難い敵が多かった。
おそらくこのダンジョンの階数は10、11当たりだろう。そこまで体が持つか不安であったし、そもそも今僕達のレベルがどれくらいなのかという事もいまいち把握できていない自分達にとって、ダンジョンという場所自体が不利なのだ、ということを改めて感じた。
「うわぁっ!!!」
「ちょ、なにやってんの!」
アカネの放った電撃が漏れ、危うく僕に直撃しそうになる。チームワークもそれほどいいとは言えない、むしろデコボコで、正直どうしようかと思った。
ダンジョンの空気は不穏、というべきだろうか。いかにも、何か上に居るという雰囲気があった。ポケモン達もぎくしゃくしており、僕達に攻撃してくるポケモンとしてこないポケモンの差が激しい。
「ね、アカネ。アカネが見た、その映像って言うのはこんな山の中だったの?」
「まぁね。鋭い岩が並んでた。それは多分ここだと思う。それ以前にルリマがそう言ってるんだから、ここで間違ってない」
ルリマは嘘をつかないよなぁ、と思いつつ、どうしてザドクはマリをこんなところに連れてきたのだろうと、アカネも僕も疑問に思っていた。あんなに優しくて穏やかに見えたザドクが何故、こんなことをしていたのか。正直、アカネの話を聞いた時には信じるか信じないか、の所で信じたようなものだ。
「…………ポケモンも、嘘つくのね」
「うん。人間もポケモンも同じなの?」
「多くの感情を持ってる生き物は嘘をつく。見かけによらないって、思っておいた方がいいかもしれない」
僕のように、ザドクをホイホイ信じてしまうポケモンが、被害者になるのだろう。アカネは、どうだったのだろうか。ザドクの事を、どう思っていたのだろうか。
「私も騙されかけた。良いポケモンだなって思ったのは事実」
「アカネもそんなこと思うんだね」
「……私は何だと思われてんのよ……」
アカネは不貞腐れたような顔をしてそっぽを向く。そんな彼女を見ると、何となくもどかしいような感覚に襲われた。最初はこんなことなかったのになぁ、と笑うと、「なにニヤニヤしてんの?」と、あきれ顔ではなく不思議そうな顔をされる。なんだか言葉がでにくくなって、カチカチした口調で返事を返した。
「い、いや、なんでもないよ?はやく行こう?」
「は?な、何なの」
「あ、階段あった!!」
階段の無いダンジョンは無いのだろうか、とふと疑問に思う。いったい何故、地形も変わり、落ちている物も変わるのに、階段は存在するのかと。探究心が掻き立てられるが、今はマリの救助に集中しなければ。
考えている間の事は早い物で、現在9階まで来ていた。彼らの声が上から聞こえて来る。アカネと顔を見合わせると頷き合い、階段の段を踏み締めた。