ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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十一章 幻の大地
ありがとう、ごめんなさい‐182
 * * *

 『虹の石船』本体である遺跡では、二匹のポケモンが激しく争い続けていた。リオンとへケートだった。  
 本来なら、彼らも『出会うはずのないポケモン同士』なのだ。一匹がもう一匹に我武者羅に突っ込み、弾き飛ばされてはまた同じことを繰り返す。それはまるで、繋がっていた糸が切れそうになっていても、無理やりつなぎとめているかのようだった。
 リオンが体中に切り傷を作り、足や腕に負傷しながらへケートに攻撃を繰り出していく。何度攻撃を当てられても、リオンがへケートへと迫るスピードは落ちなかった。本来ならばこんなことはありえないだろう。体力の限界はとっくに迎えている筈だった。床に転がっては直ぐに飛び上がり、『真空波』や『はっけい』を当ててこようとする。
 早く遺跡の下に行かなければならない。そう思っても簡単にはいかせてくれなかった。 ――――『テレポート』を使うか。
 へケートの頭の中にふとそんな考えが浮かんだが、容易ではない。テレパシーを使うよりよほどエネルギーを消費するのだ。
 そして、テレポートを使えるほどのエネルギーは、今のへケートには無い。そもそもエーフィが本来使う事の出来ない筈の技だった。過去のへケートならこの状況でもなんとかできたかもしれないが、今はブランクが大きすぎて取り戻すことが出来そうにない。
 自分の足で行くしかない。
 再び飛び掛かってくるリオンを『サイケ光線』で狙い撃った。見事にリオンの体に命中し、再びリオンは地面へと叩きつけられた。傷だらけの汚れだらけ……ボロボロだ。しかし、またリオンは起き上がってへケートの方へと走り込んでくる。『サイコキネシス』で弾き飛ばした。
 リオンの動きがようやく落ち着いた。スピードが落ちてきたのだ。へケートはサイコキネシスでリオンの体を再び縛り付けたが、その直後嫌な予感が体の底から湧き出てきた。へケートは遺跡の下へと目線をやり、即座にリオンを勢いよく遺跡の壁に叩きつけた。リオンが反撃してくるかなど気にしてはいない。へケートの目は遺跡の下に釘付けだった。
 階段からアカネとカイトが上がってくるのが見えた。ルーファスは時空ホールへ入ってしまったのだ、と察すと、へケートは暫く体の動きも頭の動きも停止する。じわじわと感情が膨れ上がってくるのを感じながら。
「リオン!!」
 遺跡の上まで上がって来たカイトは、へケートに飛び掛かっていくリオンを見つけて叫ぶ。へケートはその声に我に返り、『サイコキネシス』でリオンを払いのけようとする。しかし、アカネがそうはさせまいと『十万ボルト』を放つ。致し方ない、へケートは攻撃を中断し、体をグッと後ろに引くとそのまま地面を蹴る。一メートルほど先で攻撃を空回りさせたリオンが地面にうつぶせになって倒れ込んでいた。
 アカネはリオンの元へ向かうと、彼の体に手を当てた。酷い痛みや疲労感があるのを感じ、どうにか治すことが出来ないものかと自分自身に念じてみる。この状態では時限の塔に向かうことは出来ないだろう。
 カイトはアカネがやろうとしていることを察し、へケートの方へと向き直った。ルーファスを『失った』ショックというものがやはり顔に、雰囲気に浮き出ていた。
「君。復讐、できなくなったけどどうするんだい?」
「………………………」
「……?」
 へケートは軽くうつむいたまま口をつぐみ、そのまま喋らなくなった。カイトは警戒するように彼女をじっと観察する。何を仕掛けてくる気配も無く、ただその場に佇んでいるだけのように見える。
 ふとへケートが顔を上げた。その瞬間、思わずカイトは息を飲む。彼女の目が明らかに可笑しくなっていた。先ほどまでは理性的だったのだろうか。目がクルクルと様々な方向へ泳いでいる。というよりかはグリ、グリと音が出そうな勢いで動いていた。恐怖を感じ、カイトは目を細めて睨みつける。
「ルーファス……がだめなら……誰だろう…………アカネ…………アカネかな……」
「え?」
 へケートの目が一直線にアカネを捕えた。アカネは青い目を大きく見開き、リオンの治療に集中しているところだった。リオンの体からは徐々に傷が消え、彼の呼吸も柔らかな物に変わっていく。本当に真っ最中と言うところで、へケートはカイトになど目もくれずアカネの方へと駆けだした。
 彼女が何故そういう結論に至ったのかは分からない。カイト達が考えもしないような場面で何かがつながったのだろうか。とにかく行かせるわけには行かない。カイトは『竜の怒り』をへケートへと放った。青い光がへケートを追って弧を描き、それはへケートのスピードよりもはるかに速い。『竜の怒り』は、へケートの真横から突きさすようにして突撃した。
 へケートの体が壁側へと吹き飛ばされる。その隙にカイトはアカネ達の目の前に立ち、彼女から守る様にして睨みつけた。へケートは倒れ込んだ状態からふらりと立ち上がると、またゆらゆらとカイト達の方へ歩み寄ってくる。目的はアカネ。何故アカネを狙うのか……やはり未来で共に過ごした者だからだろうか。
「……虹の石船さえ動かしてしまえば、どうにかなる筈だ……」
「え?」
 カイトの後ろで横たわった状態のリオン、そして体に手を当てて治癒を施しているアカネ。リオンはゆっくりと目を開け、小声でそんなことを言った。完全にではないが傷も治りかけ、体も楽になった。リオンはカイトがへケートを足止めしている間に、アカネに体当たりの作戦を申し出た。作戦と言うべきかも分からないような、簡単で単純な物。しかし、実現は難しい。
「……いいか?」
「けど、あんたは……あんたはどうなんのよ……」
「言ってる暇はない。あいつは確かにヤバい奴だが…………今のあいつにルーファスとやり合ってた頃程の力は無いはずだ。
 俺が何もしなければ、このままへケートに足を引っ張られ続ける。俺が時限の塔へ向かっても、きっと足を引っ張ってしまう」
「そんなこと…………」
「あるんだ。多少だるいが今なら戦える。カイトも今のところまだ余裕だ。カイトがもう一発技を当てることが出来次第…………俺は遺跡の下でへケートを抑え込む」
「……分かった……ありがとう。ごめん……」
 そんな会話の向こう側では、へケートとカイトの攻撃がそれぞれ飛び交う。へケートのサイケ光線を避け、カイトは『火炎放射』を広範囲にまき散らした。一部激突するが、火炎放射で飛び散った炎がへケートの体をじりじりと焼く。攻撃されている最中であっても『シャドーボール』を三つほど作り、それぞれカイトの方へと撃った。そのうちの一つがカイトにモロ直撃しそうになるが、カイトは『炎のパンチ』を思い切り振り上げると、シャドーボールを相殺する。
 そして再び『火炎放射』を繰り出して、へケートへと命中させた。
「!!!」
 今だ。と、リオンは勢いよく起き上がる。素早くへケートの所へと走り込み、カイトの追い越すと彼女の首を力強く掴み上げた。
 速い。へケートは目を細め、『サイコキネシス』でリオンを拘束しようとするが、リオンは素早くバッグから『鉄の棘』を取り出すと、へケートの腹部を切り裂き、同じ場所を蹴り上げた。流石に痛みでたじろぎ、へケートはサイコキネシスを解く。そのままリオンは遺跡の下へと飛び降りた。
 状況がよくわかっていないカイトをアカネは急いで遺跡の中央へと引き寄せ、『遺跡の欠片』を嵌め込むよう指示を出す。カイトは遺跡下へ降りてしまったリオンの事で躊躇するが、アカネの表情からなんとなく察しがついた。
 カイトはその直後、迷うことなく遺跡の欠片を窪みの中に嵌め込んだ。上手くハマらなかったが、方向を変えて押し込んでみるとぴったりと収まる部分がある。遺跡の欠片が完全に嵌った瞬間に、足元がグラリとゆらつく。中心から多少離れたところから円を描いたように光が吹き出し、ゆっくりと『虹の石船』は浮遊し始めた。
 アカネは『虹の石船』について書かれた、最初にルーファスと読んだ石板をもう一度視界に入れた。アカネにも、少し読める部分がある。
 『鍵の所有者』が虹の石船となることを許した時、『時限の塔』へと船は向かう……。大雑把にだが、アカネはその一文をそんな風に解釈した。カイトが時限の塔へ向かう意思があるからこそこの船は動いている。カイトに未練はないのだ。
「リオン!ぜっったい、帰ってくるから!!負けないでよ!!」
 どんどんと離れていく遺跡に向かって、カイトはそんな風に叫んだ。リオンに届くように、思いを込めてそう言ったのだ。
 アカネは何も言うことが出来なかった。ここでリオンと分かれるという事は、もう二度と彼と会うことはできないという事なのだ。カイトはそれを知らない。だから『また会おう』という意味合いの言葉を堂々と言える。しかし、アカネはそれを知っているからこそ、何もいう事が出来なかった。出来ることがあるとすれば、リオンと話し合っている途中で言った『ありがとう』という言葉を、もう一度呟くことだけである。
 何を言おうと考えても、アカネにとってそれらの言葉は全て『さようなら』という意味になってしまう。だから、迂闊に口に出すことが出来なかった。
「っ、がんばれよ、お前ら!」
 リオンはへケートを押さえつけながらそう叫んだ。直後、リオンの体は彼女の攻撃により階段側へとふっ飛ばされる。階段に体を打ち付け、所々から激しい痛みを感じたが、へケートが何をどうしようとしたところでもう遅い。アカネ達は空の上。ルーファスは未来に居る。
 へケート自身が一番興味が無い、嫌いだと語った男しか、目の前には存在しないのだ。

 * * *

 ―――――……一方。
 世間では、シャロットが襲撃された事件があちらこちらに様々な形となって飛び交っていた。新聞であったり言葉であったり、電話や通信用の不思議玉を通して誰かに伝わったり。
 刑務所内はかなりの騒ぎになっていた。数年前に大事件を引き起こしたとされるポケモンが、今回再び大事件を引き起こした。警察の名誉にかかわることだ。警官たちの落ち着きのない様子に、ドナートよりも先に警察署へ戻ったラルクは困惑していた。事の重大さを改めて思い知らされる。ラルクはシャロット会うために、彼女が匿われている部屋へと足を向ける。隔離施設に居た時とは比べ物にならない程の警戒態勢で警備が行われているらしい。そんなピリピリとした空気を感じながら……というのも、相当シャロットの負担になるはずだった。
「…………あ、あれ。ちょっと……」
 署内を歩いていると、ラルクは一般のポケモンが警察署の中をフラフラと徘徊しているのを目にした。急いでそのポケモンの目の前に回り込み、声をかける。知っている顔だった。
「君は確か……セオ・スカイウォーカー……だっけ」
「あ、はい……あれ。えーと、ラルクさん?」
「何故こんなところに?シャロットさんの面会ですか?」
「あ、うん……」
 フラフラとしていた一般のポケモン……コリンクだった。シャロットの知り合いで、度々面会に訪れていたポケモンだ。何度かラルクが施設まで案内したことがあった。以前シャロットと探検隊チームを組んでいたが、色々揉めて解散したらしい。彼曰く、自分はシャロットから嫌われている、とラルクは聞いたことがあったが、そんな彼でも何度か彼女の元に訪れているという事は、そこまで悪い関係ということでもないのかもしれない。
「シャロット、大丈夫ですか。いや、色々酷い話聞いたもんだから……てか、レイセニウスさんはそれ聞いた途端現場の方行っちゃって。多分迷惑かけてると思うんですけど」
「あー。まぁ大丈夫ですよ。彼、なかなかいい『目』持ってると思うし……今回のことだって、レイセニウスさんの考えはまさにドンピシャでした」
「う……確かに。気持ち悪い位当たってましたよねぇ。
 で、シャロットと面会できるんですか?もしできないんだったら、えーと、これ。渡しといてください」
 セオは、体にかけていたカバンをどうにかこうにか床に下ろし、紐の部分を口で持ち上げてラルクの方に突き出した。受け取る為に身を屈めると、どこかで嗅いだことのある匂いがした。
 これは確か……パッチールカフェのオレンジュースの香りだ。ラルク自身はあまり行ったことは無いが、かなりおいしかったので良く覚えていた。
「こういう時でも飲みやすいかな、と……まぁ、とにかくそういう事なんで……」 
 まだ面会の合否も行っていないのに、セオは身を翻して早々に帰ろうとした。ラルクはそんな彼を引き留め、首を横に振る。
「いや、面会自体は出来ます。セオさんは警察でも知ってるポケモンが多いと思うので、結構すんなりいくと思いますし……」
「…………いや、でも…………僕、また無神経なこと言って、なんか……うん、すいません。とりあえず今日のとこは、帰ります」
「いや、でも。きっと知ってる顔が一緒に居ると安心すると思いますよ、シャロットさん」
「いや、大丈夫ですホント。明日にでもまた来ます。お騒がせしました」
 こくんと頭を下げて、セオは身を翻し警察署の出入り口の方へと戻っていった。ラルクはそんな彼の後姿を見ながら、シャロットの顔を浮かべていた。
 確かに、ラルクの記憶では……セオは、少し小言が多かったり、物事に対する偏見や思いこみが激しかったりするところが有ると思った。なかなか他者の意見を聞き入れようとしない。と、前にシャロットが愚痴っていたような気もしないことは無い。
 セオ自身、それを自覚して気にしていたという事なのか。とにかく、ラルクは『オレンジュース』を届けるために、シャロットの元へと向かおうと再び歩き始めたが、そこで足を再び止める。
(……そういえば、飲食物の差し入れって良かったっけ……?)
 シャロットは命を狙われている。そんな中で外から飲食物を持ち込み、彼女の体内に入れてしまってもいいものか。そこらへんどうなのか、ラルクは立ち止まって悩んだ。丁度そこに他の警官が通りかかったので、少し引き留めて相談してみることにした。幸いにも、相手はそこまで忙しそうではない。
「ふうん。そういうことですか。なら、ちょっと待っててください」
「はい」
 ラルクが声を掛けたのはメスのオタチだった。丸い目を見開き、ギラリと光らせる。『見破る』だった。ラルクはそんなこともできるのか、と深く感心する。ポケモン人生二十ウン年だが、初めて知ったことだった。
「異物混入は無いかと思います。お疲れ様です」
「ありがとうございました」
 ラルクは頭を下げ、オタチはゆっくりと通路の曲がり角で姿を消した。ラルクはジュースに顔を近づけて匂いを嗅いでみたが、特に妙なものも感じられない。いいだろう。そう判断し、再びラルクは歩き出す。今度こそシャロットのいる場所へ向かおうとしていた。分厚いドアの前に二匹のポケモンが怖い顔をして立っている。警備員だ。彼らはラルクが警察のポケモンだという事を確認すると、ゆっくりとドアを開く。なんだかとても重い音がした。匿われているというよりかは、まるで監禁されているようだ。部屋に入って一番に見えた白い壁は、なんだかやたら分厚い気がした。とても大きな威圧感を感じる。
 本当に、こんなところに居たら気が滅入ってしまうな……と思いつつ、ラルクはシャロットの姿を探す。と言っても探す必要などなく、普通に窓の外を眺めていた。これまた頑丈そうな鉄の棒が十本窓の枠に突き立てられていた。まるで牢屋である。
「シャロットさん」
「あ、ラルクさん。お久しぶり……という程でもないですかね?」
 声色はそこそこ明るめではあったが、顔が全く笑っていなかった。苦々しく笑顔のような物を作り、ラルクの方に顔を向ける。目の下の毛が濡れて痕になっているのを見てなんとなく気持ちが落ち着かず、ラルクは顔を一瞬逸らす。
「そうですね。………………えーと……
 さっき、セオさんが来ましたよ。差し入れ持ってきてくれたみたいです」
 そう言って、セオの持ってきた鞄を机の上に置いた。オレンジュースの入ったコップを出すと、鞄だけ預かってコップとストローを机の中心に置く。
「あ、カフェのジュースだ。すっかりご無沙汰だったから、嬉しいです」
「そう、ですか」
 シャロットはまた苦々しい笑顔を作った。声色も、嬉しいのは嬉しいが、それを態度に出すことが出来る程余裕はない様だった。
 それもそうだろう。怖かったはずだ。ノギクも、警備をしていた二匹も重症でホスピタルに居る。自分だけほぼ無傷というのも、居心地が悪いだろう。目の前にいるシャロットは、包帯などは特に巻いていなかった。
「お疲れじゃないですか?聴取、なかなか厳しかったでしょう」
「嗚呼、はい。結構容赦無くて、本当に、疲れました」
 目が虚ろだった。自分はここにいるべきなのか、それとも一匹にしておいた方が良いのか。ラルクにはよくわからず、よくわからないまま、妙に気まずい空気の中二匹は向かい合っていた。
 すると、不意に部屋の扉が開かれた。どうやら新しい客が訪れたようだった。相変わらずむすっとした顔の警備員はラルクに対して手招きをした。シャロットに一礼すると、ラルクは警備員の元へと向かう。
「新しいお客様です。どうやら、シャロットさんと顔見知りのようで……確認を取っていただけますか?」
「分かりました」
 そう言って部屋の外へ出る。すると、そのポケモンはすぐ目の前に居た。
 大きな六つの尻尾と、クリンと丸まった前髪。くりくりとした目……シャロットと同じ種族。ロコンだった。体の色がシャロットより少し薄く、彼女よりかなり年は上のようだった。おそらく色がほんの少し薄いのは、年を重ねたことにより体毛の色が褪せているのだろう。
 となると……親類に当たるのだろうか。
「えっと、事前に連絡は……」
「すいません、急いでいたもので……シャロットの母です。ゼノヴィアといいます。娘と会わせていただけますか?」
「えぇと……いいですか?」
「なら本人に確認を……我々が見ていますので」
「分かりました。では、こちらへ」
 シャロットの母と名乗るロコンは、顔立ちも佇まいもなんとなくシャロットによく似ていた。おそらく、シャロットの母で間違いはないと思われた。ゼノヴィアを連れて部屋の中へ入ると、後ろから警備員たちの重苦しい視線を感じる。同じ失敗を二度と繰り返さまいという心がけなのは分かるが、それではいざ犯人が捕まる前にシャロットの胃が潰れてしまう。
「お母さん!?」
 シャロットの驚いたような声が部屋の奥から響いてきた。彼女は今日一番の反応を見せながら、ゼノヴィアとラルクの方へ駆け寄ってくる。どうやら間違いないらしい。そこに、警備員が割り込んできた。
「どうやら、お母さまで間違いないようですね。一応入室者の義務として、足形を頂戴できますか?」
「え?あ、はい……」
 そう言うと、警備員は薄っぺらい粘土板のような物を床に敷いた。その上にゼノヴィアは足をのせると、スタンプするように強く押す。うまく足形がついたところで、警備員は一礼すると粘土板を持って部屋から退散していった。
「お母さん、何でここにいるの?話聞いてきたの?」
「え、ええ……施設が襲われたって聞いて……」
「そ…………っかぁ」
 二匹のロコンはそう言って鼻をこすり合わせた。シャロットの目にはじわじわと涙がにじんでくる。暫く二匹にした方が、シャロットも空気が抜けるかもしれない。そう思い、ラルクは早々に退散することにした。
「……じゃあ、僕は、失礼します」
「……あ、ああ……ラルクさん」
「はい?」
「来てくれて、ありがとうございます……」
 シャロットは今日初めて、しっかりとラルクに微笑みを見せた。
 それを見ると、何処か満足げにラルクは部屋を出て、重い扉を閉めた。今はあまり、心配する必要はないだろう。どこかそんな安堵を抱いて、ラルクは再び現場へと足を向けた。
 
  

 

■筆者メッセージ
気まぐれ豆雑談

作者「好みの男性教えてちょんまげ」
アカネ「え?……いやだから、元人間なのよ。好みの相手も人間でしょ?」
作者「作者が分かる範囲で!俳優とかでも良い!教えて」
アカネ「いやよ」
作者「誰にも言わない!!だから教えて!!」
アカネ「まぁそんな大したことでもないから言ってもいいけど……」
作者「まさかの言ってくれるんだ…………」







アカネ「…………コジ●ウの俳優」
作者「」

ミシャル ( 2016/08/20(土) 22:52 )