ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜 - -序章-
彼女は人間-7
「そっか……じゃあ、アカネは元々人間で、気づいたらあの海岸で倒れてたって訳かぁ。でも人間って確かおとぎ話の中の生き物だったよね。本当にいたんだなぁ」
「さぁね。ポケモンと人間はある意味同じような生き物だとも言えるし、そうでないとも言える。ポケモンも謎が深いけど、人間も同じように進化してあんたの知ってるような姿になったのよ。」
 わざとらしくシャリ、と林檎を齧った。木に寄りかかり、僕と彼女は林檎を弄りながら少しおかしな話をしていた。彼女の言うことを信じるとは言った物の、彼女が本当は、物語の中に出てくる人間という生き物で、気が付いたらピカチュウになっていたというのも“普通の”ポケモンからすれば、信じがたい話だった。今、自分にできることは受け入れることだろう。そうしないと、僕はただのうそつきになってしまうし、僕の話もきっと聞いてもらえないだろう。
 少ししつこく名前を聞いたところ、彼女の名前は「アカネ」というそうだ。少し恥ずかしそうに自分の名前を言うアカネは、頬を茜色に染めていた。「そうなんだぁ、ぴったり!」と、褒めたつもりだったのが、逆に怒らせてしまったのか、アカネは小さな手で僕の頬を背伸びをしてベシベシ叩いていた。
「………私が話せることはこの位よ。はい、次どうぞ」
「えっとね、僕、カイトって名前なんだよね。というかさっきの話でわかったかな?」
「……まぁ。」
「担当直入に言うけど、アカネ!!!」
「は?」と疑問符を頭に上げるアカネに向き合い、手を取ると唾を飲んで、少し言い難い頼みごとを吐きだした。
「僕とずっと一緒に居てくれる!?」
「………は?………………えっ」
 「よっしゃ言ったぁ!!」と心の中でガッツポーズをしていると、アカネの手がブルブルと震えているのを感じた。どうしたんだろう、と顔を見ると、どんどんとアカネの顔がピンク色に染まっていく。
「は、は、はぁ!!?ば、馬鹿じゃないの!!?なんでそんな、は!?」
「僕と探検隊を結成してほしいんだ!!!」
 内容を言うと、途端にアカネの目が点になった。「へ?」と間抜けな声を出すと、暫く黙りこみ、顎に指を添えて何かを考え込むそぶりを見せる。
 暫くそのままだったので、僕も声を掛けなかったが、再びアカネの顔が桃色に染まり始めた頃、また体が震え始めた。その次の瞬間
「ま、ま、紛らわしいこと言うんじゃないわよ!!!ばぁか!!!」
「いったぁ!!!」


ミシャル ( 2014/06/12(木) 22:07 )