ビジョン-27
カクレオン商店を後にし、私たちはギルドに帰ろうと元の道を歩いていた。また、目には居るポケモン達。クスクス、クスクス、何かを笑っているように、楽しそうだった。あたりを見回しながら歩いていると、またさっきの二匹が目に入る。しかし、もう一匹見覚えのないポケモンが二匹と楽しそうに話していた。
「あれ?ルリマにマリ?」
「あ、カイトさん!アカネさん!」
私達の顔を見ると、嬉しそうな顔が一層嬉しそうに輝く。いったい何なのだろう、そう思っていると、二匹と話していたポケモンの顔が見えた。それは優しそうな顔をしたスリープで、いかにも平和、という言葉がよく似合いそうな声と顔をしていた。
「どうかしたの?」
「あ。僕達実は今まで落し物を探してたんですけど、こちらのザドクさんが知っているかもしれないって言ってくださったんです!」
「一緒に探してくれるみたいなんです!」
笑いながら二人は私たちに説明する。私がザドクと呼ばれたスリープの方を見ると、彼は丁寧にお辞儀をし、「こんなに小さな子が困っているのに放ってはおけなくて、おせっかいかもしれませんが……」と、柔らかに微笑んで言った。カイトは完全に尊敬の顔をしてザドクを見ており、ルリマとマリの二匹もその様子だった。
「そっかそっか、落し物見つかると良いね!」
「はい!じゃあ、僕達行きますね。マリ、おいで」
「見つけたら、お二人にも見せますね!」
「うん、楽しみにしてる!じゃあね〜」
そう言って、三匹は私達の横を通り過ぎた。否、通り過ぎようとした。次の瞬間、私の体とザドクの体がぶつかってしまい、私は軽くよろける。
「おっと、失礼。大丈夫ですか?」
「ええ。まぁ」
「それは良かった。それでは、失礼します」
そう言い残し、ザドクは楽しそうに会話して先を歩く二匹の後に歩いていく。嗚呼、丁寧なものだな、そう思っていた時だった。急に、さっきのような目眩が襲ってくる。あらがうことのできないそれによろけていると、またカイトが先ほどのように私の体を受け止めた。「アカネ!また……」そんな声が私の脳に響き、次の瞬間目の前が真っ暗になる。そして1、2としたところで、閃光が目の前を過って行った。
何かが、見えたのだ。暗い、暗い、山のような場所。ザドクとマリがいる。マリが、怯えている。ルリマの姿は無い。
『大人しくしないと、痛い目にあわせるぞ!』
『たっ……
たすけて!!』
映像の中の会話は、そんな感じだった。どうしようもないこの不自然感。何故こんなビジョンを見たのか。先ほど見たのは、優しく穏やかに話すザドクだった筈だ。いったいどうして、こんな荒々しい姿が見えたのだろう。
「アカネ?アカネ!大丈夫!?」
「………ねぇ、あのザドクって奴、本当に良いポケモンだったの?」
「え?何言ってるの?アカネ」
私は、さっき見た光景をありのままにカイトに話した。分かっている。所詮、目眩後に見た夢の話だ。そう簡単に信じてくれる筈がない。そう思い、はぁ、とため息をつく。暫くカイトは悩んだような顔をしていたが、私を見てぽそりと、一言呟いた。
「……信じるよ?」
「は?」
まさか、こいつ頭がおかしいのではないかとさえ思った。いや、元々少し頭はおかしいかもしれないが、こんな話を信じるなんて普通ではない。どうして、いや、何故。
「な、なんで?なんでそんなこと信じる訳?」
「アカネがそれを見たんでしょ?確かにそれが真実だとは限らないけど、アカネがそれを見たのは確かなら、信じるしかないかなって思って」
「ば、馬鹿じゃないの!?ほんとお人好し!!」
「えっ、えー!アカネじゃあどうしてもらいたかったの!?」
確かに、これを話して私はどうしてほしかったのだろう。本当は、信じてほしかったのだろうか。分からないが、とにかく私らしくもなく、マリが心配だった。それだけではない、何故ルリマがあの場に居ないのかも気になっている。
「とにかく、あの三匹がどうあっても、まずはペリーに確認してみよう。ね?」
そう言ってにっこり笑ったカイトに、不覚にも嬉しい、そう思ってしまった私は、何か、少し変わってしまったのだろうか。