遺跡の欠片-14
「アカネ、ちょっと来てよ」
夕食が終った後、部屋の隅に座るカイトにこっちに来るよう手招きをされる。別に人に来させる位なら自分が来ればいいのに、と捻くれたことを考え、だるいながらもカイトの元へと歩いた。今まで以上ににこにこ、にこにことしているカイトを若干気味悪く思いながら「何なの」と腰に手を当てた。
「えへへ、ちょっと見せたい物があるんだ」
そういうとカイトは先ほど夕食が終り、自宅から持参したと思われるバッグを漁り始めた。そこから一欠片の石を取り出すと、地面に優しく置いた。
「えっとね、これなんだけど」
「なにこれ。石じゃないの」
「そう、石。僕が前、海岸に流れ着いたのを見つけたんだ。一見ただの石だけど、よく見ると何か変な形の印みたいなのがない?」
「………ほんとね。何かが欠けたような模様。この形だと大きな模様の中心部か何かじゃないの。」
「お、アカネも興味ある?これ、実は僕が探検隊を目指したきっかけなんだ。勝手に遺跡の欠片って名前をつけて大事に持ってるんだけど、いつかこの欠片の意味を見つけるのが、僕の夢」
相変わらずそのままのネーミングセンスだな、と思い「はは」と苦笑いすると、目を輝かせ淡々と話していたカイトの顔が急に暗くなる。特に不味いことを言った覚えもないが、何かを考えるようにそっと顎に指をあてた。
「………でもね、僕弱いんだ。今日絡んできたあの二匹よりは強い自信はあるけど、それでもまだまだ弱いんだ。アカネみたいに、強くないんだよ」
遠まわしに、何故何もしていないのに強いのか、問われた気がした。しかし、正直なところ私だって強くはない。むしろこの世界においては弱い方だろう。ピカチュウには必須と言える電撃も使えない、技の使い方も分からない。そんな状態で何が強いのか。カイトは少し勘違いをしているようだ。あれはただ、相手が超と言えるほど弱かっただけだ。別に私は強くもないし、逆にアレ程度でもまともに戦えば負けていたかもしれない。
「馬鹿。私は強くないし、あんたはきっと弱くは無い。そもそも始まったばっかなのに何愚痴こいてる訳?だっさ」
「えへへ、そうだよね。ごめんごめん。これから経験を積んで強くならなきゃ!もしかしたらこの先アカネに迷惑かけるかもしれないけど、一緒に居てくれると嬉しいな」
「だ、だから!!あんたなんでそんな事簡単に言えるのよ。私みたいなよわっちぃの直に捨てたくなるに決まってる。私は喜んで出ていくけどね」
「アカネだって、色々と僕に気使ってくれてるじゃない。アカネからしたら一回か二回かの事かもしれないけど、僕嬉しかったんだからね」
だから、何故そんな事を恥じらいも無く言えるのか、ということを言っているのに、彼は全く気付いていない。
しかし、不思議と彼の事を嫌いになれない自分がいるのだ。こんなタイプは大の苦手ない筈なのに、不思議ときらいになれない。
と言って、好きというわけでもないだろう。ただ、そんなに色々といわれると、やはり好感度が上がってしまうのも事実だ。嗚呼、自分が単純すぎて情けない。いいのだ、気に入らない事があれば、すぐにチームを解散してしまえばいい。私に主導権はあるのだから、その後はカイトに付き纏われないようなところで、自分を探せばいいのだ。
「そろそろ寝よっか。」
そんなカイトの言葉にコクンと頷くと、横になって毛布を体に掛けた。
少しだけ、明日が楽しみになっている自分を憎みながら、眠りに就いた。