セレビィに自分は恋敵ではないことを全力で弁解したい。
「ジュプトルさん!…と、せつなさん」
黒の森の入り口付近まで行くと、そこでセレビィとばったり出会った。
…というか、私はオマケですか。
「セレビィ、久し振りだな。無事だったか」
「はい。私を捕まえられる奴なんて早々いませんからね」
少し頬を赤らめながら私を空気のように扱いながらジュプトルと喋るセレビィ。
恋愛なんかしたことない私には、あまり理解が出来ない感情だった。
「それより、急にどうしたんですか?……まあ、私はジュプトルさんが来てくれるのは嬉しいんですけど」
「何か言ったか?」
「いえっ!?と、特に何も思ってませんからねっ!?」
出た。ツンデレビィだ。
「今回は、時の回廊まで案内してもらいたくてここまで来たんだ。オレはこれから、せつなと過去に行く」
「そうなんだよねぇ。こんな暗い世界は、早いとこ変えなきゃいけないからさ」
私とジュプトルの言葉に、ぱちくりとまばたきしたセレビィは、
「…ジュプトルさんとせつなさん、二人きり…?」
と、小さく小さく呟いた。とても悲しそうに。
(いや!違うから!私はジュプトルを狙ってなんかないから!そんな泣きそうな顔しないで!)
「ん?セレビィ、どうしたの?」
「……い、いえ…」
(フォローしろよ過去の私っ!!)
しかし、心の中で叫んでも、過去の私に干渉することは出来ない。無念だ。
(……あれ。それってつまり…)
私は、ジュプトルやセレビィに自分の気持ちを伝えることができないんだ。
私の声は、
聞こえない。
伝わらない。
届かない。
それを知った瞬間、言いようのない寂しさが襲って来た。
それなのに、ディアルガは何故私に過去を見せたのだろう。
やっぱり、私が知っておかなければならないことだから?
「ともかく、そういうことだからオレ達は時の回廊に行かなきゃならないんだ」
「はい、勿論ご協力させていただきます。せつなさんのいう通り、こんな暗い世界のままじゃいけませんからね!」
ぐっと拳を握って力説するセレビィ。やっぱり好きな人と一緒だと気合が入るんだろうか。
「…ところで、やっぱり追手がいるんですよね?」
「うん。ヤミラミが追ってきてる」
「今の所、ヨノワールは見てないが、何処に隠れていてもおかしくないな」
あんまりゆっくりしていると、見つかりそうだ。…と言っても、私の意思ではこの体を動かせないから、どうにもならないのだけれど。
「それじゃあ、早く行きましょう!ジュプトルさんとせつなさんの後ろは私に任せて下さいね」
セレビィの言葉にジュプトルは頷くと、森の中に入って行った。
森の中は流石、黒の森という名がついている通り、とても暗く、ピリピリとした空気が流れている。
「うわぁ…やな空気…」
それは、過去の私も感じたらしい。
日の登らない未来ではより一層、森は鬱蒼として見える。
気分が沈むような景色はあまり見ていたいものではない。
「ここも、昔はこんなんじゃない、綺麗な森だったそうですよ」
ポツリと呟かれたセレビィのそれに、そういえばこの黒の森は、過去の世界で言うキザキの森辺りに当たるのだと思い出した。
「私、そんなの想像出来ないなぁ」
「オレもだ。だけど、そんな美しい森だったのなら、尚のことオレ達が頑張らなきゃだな」
「もちっ!未来は私達に掛かってるんだからねっ!」
だからやめろその喋り方。もちってなんだ、もちって。