ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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八章 垣間見える光と影
ルーファスの敗北‐140
* * *

着々と『盗賊L』ことルーファス捕獲に事は運んでいた。有名探検家キースの真実や『盗賊L』ルーファスの目的……それが公開されたあとの数日間。世間が事件の事で騒めいている頃、今までの道筋に妙な『違和感』を抱いているポケモンが居た。

「……ラルク君。ちょっと変だと思わんかね」
「知りません」
 一匹のウインディ、ドナート・ウィルシャンは警察署内の倉庫のテーブルに資料を開き、それを眺めながら一匹のポッタイシにそう質問を繰り出した。ラルクと呼ばれたポッタイシは資料を両手に抱えながら、相変わらず腑抜けた顔つきの上司に悪態をつく。ドナートは愛想のない部下の様子に萎えてしまい、ドスン、と音を立てて倉庫の床へと寝そべった。
「汚いですよ。警部」
「まだ警部補な。やっぱなんか引っかかるんだわ〜キースさんっつって」
「良いじゃないですか。見た限りまだ結構お若いのに、あそこまで堂々と声を張り上げて、『盗賊L』……ルーファス捕獲を宣言するなんて。まぁ、未来からきた下りはちょっとよくわからないですけれど……」
「未来からきた下りは特に違和感感じないんだよな、俺さァ。これで人気急上昇以前のキースさんを知ってるポケモンが誰もいないっていう謎は解けたから。『盗賊L』が時の歯車の場所を知っていた意味も理解できるし」
 ドナートはそう言いながら、ひんやりとした床に顎を付けた。埃のにおいがする。ふんふん、と彼の鼻が臭いを捕え、思わずくしゃみがでそうになった。そんな間抜けな顔を、キリッとした顔つきのラルクは『情けないなぁ』と内心毒づく。このドナートというポケモンはいつもこうなのである。
 威厳のある神々しい姿の割に、一歩歩くとおっさん臭がダダ漏れなのだ。もう少し何とかならない物か。ラルクは思わず資料を床に置くと、眉間あたりを手の先で抑えた。
「ラルク君。君はキースさんの演説を聞いて疑問に思わなかったかね?」
「んー。特に違和感は無かったです。やっぱ未来からきた下りがどうも……」
「嗚呼もう!そこじゃないんだよなぁ!
 キースさんはルーファスと同じ未来から来たんだろ?で、ルーファスは『時の歯車』のありかを知ってたってことだろ?ならばキースさんも知っていた可能性が高い。ルーファスの目的は、時の歯車をあるべき場所から持ち去ることで星の停止を起こすことだって言ってんだから。でも、奴は何故かギルドの連中にヒントだけ与え、一から探させるような真似をしたんだ。しかも、ルーファスをずっと追っていたなら奴の情報もそれなりに持っている筈だ。なのに何も奴の情報が流れてこないのはなぜだぁーー!」
「あー。そうかもしれませんけど……キースさんはルーファスにばれないように行動したかったわけでしょ?なら普通隠すんじゃ……」
「一般ポケモンからしたキースさんの認識は『勇敢、親切でいかなる時も頼りになるスーパーポケモン』な訳だろ?でもルーファスの情報を知っているにもかかわらず捜査する側に一切与えないってことはさ、それだけ捜査員を危険にさらすことになる。実質ギルドの探検隊が重症で帰ってきてたじゃねーか。……本当に勇敢で親切なポケモンがやるようなことじゃないと思うんだけどなぁ?」
「……それは……」
 ドナートのいう事を聞いてみて、確かにそうかもしれない、とラルクは思った。彼もまた、あの時演説をリアルタイムで聞いてたポケモンの一匹である。キースやルーファスの過去、『盗賊』の目的。それを聞いた時には鳥肌が立ったものだ。
 ドナートは見かけの割には不思議なポケモンで、『未来から来た』をあえて否定せず、推理なる物を行っていた。ラルクはそれに飽き飽きしつつも、どこか共感していたのだ。
「それと……ルーファスの人格についてもちょっとずれてる気がするっつか、確かに世間を大騒ぎさせてるのは確かだが……意外なのは、ルーファスが極悪非道と言われてる中、この事件で死者が一匹も出てないことなんだわ。
 『霧の湖』のユクシーがルーファスの顔を見たことから捜査が進展した。けれど、ルーファスは顔を知られる可能性が高い中、ユクシーを殺害しなかったんだ。しかも、ユクシーの傷は急所を完全に避けた形でつけられてたらしい。更にエムリットの証言によれば、イメージしていたタイプとかなり違い、理性的なポケモンだったらしいんだ」
「それは……確かに、ちょっと意外ですね。『星の停止』という目的で活動してるなら、命を軽く感じているような……そんなイメージがあるのですが」
「でもさぁでもさぁ!これってキースさんを思い切り疑ってるみたいな捕え方されるじゃん!?つかそうなんだけどぉ!
 上ににらまれるなぁ!やだなぁ!」
「上は完全にキースさん信用してますもんね。すでにキースさんを捜査に加えてるわけですし、そんなキースさんが怪しいってことになれば……ねぇ」
 事件が大きくなり続ける中、捜査に加わっているキースが怪しいということになれば、警察の信用はガタ落ち。今でも『信用されている』とは非常に言い難い状況なのにも関わらず、そんなことになれば……不安や不満の怒りは警察へ全力投球されることだろう。
 上は絶対にそんな事態は避けたいはずだ。よって、ドナートの意見は絶対に採用されない。組織と言うのは面倒なものである。
「……これは……」
「今度は何ですか?」
「いや、キースさんは『時の流れの不調は、時の歯車があるべき場所から離れたことが要因』っつってたけど……一個目の歯車が盗まれるその前に、既に一部で『時の停止』っぽいのが起こってるみたいだ」
「……どういうことですか!?」
 ラルクはドナートからその資料をひったくると、無我夢中で読み始める。そんな様子を身ながらドナートは『まじめだなぁ〜』と言い大あくびをした。
 その『時の停止』らしき現象は、とある湿地帯で起こったらしい。湿地帯の隅にある小さな池が、突如灰色に変色し、表面のみがうっすら固形のような状態へと姿を変えたのだという。
「……一応捜査結果がありますね。その水の成分……例えば、その水に住んでいる微生物などが、完全に、と言っていい程活動を停止している状態になったらしいです。
 当時はほんの一部で起こった不可解な現象として処理され、世間には全く出回ってないみたいです」
 資料を照らし合わせてみると、非常に『キザキの森』や『霧の湖』の時の停止状態と似ていることが分かる。ラルクは目を見張った。ふと思う。このポケモン、ドナートがキースに対してつけているいちゃもんのようなものは……実際正しいのではないか?
 しかし、キースに疑惑があるなどと言うことになれば、当然上に睨まれる。訴えても受け入れられるわけがない。可笑しな点を指摘したところで証拠がないと切り捨てられる。最悪捜査から外される可能性も否定できないのだ。
 ラルク自身はそこまで捜査にかかわっているわけではないが、ドナートは違う。一部で指揮をとっているポケモンだ。
 そこでふとラルクは疑問に思った。ドナートは『現警部補』である。それなのにこんなに巨大な事件の捜査の指揮をとっている……?
 別に『無い』というものではないのだが、おかしいような気がした。
「……警部補。もしかして上は気づいているかもしれません」
「あん?」
「キースさんについてです。そもそも、ほとんど個人の情報が無いようなポケモンです。貴方が指摘したように不自然な点も多い。……なのに、ここまであっさり捜査に参加できるものなのでしょうか?
 しかも、キースさんは捜査の方向性を指摘している。たかだか最近有名人なっただけの探検家。それなのに……」
「……んー。つまりさ、俺って警察の盾にされてる感じ?そういやキースさんが関わるような捜査は全部俺の担当だったような……」
「上は何かあれば警部補を切り捨てる気かもしれません。これらの不自然な点が公になれば、必ず組織の中で波紋が広がるでしょうけど、一番は……。あ、警部補。責任めっちゃ負わされますよ、これ」
「…………やっべ」
 目を細めると、ドナートはラルクの方を向いてにんまりと笑った。俺だけではない、パトラスのギルドも圧力の餌食になる恐れがある。捜査上で一番近しかったのは俺かもしれないが、そのほかはすべてギルドに……。
 上に確かめる術はない。気づけば即切られる。……自分の部下を使えば……。いや、上につながってると思わしきポケモンが二、三、四……。
 駄目だ。

「……ラルク君。お前暇?」
 ラルクは、巨大な手で指をさされると、不機嫌そうに眼を細めて小さく頷いた。



 ―――――同時刻

 ユクシー、アグノム、エムリットとこの私……キースは、本当に四匹のみで『水晶の洞窟』にてルーファスを待ち、静かに待機していた。
 奴は必ず来る。私にはそんな自信があった。おそらく、封印の儀式を執り行うにあたって『見張り』がいるというのは少なくともルーファスは感づいている筈だ。それが私である可能性も十分考えているだろう。
 しかし、奴は絶対に……この場所へ現れる。
 
 ……各地の時の歯車を取って行けば、星の時間の停止が進んでいく?大衆の前で言ったこと、そんなものはデタラメである。しかし、私を彼らは完全に信用しているのだ。ルーファスとってはとてつもなく『不幸』なことである。
 私の話を聞き入れあ大衆達は、真偽を理解するお頭も無いのだろう。本当に私と時の歯車の守護者三匹のみをこの場所に送った。
 奴がこの場所に来るとわかっている以上、捕獲する術は大量にある。
 まず、この場所に大量の罠を仕掛けた。アグノム、ユクシー、エムリットにはそれぞれ『目薬の種』を食べるように指定し、罠の場所を確認できるようにした。私もそれを飲み込んだと同時に、『防御スカーフ』の下に『罠抜けスカーフ』を装着した。『罠抜けスカーフ』は、装備用の特殊な道具の中でもかなり貴重なモノである。ルーファスに怪しまれない様、あえて防御スカーフの下に重ねて使用する。
 とにかく、万が一罠に当たっても私には発動しない。罠の位置も把握しているため、ルーファスが万が一『目薬の種』などを使い罠を把握したとしても、やり方によってはダメージを与えることも可能である。

「キースさん。とりあえず時の歯車の周辺に、効果は短時間ではあるけど結界を張っておいた。あれからすでに結構時間がたってるけれど、本当に成功するかな?」
「大丈夫です。奴は執念深い……必ずこの場所に来ます。目くらましに何かしてきたとしても、罠や結界がある限り時の歯車を取られることは避けられるはずです」
 この場所の主であるアグノムが、少々不安そうな顔をして私に尋ねてくる。彼らに不信感を持たれてはいけない。すぐさま、私は用意していた答えを返事としてアグノムに返した。
 見回りをしているエムリットとユクシー……あまり目立ったことはしてほしくない。彼らは既に自らの使命に失敗している身。こちらとしてもその力にあまり信頼を寄せることは出来ないのだ。
 ……エムリットとユクシーに、微かに私は目を細める。しかし、その直後だった。
 『水晶の湖』に、覚えのない気配が現れる。姿や形は見えない。しかし、確かに何者かがこの周辺に存在していた。
 この雰囲気は……あいつだ。ルーファスだ。
 私やアグノム、エムリットにユクシーはそれぞれ指定しておいた場所に身を隠す。ルーファスは警戒しつつも、ゆっくりと『水晶の湖』への入り口付近から入ってくる。奴が完全に中に入り切った直後、突然『水晶の湖』への入口に大量の水晶が伸び、完全に封鎖した。
 アグノムに頼んで仕掛けておいてもらった罠である。
「ッ……!?」
 ルーファスは入口に立ちふさがる巨大な水晶を見て、目を大きく見開いた。奴は『穴を掘る』を使うことが出来る。いざとなれば穴を掘ってどこからか脱出するはずだ。この罠は万全ではない。
 すぐさま私は攻撃にかかった。ユクシーとエムリットにはアグノムを守る様に指示し、『影うち』を使ってルーファスの近くにある影の中へともぐりこむ。当然、そんな近距離に近づけば奴は私に気づき、私から逃げようとするだろう。
 あえて『黒いまなざし』という足止め技は使わず、無暗にこの場所を泳がせることでダメージを与えるつもりだった。奴が身につけていたのは『攻撃スカーフ』である。おそらく、取り押さえられた時の為だろう。
 奴は警戒しつつもその場を動き回り、私の思惑通り罠を踏みつけてくれた。『自爆スイッチ』だ。
「……ッ!?」
 ふわりと地面に『スイッチ』のような物が浮き上がり、次の瞬間それを踏みつけていたルーファスの足元が小規模の爆発を起こした。ルーファスはその真上に居たため、爆発をモロに受けて爆風によって吹き飛ばされ、地面へと勢いよく叩きつけられる。奴は倒れ込んだまま自らのバッグの中に手を突っ込み、私はそこで勢いよく影から飛び出し、ルーファスを押さえつけた。この周辺に罠は無い。そしてあの三匹のいる場所からも離れている。好都合だ。
「ッ……やはり罠かッ……」
「そうに決まっているだろう……?しかしお前はここに来た。罠と知っていながら……準備が甘かったな、ルーファス」
 ルーファスの腕をつかみあげ、奴が何かを握っているのを確認した。こじ開けさせると、『雨玉』という不思議玉が手の中から零れ落ちる。どうやらダンジョン内を湿気させ、先ほどの『自爆スイッチ』のような罠を全不発にするつもりだったらしい。
「いや、直ぐに来るしかなかったのか……『封印』までの期間は限られている。お前が噂を知ったのは半日ほど前か?」
「ッ……!!」
 キースは激しく抗い、私が押さえつける中で大きく暴れ始めた。リーフブレードを発動させ、隙あらばと私に攻撃を仕掛けてくる。
 『黒いまなざし』で今度こそ完全に動きを止めると、素早く奴をひっくり返し腕を拘束した。ふと、『このまま殺してしまおうか』と考えたが、それは止めよう。皆の私への認識がひっくり返ってしまう。
 エムリットが持ち場を離れて私の方を見ている。これは好都合、と思い、私は彼女に『封印』という技をルーファスに掛けるように指示した。
 ルーファスは何か言おうとしたようだが、彼女の施した『封印』によって体の自由も奪われ、まともにしゃべることが出来ないような状態に陥る。エムリットが『もうしばらくは動けないよ』と言って、私に戦闘態勢を解いてもいいというサインを出した。
 私はぐったりとし、目だけを鋭く光らせている奴の首を掴みあげ、地面へと叩きつける。
「……ルーファス。私の勝ちだ」
「……ッ…………ッゥ……!」
 私はアグノム、ユクシー、エムリットがこちらに向かってくる中、彼らにばれないようにルーファスへと微笑んで見せた。一体どんな笑顔に見えたのだろう?ルーファスは、更に激しく私の事を睨みつけ、恨み言を言うかのように息を空回りさせる。
 嗚呼、やっと……やっと、捕まえた。

 その時、私の探険隊バッジから微かに声がした。

『私が殺したい』
 

 その声の正体を、私は知っている。しかし、そんなことは構わない。私はただただ、ルーファスを捕獲することに成功した事に対し、『自分の命が助かった』ような、なんとも言えない気分に陥っていた。
 
 後は、ルーファスの共犯、邪魔者を殺せば……。
 奴らさえ暗殺すれば……否、タイミングはもう決めている。
 
 すべてを、『未来への帰還』で実行する。

 


■筆者メッセージ
気まぐれ豆雑談

レイセニウス「…………」
作者「ん?私のパソコン使って何かいて……」

【作者、熱愛発覚!!
 お相手はあの伝説の救助隊副リーダーG!?不倫の関係か!】
作者「おい」
レイ(略)「何度か仲良さげな描写がこのコーナーで……」
作者「マジでやめろ」
レイ「俺ライターとかやってみたくてぇ」
作者「やめてください化け物に殺されます!!」
レイ「それって認める感じ?」
作者「断じて違う!そういうケモ趣味はない!けどこんなの出回ったら私殺されるんですぅ!」
レイ「もう出版社に送っちった」
作者「アガガなんで『鮮血の舞踏会三夜事件』の内容教えて貰った際のふたりきりの写真が貼ってあるんだァ!?」
レイ「明日掲載するって」
作者「だずげで!怪物がくるぅ!!」

サラ「今誰かに悪口言われた気がするわ」
ガリュウ「気のせいだろ」


ミシャル ( 2016/03/08(火) 21:52 )