救助へ-28
「いや、まだスリープのお尋ね者の情報は無いな……」
ギルドに帰った後、グーテ、ペリーと共にお尋ね者ポスターを眺めていたが、ザドクらしきポケモンは見当たらない。アカネが言ったことはやはり気の所為だったのでは、と今更思ってしまうが、それでもアカネを信じると言いきったのだから信じなければ。アカネは腕を組んで何かを考えているようだった。その時、ギルドのポスター前でサイレンのような音が響いた。何事かと思い周りを見たが、誰一人驚いた様子は無い。アカネやペリー、グーテも驚いておらず、動揺しているのは僕だけのようだった。
「こ、これは?」
「嗚呼、情報の張り替えでゲス。こうやって定期的にダグトリオのアドレーがポスターの裏から情報を更新したり張り替えたりするでゲス。」
『危険なのでポスターから離れてください!!ポスターから離れてください!』
そう声がしたので、僕たちはポスターから五歩程離れた。すると、ポスターが「バタンッ」と音を立て、裏返ってしまった。思わず驚いて、「ヒィ!?」という情けない声を出し、アカネにとても冷たい目で見られてしまう。
『更新完了!!ポスターから離れてください!』
再びそう聞こえた。その三秒後にまたポスターがひっくり返り、元の表に戻った。確かに先ほどまで無かった情報が多く張り出されており、上から下へ見ようとすると、上の方で不審な似顔絵を発見してしまった。
「あ、アカネ……あそこ」
「………!!」
アカネも気づいたようで、僕達は顔を見合わせる。ポスターには、スリープことザドクの似顔絵が入った依頼書が張り出されていたのだ。間違いない、彼だった。あいつは、お尋ね者だったのだ。まんまと探検隊から逃げ延びた、お尋ね者だった。
罪状は『窃盗』『暴行』『誘拐』など、様々な事をやらかしており、危険な相手なのは見てとれた。
「アカネ!早く行かないとルリマとマリが……!」
「………ええ」
お互いに頷きあうと、大急ぎでギルドを出ていく。後ろから「おい!あのスリープのランクは……!」と、途切れ途切れに聞こえてきたが、そんなことは考えない。今大切なのは、二匹を救い出すことだ。
水場の近く、ルリマが焦った表情であたりを見回していた。何かを探しているのか、と思えば既に遅く、マリとザドクは居なくなっていた。必死に二匹の名前を呼び、走り回っている。
「ルリマ!!」
「あっ!カイトさんにアカネさん!大変なんです!さっきまで三匹で落し物を探していたんですけど、いつの間にかザドクさんがマリを連れてどこかに行ってしまって……呼んでも帰ってこないし、どうしたら……」
「落ち着きなさい。まず、何処に行ったのか案内してくれない?」
「こっちです!」
町の出口を通り、少しした所に『トゲトゲ山』という場所があった。そこに、マリとザザドクが入っていたのだという。鋭くとがった岩がむき出しになっているこの山は、かなり危険な場所とされていた。いったいどうして、ザドクはマリをこんなところに。
「僕達が行ってくる。君は、警察とギルドに連絡して待ってて!」
「は、はい!申し訳ありません……宜しくお願いします!」
涙目になっているルリマの頭をそっとなでると、僕達は山の中へと入って行った。