証が選んだ者‐169
* * *
あたたかな日差しが、窓から柔らかく差し込んできた。まだまどろみの中で、カイトは『もっと寝ていたい』という気持ちがどうにも拭い去ることが出来ず、布団の中でなにやら蠢いていた。
先ほどまで、彼は夢を見ていた。特に記憶にも残らないような夢ではあるが、怖さや君の悪さは残らない。普通の、ごく普通の幸せな夢だったようだ。そんな感覚を忘れたくなくて、カイトはギュッと毛布を握りしめた。
「カイト。朝」
突如、その毛布はニュートラルな声を発する女によって引き剥がされた。嗚呼、朝だ。この時やっとそのことについてはっきりと意識した。そうだ、ゆっくり眠っていちゃいけない。それを思い出し、カイトは慌てたようにベッドから体を起こした。床に伸ばしていた足の向こう側で、アカネが毛布をズリズリと引っ張り上げながらカイトに声をかけている。
「おはよう、アカネ」
「……おはよう」
まずは朝の挨拶。アカネに焦った様子は無い為、まだ朝礼までには時間がある。カイトはそう判断すると、ちらりと時計を盗み見た。うん、まだ間に合う。
どっこいしょと起き上がり、とにかく今日の支度を始める。バッグの中に入っている多種多様な木の実(ほぼアカネが食堂からくすねてきたもの)を軽く口の中に放り込み、力なく口の中で噛み砕いた。カイトはまだ半分眠っているような状態で目をこすりながら、バグの中に入った道具を選別し始める。アカネはカイトの傍らに転がった林檎を拾い上げると、部屋の隅にたたんであるタオルで軽く拭いてリンゴの表面を齧った。じわりとした甘さが口の中に広がる。満足したように軽く鼻を鳴らすと、自分のバッグの中を漁り始めた。
「結局アカネの方が先に起きてたね」
「夜中に一度も目が覚めなかったわ。睡眠の種、結構便利よね」
アカネは満足げにそういうと、自分のバッグを肩にかけて立ち上がった。カイトも後を追うようにして、道具の選別を終えてそこそこ軽くなったバッグを肩にかけてアカネに続く。二匹は急ぎ足で朝礼場へと向かった。
「……えー。という訳で、依然として幻の大地に関しての情報は不足したままだ。
しかし、私たちは諦めないよ!全てが手探り状態のままではあるが、皆頑張って今日も調査に取り掛かろう!」
朝礼場にメンバー達全員がそろった時点で、ペリーは片方の翼を大きく掲げて勇ましく声を上げた。キースの件はとっくに吹っ切れているようで、ペリーのその発言には一瞬の迷いも見られない。『幻の大地』を発見するという目的は、着々と全員の心に沁みついてきていた。ここまでくれば誰も弱音を吐く者はいない。『おぉー!』と、全員が声を掲げた。解散の命令が出され、それぞれいたるところへと散らばって行こうとしていた時だった。
「今日はどこへ行こうか?」と、カイトはアカネに首をかしげつつ声をかける。その途端、一番最初に仕事場へと到着したトランが声を上げた。トランの仕事はギルドの入口の見張り番。トランが声を上げたという事は、何者かがギルドにやってきたという事である。普段からよく来客のあるギルドな為に、普段から皆そんなに気にしてはいないのだが、早朝だという事もあり何匹かが耳をそちらへ傾けていた。
「…………ジゴウ長老!ジゴウ長老がお見えになりました!」
訪問者の足形を見た後、トランは少しだけそのポケモンと話をしていたようだった。急ぎの用と聞いて、ゴルディは直ぐにギルドの門を開いた。アカネとカイトは、昨日自分たちがジゴウに頼んだことを思い出す。何か思い出したら連絡が欲しい。もしかしたらわざわざ直接伝えようとしてくれているのかもしれない。そう思い、二匹は軽く身構えるような気持ちでジゴウを待っていた。とはいえ、彼はかなり年を召している。梯子を一匹で下ってくるのは多少きついものがある。なので、まだアカネやカイト達と同じフロアにいたフラーやヘクターがジゴウを手伝いに向かった。
三分後、汗だくになった三匹が息を切らせながら朝礼場へと降りてくる。パトラスがジゴウを出迎えると、彼は安心したように鼻から熱い蒸気を吹き出した。
「はぁ、はぁ……やっと会えたわい……若いもんにはまだまだ負けんとおもっておったんじゃが、すっかり助けられてしもうた……恩に着るわい……」
「いえ、こちらこそ。わざわざ来ていただけたんですもの、当然ですわ……」
「ヘーイ…………」
笑顔を浮かべつつ、ヘクターやフラーの顔は汗だくである。どうやらジゴウ長老は体温が相当高い上に体重が重いらしい。若い二匹でもサポートするのは一苦労だった。ジゴウは体をゆっくりと地面に下ろした。それを見計らい、アカネやカイト、後ろで見ていたリオンはジゴウの方へと近づいていく。
「ジゴウ長老……もしかして、何か思い出したの!?」
「嗚呼、昨日の……そうじゃ。昨日の件で、少し思い出したことがあっての……ほんのちょこっとの事じゃから、参考になるかは分からんが……」
「大丈夫♪ほんの些細な事でも、手がかりに違いはないから」
パトラスがジゴウにそういうと、ジゴウは再び鼻の穴から熱い蒸気を吹き出し、とぎれとぎれに話を始めた。
「この二匹に話して、もう皆に伝わっておるかもしれんが、昨日……幻の大地へ行くには、何らかの『証』が必要だと言ったじゃろ?
その証について、少し思い出したんじゃ。
証、と言うのは、物質的なものじゃ。その証には、とても不思議な模様のような物が描かれている」
ジゴウが話を始めると、自然とその周りには『幻の大地』の調査に参加しているギルドメンバーたちが集まって来た。皆それぞれ彼の言葉に耳を傾け、その口から出てきたキーワードを必死に頭の中で考えている。
ジゴウが思い出したことというのは、本当にそれだけだった。『幻の大地へ渡る証というのは、物質的なもの。その物質には、とある不思議な『模様』のようなものが描かれている。
たったそれだけのヒントではあるが、何か道具のような物が必要なのではないか、とか。あるいは、その物質と言うのは場所を意味しているのではないか。など、たくさんの憶測が飛び交った。
「不思議な模様……でゲスか……という事は、普段あまり目にすることが無い感じでゲスかね……」
「何かしらありそうっちゃありそうだけどなぁ」
「……不思議な模様……って言っても、溢れすぎている気もするがな……」
リオンが皆の声に交じってぽつりと声にしたその言葉は、周囲を『確かに』と言わしめた。この世界には不思議な模様、不可解な物が溢れすぎていて、逆に一つを厳選するのは難しい。しかし、誰でも目にできてしまうような『不思議な物』なら違うという事だろう。ジゴウが指し示すのは、一体何なのだろうか。
皆があれじゃないか、これじゃないかと悩んでいる間、アカネやカイトもそれぞれ考えていた。幻の大地へ向かうために必要な『証』その正体を。
(…………見たことも無い模様……私は記憶が無いし、殆どが初めて見るものの場合が多いけど……今までが不可思議すぎて、絞り切れないわね。
そもそも、私が今までそれに遭遇したことがあるかどうかもわかんない訳だし。未来での記憶はあてにならない……辿れる場所まで辿ってみるか……)
海岸で目を覚ましてから、今に至るまで。かなり大きな出来事が多すぎて、細かくは辿り切れそうにない。印象に残っているところだけでいい。カイトが隣でウンウン言いながら考えている間、アカネは腕を組んで口をつぐみ、目を閉じると自らの記憶をたどり始める。
海岸で目を覚ました。カイトと出会った。エターとクモロ……ここで、初めてポケモンとして戦闘をした。カイトが追ってきて……探険隊を結成することになった。パトラスのギルドへと向かい、集団生活をしなければならないことにげんなりとし……チーム名はクロッカス。ふと思いついた花の名前。花言葉は…………ここは良いだろう。
自分達の部屋を紹介され、その後食堂へ向かった。そこで初めて、メンバーたちと顔を合わせた。
そして、部屋に帰ってからカイトが見せてきた妙な石……カイトの夢だという、へんてこなガラクタ。しかし、それは何か模様の一部のように見える、不可思議な……。
不可思議な……―――。
アカネの思考はここで引っかかった。そうだ、不思議な模様と言えば、カイトが見せてきた妙な石ころである。アカネは今の今まで忘れていた事実を頭の隅から引っ張り出す。カイトがある日見つけた夢。確か、カイトがこの大陸に来た直後に発見したという石。そしてその表面には、妙な模様…………。
アカネはまさかと思った。こんなに都合の良い話がある筈はない。しかし、『幻の大地』に行くには『証』が必要だという。証と言うからにはそれは、厳選された……選ばれた者が得る筈のものだ。皆が同じような物を見ていて、それに触れていれば、それは証ではない。
カイトの手の中にある。もしかしたら、世界にたった一つだけのものかもしれない。それが、あのヘンテコな石?そうだとしたら。
そうだとしたら『証』は、カイトを選んだという事か?
「……カイト。あんたの石」
「え?」
急に低い声で、アカネがカイトに向かって語りかけ始める。カイトは驚いた表情でアカネを見つめた。最初、アカネが言っていることの意味がよく分からなかった。
「……遺跡の欠片……そう。あんたが遺跡の欠片って呼んでる、あの石!!あの石の表面には確か……」
「あ……え!?あ、そうなの!?ちょっと待ってて!」
アカネとカイトが急に騒ぎ出すものだから、周囲のメンバーたちは『いったいなんだ?』と言いたげな目で、バッグの中を漁り始めるカイトへと視線を注ぐ。そんな視線にも気づかない程、カイトは慌ててバッグの中身をほじくり返していた。
バッグの中に入っていた小さな巾着のような物を手に取ると、カイトはそこから急いで石ころを取り出す。いったい何が出てくると思ったら、ただの石ころか?周辺がそんな反応を見せ始めた時だった。カイトの近くに居たジゴウが、突如叫びのような声を上げた。
「おぉ……それじゃ!!まさしく、その模様じゃ!わしが言っている『証』とは……その模様が記してある物質のことじゃ!」
周辺が騒めいた。アカネは『やっぱり』と言わんばかりに口を引き締め、カイトはジゴウの顔と自らの手の中にある『遺跡の欠片』を交互に見つめていた。
「おぬし、これをどこで手に入れた!?」
「いや、何処でって……偶然拾っただけと言うか、なんとなく物珍しかったから落ちてたのを拾って大切にしてるっていうか……ね?」
「すごいですわ!どうカイトの手に渡ったにしても、この石がカイトの手元にあるという事は、カイトは既に『資格』を得ているという事になるんじゃないかしら!」
フラーが興奮した様子で喋る。ジゴウは小さく首を傾げると、難し気な顔をしてやんわりと否定した。
「それは分からん……そうとも言えるし、そうとは言えないかもしれない……幻の大地に向かうには確かに『証』は必要じゃが、それを持つ者が選ばれし資格を持つとは言い切れんからのう……。
そもそも同じ模様だからと言って、それが『幻の大地』に通じるとは限らん」
ジゴウが少し後ろ向きな話を始めると、場の雰囲気は大分下がった感じになってしまった。そこに、またパトラスが火をつける。
「それでも、この模様が『幻の大地』に関係していることは間違いないよね!?それだけで十分!僕たちは着実に『幻の大地』へ近づいている。
………………ねぇ、ペリー。この模様は……僕たちは、この模様を見たことがあるよね?それも……随分と前に」
パトラスの言葉をきっかけに、更に場がざわついた。パトラスは、この模様をこれより以前に見たことがあるという。ペリーに同意を求めると、ペリーはすぐさまに頷いた。
「ええ……ここから北西に行った入り江の……『磯の洞窟』というところに。
し、しかし……しかし!親方様……」
「うん、わかってるよ。あそこにはかなり手強い奴がいるよね。
みんな聞いてほしい。以前……僕たちは、『磯の洞窟』という場所の奥深くで、カイトの持っているこの石の模様と同様の物を見た。だからおそらく、そこに行けば何かしら分かるかもしれない。
しかし、困ったことが一つある。そこには洞窟を住処とする相当厄介なポケモンが潜んでいる。正直、一筋縄ではいかない相手だということは間違いないんだ」
「……だが、そこに行かなければ事態は進展しないんだろ?なら、行くしかないんじゃないかな。その敵のことだって、予めそこに居ることが分かっていれば分っていれば注意を払える筈だ。ならば、行かない理由はないだろ?」
リオンが意を決したようにそう言い放った。パトラスはそれを聞いて、暫く考えるようにボーっと突っ立っていたが、やがて口を開いた。
「…………そうだね。行こうか、『磯の洞窟』に。
ただ、皆忘れないで。あそこは本当に手強い。僕やペリーでさえ苦戦した場所だ。今日の所は準備をしっかりと整えて、明日磯の洞窟へ出発するとしよう!」
パトラスが声を張り上げると、メンバーたちはそれに続いて歓声を上げた。次にやるべきことが決まったのだ。これすらも大きな第一歩に思えた。よくやった、と言いたげな顔つきでアカネはカイトに微笑みかける。彼は照れたように口元をにんまりと引き上げると、壊してしまわぬように、両手で優しく『遺跡の欠片』を握りしめた。
そんな活気に溢れたギルドのメンバー達を中心部で見ていて、ジゴウはふと思った。
嗚呼、『幻の大地』など、遠い昔に霞んでしまった御伽噺のように思っていた。自分が年を取ったのだろうか。若い未来のある者達にはかなわない。彼らは夢を背負って進んで行くのだろう。その先にはきっと、自分も遠い昔に憧れた『ロマン』があるのであろう。
何処にあるのかもどんな場所なのかも想像がつかない『幻の大地』というロマンを頭の中に描いていた。真っ白で美しい花園のような場所がふわりと浮かんできた。なんて単純なのだろう。しかし、それも悪くない。
「ほっほっほ。いやぁ、若いもんには敵わんわい。
頑張ってくれ!役に立てて良かった」
「とても有益な情報だったよ。色々な事が繋がって良かった。ありがとう、ジゴウ長老!」
「何の何の。ほっほっほ」
そう言うと、ジゴウはゆっくりと元来た道を戻っていく。何匹かが送って行こうと舌のだが、体力が回復したので大丈夫だとやんわり断り、ジゴウは帰路を進んで行った。
明日、『磯の洞窟』へ向かうことが決定した。今日の時点では明日の準備を万全にしておくこと。なんとなくパトラスから『磯の洞窟』の雰囲気を聞いた後、メンバー達には解散令が出された。いそいそと準備に取り掛かる者もいれば、その場に留まって意気込みを語り合う者もいる。
アカネ、カイト、リオンもそれぞれ準備に取り掛かろうと部屋へ戻る為に足を上げた時である。パトラスがペリーと何やら話し込んでいるのが耳に入り、三匹はパトラスとペリーと少し離れた場所、ギリギリ声が聞こえるところで足を止めた。
「ペリー。ペリーは明日、ギルドで待機ね♪」
「は!?お、親方様!お言葉ですが、私も行かせてください!『磯の洞窟』へ!」
「駄目だ。もう、あんなに危険な目には合わせられないよ。いつもいつもああなるとは限らないのは分かってる。けど、一歩間違えれば君は死んでいた」
「でも……だからこそ行きたいのです!その気持ち、わかっていただきたい!」
「……………………分かった。
じゃあ、明日はクロッカスと一緒に行動してね。アカネ達をあの模様の場所まで案内した方が良いと思うんだ。多分リオンも一緒になるだろうから……あの三匹は洞察力が鋭いし、戦闘能力も高い。もしもの場合でも、あの三匹なら対処できるはずだ。
…………本当に、気を付けてね。『もしも』が無いことを願ってる。
……じゃ、僕はちょっと思うところがあって、今から出かけてくる。暫くギルドを空けると思うから、明日になっても帰ってこれなかった場合、皆の先導は任せたよ。ペリー」
「はい!かしこまりました」
話は一段落したようだ。始終ずっと厳しい顔つきで話をしていたパトラスとペリーだったが、会話を終えると少しだけ表情が和らいだ。アカネ、カイト、リオンの視線に気が付くと、ペリーは三匹に近づいて行って明日の行動を少しだけ説明した。
「……という訳で、明日お前達は私と行動してもらうことになる。磯の洞窟には強敵が居るからね、油断はできない。
私の足を引っ張るんじゃないよ!」
「はいはい、分かったよ」
「……一言余計なんだけど」
この期に及んで尚上から目線のペリーに飽きれたように返事するカイトと、最後の一言が気に食わなかったのか毒づくアカネ。それをどこか微笑ましい表情で見ているリオンが居た。
明日の予定は整った。三匹は明日の準備を万全にするため、それぞれ行動を始めたのだった。
――――一方、トレジャータウンの出口付近では。
ギルドでの要件を済ませたジゴウが、重い体を引きずるようにして帰路を踏みしめていた。どこかふわふわとしたような気分で、ついつい思っていることが口から漏れてしまっている。
「ほっほっほ……いいのう、若いもんは。
わしももうちょい若ければ、幻の大地に挑戦したのにのう……」
頭の中で考えていることがそのまま口に出てしまっていた。
それを影から聞いている者がいることを、ジゴウは全く予想していなかったのである。ジゴウの話をこっそりと聞いていた何者かは、建物や木々の影をすり抜けると、ジゴウへと急激に接近した。
「帰路が長いわい……よっこいしょ、と……」
「待ちな、爺さん」
「……!だ、誰じゃ……!」
不審な声と共に、ジゴウの鼻を強烈な悪臭が突いた。年の所為で感覚が鈍った鼻でも、吐き気を催すほどの悪臭。ジゴウは思わず息を止めて周辺を睨みつけた。
突如、三匹のポケモンがトレジャータウンの出口のあたりからひょっこりと姿を現した。スカタンク、ズバット、ドガース……。エレキ平原の件からすっかり大人しくなったと思われていたドクローズである。ここより離れた場所を住処とするジゴウがその存在を知る筈はないが、なんとも言えない不気味な笑みを浮かべている三匹を見て、ジゴウは咄嗟に『敵だ』と判断した。
しかし、老いた体では戦闘など到底できない。ジゴウはあっという間に三匹に囲まれてしまった。
「な、なんじゃ!おぬしたちは……っ」
「クククッ……嗚呼、ここらへんじゃ見ないツラだな、爺さん。
俺達はチームドクローズ。お見知りおきを。クククッ…………。
爺さんよ、さっきからやたら楽しそうな事ブツブツ言ってたじゃねぇか?幻の大地がどうのこうのだの……このギルドの奴らに用があったんだろ?
俺らにも教えてくんねぇかな?その面白そうな話さぁ…………」
ジゴウは何も抵抗することが出来ず、体がすくんで動けない状況となっていた。ドクローズの三匹はそれを分っているかのように、体すれすれまで接近して話しかけてくる。
突如、ギルドのポケモンたちが門から出てくるのをエターは確認した。彼はそのことを他の二匹に伝えると、それを聞いたグロムは軽く舌打ちをする。
「……ククッ。話はまだ終わってねぇ。来てもらうぜ、爺さんよ」
にんまりと笑うと、グロムはエターとクモロと共に、ジゴウを先ほど自分たちが身を隠していた草むらへと引きずるようにして押し込んだ。