ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















小説トップ
一章 茜色の花歌
予想内の遭遇-19
 「電気ショック」「火の粉」……主に、この二つで戦闘は進んでいった。アカネも先ほどの一撃でコツをつかんだらしく、電気ショックを上手くコントロールしていた。そんなアカネを少し羨ましく思いながらも、まだ少し力が劣る自分の技を恨めしく思った。アカネに電撃技が身に付いたのはチームにとっては良いことだが、時折その電撃を僕に当てようとするのは勘弁してほしい。否、これからもこの電撃には苦労することになるだろうな、とため息を漏らした。
 二階、三階、四階……と進んでいくと、ポケモンのレベルが少しずつ上がっているのに気づく。彼女も気づいているようだった。しかし、先ほどのようにたくさんの数で来られなければ簡単だった。ここのポケモン達は僕達より確実に弱い。その為、二体で戦うのはスムーズだった。
 暫くして階段を上ると、最上階に近づくにつれおかしなことが起こっていることに気付いた。
「居ないわね。敵」
「前の階は結構いたよね?どこ行ったんだろ……」
 この階に入ってから一度も敵と遭遇していない。あともう少しで奥地だということは何となく予想ができたが、やはり一匹もポケモンのいないこの状況が奇妙で奇妙で仕方がなく、迂闊には歩くことができない。とにかく「トラップがあるかもしれない」という話をした結果、周りに落ちている道具や木の実は完全無視、階段だけを探すことにした。一フロアずつ確認しながら入り、僕が合図を出すとアカネが先に飛び込む。どちらかといえば遠距離にも有利な電気技を持つアカネがまず先に入る。
「…………あ、階段」
「この先が多分奥地だろうけど……うう、大丈夫かなぁ、何かお腹痛くなってきた……」
「林檎の所為よ。ほら行くわよ」
 僕の腕を掴むと、アカネはゆっくりと階段を上っていく。顔を上げると、そこはダンジョンではなく、水の噴き出す噴水の池のような場所だった。あふれ出る水が地面を伝い、足元に流れ込んでくる。少し苦手な場所だな、と思いつつアカネと僕は辺りを見渡した。池のすぐ近くに、薄紫色の大きな真珠が転がっている。僕が撮りに行こうとすると、腕を力いっぱい掴まれた。後ろを振り向くと、「迂闊に歩くんじゃないの」のと睨みつけられた。
 アカネの隣まで下がると、また辺りを見渡した。目立つ岩も無ければ、どこに何がいるというわけでも無さそうだ。
「…………僕が取ってくるから、アカネはここに居て」
「分かった」
 そういうと、真珠に近づき、そっと手に取ろうとした。その時だった。目の前の池の違和感に気付き、ゆっくりと池を覗き込む。もや、もやと。何かが浮かびあがる、と同時に、池から大量の水が噴射された。
「え?」
 水は僕めがけ飛んでくる。体に水が叩きつけられると、その威力に気付いた。ただの水ではなく、ポケモンの体内から出された水だということ。その威力に腹を突かれ、そのまま吹き飛ぶ。そして、階段付近の壁に叩きつけられた。
「ぐぁ……っ!!」
「なっ……」
 アカネが声を上げる。勢いで閉じてしまった目を開くと、池から出てきたのは普通より少し大きめ、といえるであろうアリゲイツだった。凶悪な顔で僕たちを見ながら、にやにやと笑っている。依頼書に書いてあった「お尋ね者」とはおそらくこいつの事だろう、と思った。そしてここのポケモン達が怯えていたのはおそらくこいつだ。
「誰が来るかと思えば、弱そうな探検隊か。このダンジョンに骨のある奴ぁ居ねえな」
 そういうと、ペッと唾を吐く。一匹でこのダンジョンのポケモンをここまで追い詰めたのだ。強い他無いだろう。
 どうする。いったん引くか、引かないか。このまま戦い続けるなら、戦闘不能になることも考えなければならないし、死亡する確率だってあるにはある。
「一つ聞きたいんだけど。下の階にポケモンがいなかったのはあんたの所為?」
「嗚呼、おそらくな?上の奴はぜーんぶ下に逃げちまった。」
「…………真珠、返してもらえない?持ち主に頼まれてんのよ」
 立ち上がると、体についた水を払い、アカネの隣に歩いた。アカネはどうにかこうにか、戦わずに交渉で真珠を取り戻そうとしているらしい。それが懸命と見えたが、アリゲイツは意味ありげににやにやとすると、アカネにこう言った。
「なら駆け引きしようぜ。俺は戦わずにお前らにこのまま真珠を渡すとしよう。お前らは自分達の所属しているギルドの情報を渡せ。俺らのような奴は迂闊には近寄れねぇ」
「で?ギルドの情報なんか収集してどうするっての?」
「一匹一匹潰すのさ。誰も居ない場所で、な」
 アリゲイツの顔は、殺意に満ちていた。狂っている、そう思った瞬間に、アカネの「電気ショック」がアリゲイツに降り注いでいた。アリゲイツは軽々とその電気ショックをよけると、一瞬顔がぐにゃりと歪む。これは不味い、と思いアカネの方に走ると、彼女の腕を掴み思い切り右に引き寄せた。
 ちょうどアカネが居たその位置にアリゲイツの「水の波動」が落ちた。抉れた地面を見て、アカネも目を見開く。
「優しくしてやりゃ調子乗りやがって!!!」
 僕めがけて水鉄砲が飛んでくる。よけるにしても間に合わない、そう思い腕をクロスさせてガードする。どれくらいのレベルのお尋ね者かは知らないが、ペリーが言った通りになった。僕達にはレベルが高すぎる。
「あんたちょっとでも足止めして!!!」
「え、あ、うん!」
 アカネはそう呟くと、自分は肩をぶらりと下げてただ立っているだけだった。とにかく何か策があるのだと思い、僕はアリゲイツに向かって「ひっかく」の連続攻撃。何度も何度もかわされ、アリゲイツの顔は「余裕」その一筋だった。
 火の粉を繰り出すと、アリゲイツの頭にもろに直撃するが、その煙とともに水鉄砲が僕の方に飛んでくる。
 当たる、不味い……そう思った時、目の前に何かが飛び出してきた。
「あ、アカネ!!ってうわっ」
「くっ!!」
 二人同時に水鉄砲に当たり、壁まで吹き飛ばされる。僕を下にして彼女は苦しそうに目をつむっていたが、あの時のことは忘れないだろう。
僕が彼女の体を強くゆすり、彼女が目を開いた時、彼女の目が赤色に輝いていたこと。

ミシャル ( 2014/06/19(木) 17:48 )