グミ漬けでかしこさうなぎ登りだよね。
私、せつながニンゲンからイーブイとなって、かなりの月日が流れた。
思い起こせばパートナーであるピカチュウのハルキと色々なことをした。
ギルドに入門・卒業、冒険の楽しさにとり憑かれ様々な場所へ繰り出し、成り行きで世界を二度も救ってしまった。…今はドリンクスタンドに入り浸る日々だが。ホント探検隊が何やってるんだろうね。
そんなこんなで平和と言えば聞こえは良いけど、つまりは暇なトレジャータウン。
だけど、暇だと今まで考えたこともなかったことを思うようになる。
例えば、ハルキの寝相の悪さはどうにかならないものか、とか、親方様の実年齢(聞いたらペラップに怒られた)とか、
失った、ジュプトルのパートナーだった頃の自分…とか。
「せつな、最近元気ないよね」
ドリンクスタンドに寄った帰り道、ハルキがそんな話題を振ってきた。
「え?」
思わず聞き返す。ハルキにそう言われるような行動をしただろうか。
「せつな、白いグミ好きだよね」
「そりゃあ、ノーマルタイプだからね」
「じゃあ何で白いグミじゃなくて赤いグミのジュース飲んでたの?」
「…………」
その判断の仕方では、私が食い意地張ってるみたいじゃないか。
しかし、私もうっかりしていた。ハルキに怪しまれるなんて。自分ではポーカーフェースな方だと思っていたのに。
でもやっぱり、ハルキには勝てない。
「何か悩み事があるなら、聞くからさ。話してよ、俺はせつなの相棒なんだから」
それだけ言って、ハルキは先に帰ってしまった。
「……そういえば、」
私がポーカーフェースになったのって、ハルキに憧れてからのような気がする。
ピンチの時も不敵に笑うハルキを格好いいと思ったんだ。…私はハルキと違って無表情なのだけれど。
……じゃあ、
その前の私は?
ハルキに出会う前の私、ジュプトルのパートナーだった私は、一体どんなニンゲンだったのだろう?
「…………」
一人きりの交差点。少し行けば賑やかなトレジャータウンがあるにも関わらず、そこは誰もいなくて静かだった。
―――そこに、声が聞こえてくる。
〈知りたいか?〉
聞き覚えのある声だ。
「久し振りだね…。君は、ディアルガ…だよね?」
〈ああ〉
やっぱりか。こんな風に精神に語り掛けるなんて伝説級のポケモン以外になせる技じゃない。
〈お前にはそのせつ世話になったからな。過去を見せてやらんこともない〉
「え。ホントに?」
〈いいぞ。私はお前のこと、き、キライじゃないからな〉
何それ。ツンデレ?今流行りのツンデレ?
〈ともかくっ。私に、過去の記憶を見せる等容易いことなのだ〉
「…じゃあ、お願いしようかな」
私がそう答えた瞬間、突然視界がブラックアウトする。
「っ!?」
ああ。この感覚は、時空の叫びのそれに似ている。
そんなことを考えながら、私の意識は堕ちていった―――。