ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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-序章-
黄色い背中-4
「せっかくだけど、遠慮する。」
 フイ、と僕から顔を背けた。「え」とか「どうして、」とか、動揺しか浮かばなくて、とてつもなく焦る。そうだ、この子はもとから僕になど少しも興味が無かったのだ。僕が一方的に気になっていただけだったのだ。どうしよう、それでは今考えていることを実行できないではないか。どうにかして興味を持ってもらわなければ……
「で、でも。色々知らないと面倒なこともあるし、ここらへんじゃ見ない顔だからきっと皆ピカチュウの事気になっちゃうよ」
「でもあんたが一緒にいて弁解してくれるの?その方がよっぽど目立つじゃない。とにかくさっきは私まで巻き添え食らったから協力しただけ。もう関わらないで」
 見ている限りだととても頭が良いように見える。淡々とそういうピカチュウをただ唖然として見ていた。僕とすれ違い、背中側を歩いていく彼女はすでに独立した雰囲気を放っていた。僕がやることは、唯一つだった。
 動かないふりをし、彼女が海岸から姿を消した後、急いで彼女の後ろを追った。彼女が、いや、彼女じゃなければできないのだ。僕と一緒に歩いて欲しい。それは、彼女にしか思うことができない感情だった。
 『トレジャータウン』の方へ向かっていくピカチュウを物陰に隠れながら追った。時折ちらちらと後ろを振り返ってはまた進み始める彼女に心臓がとてつもない大きさで波打った。見つかるのは怖いが、せっかく良いポケモンを見つけたのだ。逃す方がもっと辛いだろう。
 そんなことを考えているうちに、彼女は僕の方を向くと、一目散に駈け出した。ばれていたのか、そう思い後を駆け足で追う。彼女は道行く人に何かを尋ねているようだったが、距離が離れていて聞き取ることができない。やがて彼女の足は、トレジャータウンを抜け、辿りついた場所は、
「け、警察……?」
 ここら辺でも大きな建物。少し前に作られたと思われる警察所だった。見張りをしているカモネギ達に何かを伝えているが、まだ聞き取ることはできなかった。その後、カモネギ達が所内に入り、何か言い始めたので何をし始めたのか、と思い身をそちらに傾ける。
「あっ!おまわりさんあいつです!!」
 そういうや否や、彼女の指はまっすぐ僕に向けられた。思わず「僕!?」と自分を指さし叫ぶと、所内からコイルやレアコイル達が飛び出してくる。まさか、と思い背を向けたその時だった。
「アチラノジョセイガ、オマエニストーカーヲサレテイルトヒガイヲウッタエテイル。ネンノタメ、ショマデゴドウコウネガイタイ」
 聞き取りにくいカタコトで僕の前に立ちはだかるコイルやレアコイル達に、なすすべもなく。いつの間にか、彼女は警察署の前から姿を消していた。


ミシャル ( 2014/06/12(木) 01:24 )