ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















小説トップ
一章 茜色の花歌
小さな二匹-25
 この時聞いた話だが、グーテが泣いていたのは後輩ができた上に自分に仕事が回ってくるとは思わず、嬉しくて泣いていた、と話していた。全く驚かせないでほしい。私でも少し動揺してしまった。それはそうだ、目の前でいきなり他人が泣き始めたのだから、不思議に思うのが普通だろう。
 まずグーテはギルド内の施設を案内した。食堂に寝室、ここは知っている。仲間の事を少しだけ紹介された気もするが、覚えていないし興味もない。その後、トレジャータウンという場所を案内された。これも紹介された覚えがあるが横から入って左から抜けた。とにかく、グーテがとてもうれしそうだったのを覚えていた。
「じゃ、あっしはギルドで待ってるでゲス。準備ができたら、あっしに話しかけてくれでゲス」
 そう言うと、グーテはギルドに戻っていく。まず、カイトの提案でヨマワルの銀行にお金を預けた。何個もの依頼を一日に達成していたからか、おかねは1000ポケ以上に増えていた。この世界では金の単位をポケと言うらしい。一ポケ、十ポケ、百ポケ。不覚にも可愛らしいと思ってしまったのは、秘密だ。
「ねえねえアカネ。僕カクレオンのお店で色々見てみたいんだけど、いいかな?」
「そりゃ、いいけど」
 そう言うと、二匹でカクレオンの店に向かった。道行くポケモン達を見て、珍しがる自分はやはりポケモンなのだ、と思わせる。本当に、穏やかなところだ。この風景がずっと続けば、皆楽しいだろうな、そんなことを考えては、自分に呆れていた。
 カクレオンの店に着くと、まず最初に「いらっしゃいませ〜」という声が飛んできた。カクレオン二匹が頭を下げている。
「え、えと、こんにちは!」
「あ、もしかして最近パトラスのギルドに入った新人探検隊さんですか?」
 二匹いるうちの、緑色の方がそう言った。何故知っているのだろう、そう思い尋ねると、「最近話題になってるんですよ〜。腕の立つ二匹がギルドに入ったって。パトラスのギルドはここらじゃすっごく有名ですから、そう言うのはすぐ広まるんですよ」
 お喋りなカクレオンだなぁと思いながらも、隣で黙ってにこにこしている紫色の書くレオンの方をチラッと見る。紫色とは、通常の色ではないが、色違いポケモンというのでもないのだろうか。少なくとも私の知識にある色違いとは違っていた。
「申し遅れました!私は店主のイゴルです、そしてこちらが弟のラゴニ。あなた達は?」
「あ、僕たちはチームクロッカスって言って、僕はカイトです。それで、こっちがアカネ。新米探検隊です」
「まだ若いのにすごいですねぇ……っと、それで、何か品物をお探しですか?」
 自己紹介が終わり、やっと本題に入る。カイトが品物をザーッと見ると、「とりあえず、オレンの実を二つください」と並ぶ木の実を指さした。はいはい!と手早くポケを受け取り、袋にオレンの実を二つ入れると、カイトに手渡す。「ありがとうございました〜」と笑顔でこちらに向かって挨拶した。なかなか感じの良い店だな、と思いながらカイトも挨拶し、店を離れよとした時だった。
「イゴルさーん!ラゴニさーん!」
 そう声がして振り向くと、二匹の青いポケモンがこちらに歩いてくる。片方はマリル、もう片方がルリリのようだ。兄妹かな、とカイトが漏らすと、私達の隣まで来て、「林檎を四つください!」というルリリの声が響いた。
「おー!ルリマ君にマリちゃん。久しぶりだね。はい、林檎。落とさないようにね〜」
イゴルがそう言って林檎を五個、袋に入れて手渡した。随分たくさん買うのだな、と思いつつ、林檎の数が多いことに気付き、おまけか何かかな、そう思いながらそれを見ていた。
 「ありがとうございます!」というと、林檎の数に気付いているのか気づいていないのか分からないが、私達に背を向け、自分達の家であろう場所に帰って行った。
「いやー、あの二匹は常連さんでね、お母さんが病気でよくお遣いに来るんですよ。まだ小さいのに偉いですよね〜」
「………ふーん……」
「へえ、本当にまだ小さいのに偉いなぁ、すごい」
 笑って小さく拍手をするカイトを横目にちらりとみて、ため息をついた。自分はどうも、子供が苦手だと言い難い。自分の年齢もいまいちよくわからないが、子供、といえる年なのか、そうでないのかの中間あたりだと思っている。
「よし、アカネ。そろそろ行こっか」

ミシャル ( 2014/06/22(日) 11:38 )