ポケモン不思議のダンジョン〜時の降る雨空-闇夜の蜃気楼〜
















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八章 垣間見える光と影
捕獲の意思‐125
 
 お前は私の事を誰かと問うが、私にとってはお前が誰だ、と思うよ。いつでも出て行って良いんだ。生きたく無くなればすぐに消してやる。所詮お前はその程度の存在。嗚呼、やはり中身が違えば価値もすべて違うのだ。私とお前では比べ物にならない。私はお前を消して私を取り戻す。私がお前を忘れても、お前は私を忘れないだろう。私がお前を消すことで、お前のすべてを手に入れて捨て去ってやろう。

 嗚呼、お前を早く殺したい。お前に恨みがあるわけではない。お前は私が恨んでやるほどの存在でもない。思い出せ、思い出してすべて私に委ねろ。お前は消えるがいい。どうせその場しのぎの存在だ。私が眠っている間に、随分といろいろなものを築き上げたようだな。そのすべてを壊したらお前はどんなに絶望するだろうな。嗚呼、楽しみだ。
 それにしても、どうしてお前は私を無意識に支配しようとする?お前にはそれほどの力はない、価値も無いのに、どうして偉大な私を支配しようとするのか。お前に食いつぶされていた時間を思うと胸が痛い。大丈夫だ。もうすぐ、もうすぐ楽になる。支配する日々は終わる。お前にはこれから支配される日々、無に還る時間が与えられるのだからな。私が与えてやるのだから。

 私はお前が嫌いなわけじゃない。でも好きでもない。
 体を返せ 消してやる 殺してやる 奪ってやる 嗚呼、足りない 早く外に出たいよ


 ステファニー 私に抗うな お前は所詮、ハリボテなのだから
 
 

 * * *

 ―――――東の森。地図で見た通り、東の奥にある巨大な森です。森の範囲が広いために、まだ未知の領域がある可能性があります。そして水晶の洞窟。ここもまた、謎の多いダンジョンですね。周辺のダンジョンと異様な間があるのも気になります。そして、北の砂漠。雲に覆われている部分が多いうえ、普段誰も近寄りたがりません。砂嵐が激しい為、本当に一握りのポケモンしか日常的に住み着くことが出来ないのです。よって、ほとんど捜索の手が及んでいないことになる。ここもチェックしてください。
 キースは地図を見ながら『時の歯車があると予想できる場所』、そして、『その理由』をペリーとパトラスに述べていた。ペリーは首を振る機械のように「うんうん」と同意し続ける。パトラスは一見口がポカーンと空いているだけで、何を考えているのかは謎だが、とにかくキースの話を真剣に聞いていた。
「あまり広範囲に分散してしまうと、万が一『盗賊L』に遭遇した際危険です。他にも怪しい場所はありますが、その中でも群を抜いてという場所を数点、しっかりと探していきましょう」
 キースが挙げたダンジョンのうち、『水晶の洞窟』と『北の砂漠』は正解である。そこに不正解の『東の森』を混ぜることにより、自分が『真実』を知っていることを覆い隠した。さらに信じ込ませるには、この二点の時の歯車をこのギルドのポケモンに見つけさせることが重要である。
「……うん♪アドバイスありがとう、キースさん。じゃあ、まずこの三点で指示を出すことにするよ」
「いいえ、お役に立てたのなら嬉しいです。お互い、頑張りましょう」
 キースは人当たりのよさそうな顔をしてにっこりと笑った。その嫌味の無い笑みに、『ドクローズ』の悪事を見破ったパトラスまでもが弄ばれているかのようである。ペリーに至っては論外だ。

 ペリーはギルドの弟子たちに、捕獲へ向かうための準備をしてこいと命令していた。しばらくすると皆ギルドに帰ってくる。ペリーの案内によって、全員が再び同じ場所に集められた。
 これから、『盗賊L』の捜索場所を割り当てる為である。
 周囲のポケモンたちの尊敬は握っている。しかし、キースには何個か不安要素があった。アカネの事である。
 キースの中には一つの事実があった。『アカネと盗賊Lことルーファスは同じ穴のむじな』だということだ。記憶を失くしたアカネは既にそのことを微塵も覚えていない。しかし、ルーファス相手だと訳が違う。アカネが元人間で、自分の仲間だということに気づいてしまう可能性があるからだ。
 見た目はただのピカチュウ、というだけなら、ルーファスは全く気付かないだろう。アカネという名前を知られても、確かにルーファスの頭に引っかかるだろうが、そこまでは勘ぐらない。
 問題は『能力』を使われることだった。『時空の叫び』は、表面上何が何だか分からないので問題ない。キースに能力の事を喋るのを躊躇していたアカネである。ルーファスを信頼していないうちは死んでも話さないだろう。
 しかし、『ウロボロス』は話が別だ。その能力は、見た目からして発動したことが顕著に表れるからである。目が赤や青に輝くピカチュウなど、ただのピカチュウではない。その時点でルーファスは『おかしい』と感じてしまう。
 ルーファスとチームクロッカスが戦闘をすることになってしまった際、ルーファスにアカネの事がしれれば即アウトなのだ。
 それをカバーする目的。それが、本当は歯車が無いのにも関わらず余分に提示したダンジョン、『東の森』である。怪しまれない目的のほかに、このダンジョンにチームクロッカスを行かせる、という魂胆があった。タイプ的にも、このダンジョンは二匹に合っている。そういえば丸め込むのは簡単だ。
「……えー、皆集まったな。まず、これは当たり前のことなのだが、『盗賊L』は、時の歯車のあるところに現れる。ただ、その時の歯車がどこにあるのかが、私たちには分からないのだ」
 ペリーが皆に説明を始める。その説明を聞きながら、機会をうかがうキース。そして、その話に微かに眉間に皺を寄せるリオンの姿があった。
「そこで、キースさんに協力していただき、時の歯車がありそうな場所に目星をつけてもらった」
 
 嘘だ。あいつは元々時の歯車の在り処を知っている。どうやったら化けの皮を剥がせるか――――――?
 リオンはそう考えてみるも、答えは出てこない。自分とルーファスが『しようとしていること』に対して、敵が多すぎる。下手に動くと……殺られる。
「皆、グループに分かれてそれぞれ調査してくれ」
「では、グループ分けは任せていただけますか?」
「そぅお?じゃあ、頼んだ!キースさん」
 キースはうまく主導権を握ることに成功する。これでチームクロッカスを『東の森』に割り当てれば、失敗する確率は格段に減るだろう。キースは腹の中で笑うも、現実では真剣な眼差しで皆を見据える。『頼れるリーダー』を装った。
「……では、最初に、ヘクターさん、ゴルディさんは『北の砂漠』をお願いいたします」
 『正解』の場所である。ゴルディとヘクターは『おう!』と、快く引き受ける。そして、フラー、アドレー、グーテは、これまた『正解』の、『水晶洞窟』を指定された。
「……そして、アカネさん、カイトさん。『東の森』をお願いします」
「あれ、東の森?ヘイ!へーーーイ!キースさん、ちと待った!」
「え?」
 ヘクターに急にストップをかけられたため、一瞬キースは動揺した。まさか、ここで躓いてしまうような気持ちになる。何とか『待った却下』の言葉を飲み込むと、ヘクターの言葉に耳を傾けた。
「ヘイ!東の森が候補に入ってるなら、オイラとゴルディの方が東の森へ向かうぜ!
 実は俺達、前に親方様のセカイイチ全滅させちゃったことがあってよぅ……どうせだから、新しいセカイイチの生息場所を見付けて来いって、東の森に行かされたことあるんだ!だから、東の森の大体の構造は頭に入ってるんだぜ、ヘーイ!」
「そういえばそんなことが……そうだな。俺達が東の森に行った方がいいかもしれん!」
 ヘクターとゴルディは盛り上がり、周りからもそれが良い、それが良いと言われ始めていた。ペリー自身も『そういえば』みたいな顔をして、ヘクターとゴルディを見ている。まさかの予想外の事態に、キースは対応することが出来ない。先に自分で防衛壁を立ててしまっていたからである。今更新しい提案をすると不自然。仕方なく、ヘクターとゴルディは『東の森』に行かせることに同意する。
「となると、必然的にクロッカスの二匹は北の砂漠へ行くことになるね♪」
 しかも、途中からパトラスが仕切り始めようとしてしまう。キースはこの流れを修正できない。そう判断した。
「北の砂漠……相性最悪ね」
「アカネ、大丈夫だよ!……いざとなれば、アレ連れてくから……ふふふ」
 しかも、カイトが怖い顔になり始めている。完全にこれで決定したような感じになってしまう。思わぬ予想外の展開に、キースは密かに腹が痛くなってきていた。思い通りに行っていないだろう。リオンは腹の中でキースの事を馬鹿にする。
 ところで、リオンとステファニーに関しては呼ばれていなかった。アカネ達が不利ならば、自分たちも一緒に行くという手があるのに。ステファニーとリオンは顔を見合わせると、ペリーの方をぐっと食い入るように見た。
「……お、おぅ。チームブレイヴ。お前達には別の仕事を頼みたいんだ。現在、捜査員達が『盗賊L』の住処を探している。お前たちはその手伝いに行って欲しいんだ。どうも手が足りていないらしくてな。このご時世、あまり目立たないように捜査するには筋の良いポケモンではなければだめだという先方の意見だ。お前達を推薦した。行ってこい」

 ―――――チームブレイヴ。あのステファニーというイーブイの少女は良い。だが、あのリオル……リオンだかなんだか知らないが、それ抜きにして怪しい。どうも先ほどから私への敵意があるような気がしてならない。そして、あいつの雰囲気ともよく似ている。……アカネは実際に人間からポケモンに変わった。となれば、もしかすれば……。
 
 トラン、ベル、クレークのような、ギルドで欠かせない仕事があるポケモンのみ、捜索に駆り出されることなくギルドに留まるそうである。
 キースは、もしもルーファスとクロッカスの二匹が戦闘を繰り広げることになれば、アカネが激情に駆られ『ウロボロス』を発動させることにより、ルーファスを殺すことを望んでいた。また、その逆もある。ルーファスが、自らの企てを邪魔をするアカネとカイトの二匹を殺すこと。どちらかのポケモンが死亡すれば、それだけ勝機は高まるのである。
 
 とにかく、やるしかない。そう思い、キースは流れに身をゆだねる。ポケモンたちの熱い掛け声が、ギルドの中に響いた。

 ―――――――それではみんなっ!時の歯車を探して、Lを捕まえるよぉっ!!
 ―――――――おぉーーーーーーー!!


 嗚呼、愚かなものだ。
 腹の中で笑わずにはいられない。 


■筆者メッセージ
気まぐれ豆雑談
 
ボルトロス「我はボルトロス。見てのとおり伝説のおっさんだ!」
ステファニー「わぁ!本物のボルトロスさんだー!」
リオン「くっそカックイ―!!」
シャロット「なんと神々しい!!」
レイセニウス「俺にも雲貸してーーー!!」
ボルトロス「まぁ遠慮するな。近う寄れ」
ステファニー「そんな恐れ多い……!」
セオ「何かご要望のものはございますかーー!?(すりすり)」
ボルトロス「はっはっは」
作者「………………ね、ねぇ(;´・ω・)/」
リオン「あ?」
セオ「何?(パシッ)」
作者「('ω')……」

ミシャル ( 2016/02/18(木) 21:00 )