Interlude――見定める者達――
――???――
ここはとある場所。普通に暮らしてるポケモンは絶対知られない場所である。辺りは真っ暗で静けさが広がっていた。その中に透明、灰色、銀色、青、赤、黄色、若草、橙、白、そして金色の十個の陣が円を描くように配置されていた。そのうちの二ヶ所――灰色と白の陣――には何かが乗っているのか影が重なっている。
しかし、陣の光は弱々しくそれらの足元を少し照らすのが精一杯のようだった。そこへ、遠くの方から足音が聞こえてきた。
「来たか……何をしていた?」
灰色の陣に鎮座してた何か――ポケモンが問う。その口調は少しばかり苛立ちが入っていた。
「移動に時間をかけた。すまない」
対する足音の主は特に動揺する事なく理由を述べ、空いていた銀色の陣の上に座る。
“これで全員揃ったな……”
すると何処からか声がしたと同時にポケモン達の中央に一つの光が舞い降りて来た。どうやら先ほどの声の主はこの光から発せられたようである。そして、陣に座っていたポケモン達は光に敬意を払うように跪いた。
「し、しかしまだ全員揃っていないのでは……」
まもなくして灰色の陣にいたポケモンがやや頭を上げて言う。
“あの二人は前から行方を眩ましているであろう? ほかの五人は相変わらず連絡はとれぬ。それよりも最優先にする事がある……故に汝らをこの場に呼んだのは……”
感情を含めない物言いで異義を退ける。そして、一呼吸置いて続けた。
“――『キザキの森』の時が止まったからなのだ”
「「「……!!」」」
跪いてた三人が一斉に顔を上げる。その表情は暗くて分からなかったが、驚いているのは確かのようだ。
「……まさか、“あれ”を盗る者が現れたのか!?」
“その通りだ……故に『キザキの森』、そして周辺地域の時が少しずつではあるが、止まり始めている……”
白の陣に鎮座するポケモンが言った事に肯定する光。それと同時に他の二人もそわそわし始める。
「……なら、こうしてはいられぬな」
やがて遅れてきたポケモンが口を開くと全員の視線はその者へ向けられた。
「そう、だな。それでは急いで盗んだ犯人を特定しなくては……」
“……いや、我らが直接関与する必要はない”
白の陣に居据わるポケモンが考えようとした時、再び光が口止めをする。
「なッ……何故です!?」
憤りを表すかのように灰色の陣にいたポケモンが立ち上がる。
“我々はこの世界の守護者であり……、監視者でもある――決してその姿を光ある表に現してはならんのだ……”
光に反論され、立ち上がったポケモンは「うっ」と詰まらせながら跪ひざまつく。
“――それでも汝らが関与したいと願うなら……宿り主を探し行く末を監視するが良い……彼女や行方を眩ました二人のようにな……”
光はそう言い残すと上へと舞い上がっていった。
「……あの方があそこまで言うなんて……昔より丸くなったな。ま、オレには関係ねぇことだがな」
白の陣にいたポケモンが立ち上がると何処かへと行ってしまう。そして、銀色と灰色の陣にいるポケモン達が取り残された。
「ようやく俺の考えも通じたのかもな……」
「……そうか。では聞くまでではないが、汝はどうするつもりか?」
「決まってる……時の歯車≠取り返す! それだけだ……!!」
銀色の陣にいたポケモンの問いに力強く答えると、彼は静かにこの場所を去っていった。
「さて……我はあの場所にゆくとしよう……」
一人残された銀色の陣にいたポケモンも静かに去っていく。
「……フィルドよ……我は待っているぞ……」
そう言い残して――。