ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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十章 夜明けの思い
崩壊へ加速する世界‐162
 * * *

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『この頃、妙な事が増えて来たよな。時間が止まってるとかマジかよ。時間が流れるって、普通の事だと思ってた。原理とかそういうの特にないって思ってたんだけどさァ、止まるとか、どういうことなんだろ』
『その話ちょっと知ってるぜ。ほら、めっちゃ話題になった『盗賊L』が、時の歯車を盗んだ後捕まったって話だ。一度収めてある場所から動かしちゃったわけだし、無傷って訳にはいかないんじゃないかねぇ……』
『ホント、馬鹿なことするよなー。でも、もはや他人事にも思えねぇっていうか、どんどん時の停止が広がってってるらしい。このトレジャータウンも危ないって噂だぜ』
『時の停止って、波紋みたいに広がるんだろ?ということは、俺らの心臓も止まっちゃうってか?』
『ったく、ざけんなよなー』

 トレジャータウンにて。気だるそうに立ちばなしをしている、少しやんちゃそうな若者達を、カイトは建物の影からこっそりと伺い、彼らの話を盗み聞きしていた。
 『キザキの森』の時の歯車は再びルーファスの手元に戻って来た。そこで、ルーファスに『現状を探ってほしい』と頼まれたカイトは、特に抵抗することもなくトレジャータウンの各所で様々な情報を頭の中に入れていた。
 そう簡単に、都合よく情報が耳に入ってくるのか……とは思っていたものの、やはりトレジャータウンのポケモンたちは皆不安を感じているのか、息をするようにその話を喋っている輩も居る。全てが真実かは分からないが、不安気に話す彼らを見ると、特に大きく拡張された事実ではないことが伺える。『キザキの森』の時の停止状況と照らし合わせると、的を射ている情報はあふれるように出てくる。
 カイトは情報を探しつつ、シャロットの姿も探していた。シャロットの未来での立場を知ると、さすがに気にせずにはいられなかったのである。しかし、シャロットがよく出入りしているカフェなどに入る訳にはいかない。顔見知りが多すぎて、直ぐにカイトの存在が気づかれてしまう。
 カクレオン商店、ヨマワルの銀行……様々な店を物陰から伺うも、シャロットは見当たらない。不安になってくる。 
 サメハダ岩に帰省したら、おそらくリオンからシャロットの事を聞かれるはずである。結局『分からなかった』と返すしかないのか。そう思うと、なんとなく居た堪れない。
 おそらく、ルーファスが知りたがっている情報がそこそこ集まったであろう頃、カイトは後ろを振り返りつつも隠れながらサメハダ岩へと向かった。

 サメハダ岩に到着すると、カイトは周辺に誰もいないことを確認し、ゆっくりと階段を下りて下から蓋をする。そして空洞部分まで降りると、火を焚いて温まり、オレンの実を焼いている三匹の方へと足を運んだ。
「焼きオレンうまいなこれ。ちょっと甘くなってる」
 焼いたオレンの実をほおばりながら、ルーファスは言った。オレンの固めの皮は、火を通したことにより向きやすくなっている。苦みが気にならなくなり、仄かな甘さも出てきた。ルーファスはがつがつと食べ進める。そんな彼を、リオンとアカネは苦笑いしながら見つめていた。
「……あ、カイト。おかえり」
「ただいまアカネ。ルーファス、色々聞いてきたよ」
「ん?そうか、んぐぐ、ちょっと待ってろ」
 食事時はやたら緊張感がほどけるのか、ルーファスは中途半端にオレンを喉に詰まらせ、首の下を軽くたたいた。うまく下に落ちたのか、ふぅ、とため息をつくと、手に持っている分を口の中に放り込み、カイトの方へ向き直った。
「それで、聞いたところ……どうだった?」
「うん。まぁ、やっぱり良くない状態みたいだ。僕たちが未来へ行った後、ユクシーたちはちゃんと『時の歯車』を元の場所に戻したらしい。
 それでみんな、また元に戻るって喜んではいたらしいんだけどさ、それでも時は止まったまま。それどころか、どんどん時が止まる場所が増えていて、今すごい問題になってるらしいんだ。見てこれ」
 カイトは、一応の為にもっていっていた小さめのバッグから、くしゃくしゃになった紙を取り出した。新聞の一部のようで、カイトが公共のゴミ箱の中から漁って来たものである。彼はくしゃくしゃの紙の皺を広げて地面に下ろすと、自分の持っていたバッグを重しにする。そして件のことが書いてある記事を探し始めた。
「えっと、確か……これだ。見て」
 カイトは、一部に取り上げられている記事を指さした。カイト以外の三匹は、記事に顔を近づけて内容を読み始める。

 『時の異変は何故止まらない!?原因は時の歯車?』

 ――――誰もが一度は耳にしたあの事件。始まりから解決まで絶え間なく世間を混乱に陥れた大事件『時の歯車事件』を知らぬ者は殆どいないだろう。この事件の犯人、通称『盗賊L』ことルーファス・レッドフィールド氏は、この歴史の中で初めて『時の歯車』の窃盗に手を染めたポケモンとして世間に広く公表された。盗まれ続ける時の歯車だったが、『箒星の探検家』として知られるキース氏、警察組織や近辺の探検隊ギルド、更には時の歯車の守護者だった者達などの協力を得て見事ルーファス・レッドフィールドの捕獲に成功した。
 ある時期から突如名を馳せた『箒星の探検家』であるキース氏とルーファス・レッドフィールドという盗賊は、この事件が起きる前からお互い顔見知りだった。キース氏はこの時代の更に先を行く『未来』から来たポケモンであり、ルーファスもまたその類のポケモンであるというキース氏からのカミングアウトもまた、世間を騒がせたであろう。事件解決後、時の歯車は警察や歯車の守護者たちの手に渡り、それぞれが無事元の場所へ返還されたという報告が各所で上がっている。また、『未来ポケモン』とされているキース氏は、未来でお尋ね者として追われているルーファスを追って過去へと足を踏み入れたという経緯もあり、ルーファス捕獲後は我々の想像もつかないような特殊な方法を用いて、未来へと帰還した。
 警察の話によれば、ルーファス・レッドフィールド氏の処罰はキース氏に全面的に任せるものとし、キース氏もまた、世界を混乱に陥れた犯罪者に然るべき処罰を未来にて下すという意思を示しているということである。
 さて、こうしてこの時代から『盗賊L』という存在は浄化されている状態にあるわけだが、一方で更なる巨大な問題が世界に立ちはだかっているようである。
 ルーファス・レッドフィールドより警察関係者や歯車の守護者たちの手に渡った『時の歯車』は、無事に元々納められていた場所へと返還された。これでまた時が動き出し、世界は豊かさや落ち着きを取り戻すことだろう……。誰もがそう思って疑わなかった。
 しかし、新たな問題が浮上した。何と、『時の歯車』を返還して尚、各所の『時の停止』状態から一向に状況が改善へと向かわないという予想外の事態である。それどころか、時の歯車を祀っている居る場所だけではない。その他の場所にも、時の停止の波紋が広がりつつあるようだ。
 右側の画像は画家のハイロ・ドゥチャー氏が描いた『時の停止』という題の絵画だ。ハイロ・ドゥチャー氏は警察の許可を得て、実際に時の停止した地へと足を踏み入れた時にこの絵を描いたと語っている。自らの解釈や思想は一切入れず、ただ目に見えているものをそのまま描いたということだ。
 この場所は当然『時の歯車』とは関係のない地である。このように、そんな土地であっても時が停止している状態と化している部分が存在するのだ。
 時の歯車は元の場所へ変換されている。しかし、何故このような現象が起きているのか。浮き彫りになってくる『時の停止』からの『星の停止』への恐怖から、たくさんのポケモンたちの不安の声が上がっている。
 我々は警察関係者に今回の件で取材を申請したが『調査段階な為、はっきりと情報を言うことはできないが、誠心誠意事件解決に努めている』とのコメントのみであった。
 原因は『時の歯車』そのものにあるのか、もしくは他の何かが世界の『時間』に悪影響を及ぼしているのか……我々は、事件への早期解決を願うばかりである――――。


 …………との内容の記事だった。持てる空白がかなり狭かったらしく、色々と抜かして書いていることが多い。『未来の世界』についての謎や、キースが未来へ帰還したと共にトレジャータウンから消えた計四匹のポケモンの事。しかし、この記事を書いた記者が言いたいことはちゃんと分っていた。
「…………やっぱ、時の歯車は関係ないみたいだな。ということは……時限の塔の崩壊が加速しているということになる……」
「時限の塔の崩壊……」
「今から時の歯車を集めて、そこから更にやるべきこともある。手分けしても間に合うかいささか疑問だ。
 各地の時を司る時限の塔が崩壊し始めたことによって、やはり時の破壊も急速に加速する。今がまさにその本格的なスタートだ。時間に余裕がないかもしれないな……」
 ルーファスはそういうと、困り果てたようにため息をついた。カイトはその事実を聞くと大きく目を見開き、ルーファスに思わず詰め寄る。
「ということは……今ここでこうしてる間にも……?」
「嗚呼……時限の塔はどんどんと崩壊していく。早く手を打たねばならない。 
 時限の塔を再びリセットするためには、やはり時の歯車の存在が欠かせないのだ。時の歯車を時限の塔に収めること……それしか方法が無い。
 ただ、集めたらそれでいいという訳ではないのだ……。そもそもの話、俺達は『時限の塔』への行き方を知らない」
「…………はい?」
 アカネが思わず拍子抜けしたような顔つきで声を上げた。ルーファスは居心地の悪そうな顔をすると、再び話を始めようとする。
「……そういう反応になるのは仕方ないよな、うん……。
 時限の塔は『幻の大地』という場所にあるという事は分かっている。いやまぁ、その名の通り、な……『幻の大地』というだけあって……どこにあるのか全く分からないのだ」
 そんな風に話をするルーファスを見て、リオンは居た堪れなくなり手で顔を塞いだ。アカネはきょとんとした顔をしながら、ルーファスの話が終わった後もそのまま一時停止の状態である。
 『時の歯車を手に入れる』……その行為のハードルと言うものが、いきなりガクンと下がった気がした。『幻の大地』という場所を、まさかのルーファスもリオンも知らないという事実。未来の世界で調べはしたのだろう。それでも不明、ということは、この時代で調べるのは相当骨の折れる作業である。普通に考えれば、調べ始めたとて判明する前に星の停止一直線となってしまう。
「…………とりあえず。
 僕たちは、『幻の大地』を探してみるよ。だからルーファスは、時の歯車を集めることに集中してほしいかな」
「……いいのか?カイト」 
 カイトはゆっくりと頷く。そこらへんは尻ぬぐいをさせてしまうようで申し訳ないと思い、ルーファスは軽く頭を下げた。アカネは少し呆れ気味にため息をつくと、カイトと同じくゆっくりと頷く。
「シリウス。お前はアカネとカイトの方に居ろ。シャロットさんのことも気になるだろ?」
「お前、また歯車集め一匹だけになるぞ。いいのか?」
「お前が納得したらまた俺に手を貸してくれればいい。
 それと、アカネ、カイト。『幻の大地』は、確かにこの世界のどこかに存在する。しかし、誰にも発見されていないことを考えると……随分遠い、孤立した場所にあると考えられる。
 海の向こうにわたる手段も考えておくべきだろう」
「海の向こう……」
 カイトはさり気なく、自分がこの大陸に渡った時の事を考えた。ちょっとボロい船を漕ぎだし、大分離れた大陸から波に揉まれ風にも吹かれ雨にもうたれ……と、考えていたところでアカネに軽く足を踏まれた。自分基準に考えるのはあまりよろしくない。
 アカネは『幻の大地探し』に対し、相当な不安を感じているものの、あの未来の現状を見て放っておくわけにはいかないという事は分かっていた。自分が元々ルーファスの相棒で、同じ理想を追いかけていた人間……『アコーニー・ロードナイト』だったことが分かった今、早々に諦めるという訳にはいかない。
 何もしなくて見つからないよりかは、何かした方が良いだろう。
「…………俺は、時の歯車を集めに行ってくる。連絡はこの『サメハダ岩』で取り合おう。では、頼んだぞ」
 ルーファスはゆっくりと体を揺らすと、そのまま階段の方へと足を運んでいく。
「おい、ルーファス」
「分かってる。もう一方的に連絡を絶つような真似はしない」
「……嗚呼」
 そんな会話を風が吹き抜けるような感覚で交わすと、そのままルーファスは再び階段へと足を運び、そのままゆっくりと上へあがっていく。その姿が完全に見えなくなり、岩場付近からポケモンの気配が消えたのを確認すると、やっとアカネ、カイト、リオンは肩の力を抜き、新たな会話を開始した。
「ルーファス一匹って、結構大変じゃないかな」
「いや、『幻の大地』のほうがある意味大変だ。俺達が未来でどれだけ調べても核心に辿り着けなかったんだしさ……」
「……とりあえず、これからどうすんの?リオン、あんたはシャロットが気になってんだったわね。今まで余裕なかったけど……探しに行ってくる?」
「出来ればそうしたいかな。ただ、ここで俺達もバラバラになっちゃうとさ、後々困るんじゃないかって思って躊躇するっていうか……」
「……まぁ、じゃあ。大体三十分トレジャータウンの方に探しに行ってきたら?あんま目立たないようにね。
 私とカイトは、ここでこれからの事考える。あんたはシャロットが見つかり次第、大体三十分以内にここへ戻ってきて。それならどう?」
「……ごめん。ありがとう」
 リオンは礼を延べると、軽くアカネとカイトに会釈した。カイトも異議は無いようで、ルーファスに続いて階段を上がっていくリオンを穏やかに見守る。リオンの足音や気配が大体消えると、二匹はそれぞれベッドに腰かけ、向かい合いながら話を再開する。
 今までドタバタしている場面が多く、二匹ではなかなか話していなかったように思える。いざたった二匹になってみると、今まで慣れていた筈の光景であるのにどこか複雑だ。
「……あんた、結構積極的なのね。ルーファスに対して疑心暗鬼になってた時とは別個体みたい」
「ルーファスに今までボロクソ言ってたのもあって、ちょっとね。
 でも、人間だった頃のアカネが星の停止を食い止めることを望んでた。自分の願い事なら多分ここまでしようと思わないけど、君の為なら出来るよ、僕。キースの事とかステファニーの事とかあったけど……精神的な山は少し超えたと思ってる。出来ることまでやろうよ。
 頑張ろう!」
 カイトはそういって、にっこりと笑った。
 どうにもむず痒い。何とも言えない気持ちの悪い心境。だが、いやではない。何だろう。そう思いつつも、アカネは小さく鼻を鳴らし、照れ隠しにそっぽを向いた。



■筆者メッセージ
気まぐれ豆雑談

ステファニー「漫画ってクソだよね」
作者「また言い始めた。懲りないなぁ」
ステファニー「漫画なんて全然頭使わないじゃん!一時間で十冊は行けちゃうじゃん!どっぷり浸る感じないよね!」
リオン「それって個人によって違うと思うけどぉ?俺は小説のダラダラした文字見てると吐き気するけどさァ!」
作者「作者どっちも好きだつってんだろいい加減にしろ」
ステファニー「それはリオンの知能が低いだけの話ジャーン。文章を理解する能力無いだけジャーン」
リオン「いーんですー。俺は頭しわっしわになりたいわけじゃないしー。俺は漫画で楽しく読書するんですー。漫画家さんの美しい絵を鑑賞してるんですー」

作者「完全にガキの喧嘩!お前ら二十歳だろ何やってんだ……」
ミシャル ( 2016/04/21(木) 23:19 )